幻竜の羅刹

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花と語りし少女8



前から透が思っていたことだった

「花達はね、人の姿に化けることができるの」 「えぇ!?」と驚きを隠せない透

「それでね、人の姿になって町に出て、色々取ってくるの」

「え?取ってくるって…買うんじゃないの?」

「人じゃないんだからお金なんて持ってないでしょ?だから取ってくるの。それに取ってきたとして、店の人がその人を探してももうすでに花に戻ってるから都合がいいの」という

(そういえばよく盗んでく人がいるから注意みたいなこと書いてある看板見たときあるなぁ…。あれって花だったのか)と透はすこし驚いた

「花のすごさを改めて感じる話だね」と笑うと 「確かにすごいわよね」と苦笑いの幽香

「それとさ、寝るときとかってどうしてるの?」 これも不思議に思っていた事だ

「花がベットになってくれるのよ」と笑っていう幽香

「万能なんだね…」 「確かにね」驚いた透を見て幽香はまた笑った

「今まで人と接したことがなかったからこんなに楽しいこと今までなくって…今は本当に楽しいわ」

「そう?ならよかった」と微笑む透

「もう結構暗くなってきたしそろそろ帰るね」 「そう?じゃあね、透」と手を振る幽香

そんな幽香を見て「バイバイ」と手を振り別れた


次の日の朝、透は目が覚めて起きると誰もいなかった

(あ、そういえば二人ともいないんだったな…。明日の朝に帰ってくるって言ってたな)

とりあえずお腹がすいていたので適当に朝食を作って食べた

(そういえば…まだ幽香と花【まぁ造花だけど…】の絵、書いてる途中だったな)自室からキャンパスと鉛筆を持ち出し、朝から花畑へ出かけた

今日は夜から雨が降るそうだ

(雨が降っても幽香を花は守ってくれるって言ったけど…やっぱり寒いんだろうなぁ)

そんなことを思いながら、花畑へ急いだ

幽香は花の手入れをしていた 「あら、おはよう。今日は朝から来たの?」

「おはよう。まだ幽香と花の絵、描き終えてないから仕上げてしまおうと思ってね」

「あぁ、そう言えばそうだったわね」 「今からでも大丈夫かな?」

「ええ、もちろんいいわよ」 「じゃあ…はいこれ」と言うと造花を差し出す

「この前は気にしなかったけど…この造花はコスモスね」

「うん、アジサイの造花なんてないからね。見たときに綺麗だなぁって思ったそのコスモスを買ったんだ」

「へぇ、いいセンスしてるわね」 「それほどでもないよ」と笑った

透は鉛筆を取りだし、キャンパスを片手に持つと熱心に描き始めた

「透は絵を描くのが好きだから描いてるの?」と尋ねる幽香

「うん、小さいときから絵を描くのが大好きなんだ」

「私も小さいときはよく絵を描いていたものね…」と幽香は呟く

「そうなんだ…。どんな絵を描いていたの?」 「花が好きだったから花の絵ばっかり描いてたわ」と懐かしむように言う

「僕も花の絵ばっかり描いていたよ。おんなじだね」 キャンパスから顔を出し笑顔を見せる透

「そうね、私とあなたってやっぱり似てるのかもね」 「そうだね」と顔を見合わせ笑った

「そうだ、この絵が描き終わったら昨日歌っていた歌、教えてくれるかな?」

「え?なんか…恥ずかしいな」 「お願い!僕も一番好きな歌を教えてあげるよ」

「私にも…歌を教えてくれるの?」 「うん、そのかわり僕にも教えてよ?」

「…ええ、いいわ。新しい歌を歌えるようになれると思うと嬉しいなぁ」

「それはよかった。じゃあ速く描いてしまおうかな」

透は鉛筆を握り、幽香と会話をしながら描き上げていった

そして数時間後…

「ふぅ、こんなもんかな」 「あら、できたの?見せてちょうだい」

「うん、ほら」と言うとキャンパスを差し出す 「絵描くのうまいのね」と驚いた表情の幽香

「頑張ってよかったよ。その絵、幽香にあげるよ」

「え?いいの?うれしい」 その時の笑顔は花畑に咲く花より美しく咲き誇っていた

「あ、時間もちょうどお昼だし、食べてくるよ」 「あら?もうそんな時間?時間が経つのは速いわね」

「それじゃ、またね」と笑顔で手を振る透に 「バイバイ」 笑顔で手を振り返した

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