幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

花と語りし少女10



花のベット(人が来たかどうかわかりやすいために入り口の近くにある)に入っていた

彼女も疲れたのだろうかすぐに眠った

花が覆い被さり、雨で濡れることはなかった

村とは離れ、家がないため物音が聞こえない 聞こえるものなどなかった

辺りは静寂 風が吹いたとしても花が音を消し去ってくれる

しかし、今日は違った 何やら声が聞こえる

幽香はそれに気づいた 横にある傘を取りだし、花のベッドから出る

傘を差し、道のほうを見る しかし人影などもちろんなかった

(なんだったのかしら?私の気のせいかしら?)

そう思い、またベッドに入る しかしまだ声が聞こえていた

(道のほうじゃ…ない?花畑の…奥から聞こえる)

幽香は傘も持たぬまま立ち上がり、耳を澄ませる

(花達の声?) よく聞こえないためよく耳を澄ませると…

『熱い…』『助けて…』『早く火を止めてくれ…』『燃える…』『焼け死ぬ…』

幽香の顔が青ざめる

「火事!?」と叫び声を上げた その時・・・

「幽香!!」 自分の名前を呼ばれ振り返ると透の姿があった

「透?なんでここにいるの?まぁなんでもいいわ!花畑が!!私の花達が!!」

「どうしたんだ?」 「燃えてるの!!花達が燃えてるの!!」

「なっ!?」 「花達が苦しんでる!!助けてあげないと!!」

「何言ってるんだ!!火の中に突っ込む気か?」 「じゃないと助けられないでしょ!!」

「落ち着くんだ幽香!そんなことしたら花どころか幽香だって死んじまう!」

「大丈夫よ!!こんな事してる暇がないわ!透、手伝って!」と言うと幽香は走っていこうとする
そんな幽香の手首を透は掴んだ

「何するのよ!」 「幽香にとっては花は大事だって事はわかる!!俺より大事かもしれない!でもな、俺は幽香が花を思うくらい幽香を好きなんだよ!!」

「なっ…!?」 「だから…花を諦めてくれ」 雨に濡れ、毛先には雫が虚しくこぼれていた

しばし来る沈黙 そして口を開く幽香

「私は親に捨てられた身なの…あなたに会ってやっと生きる楽しさがわかった。でも!花は私を育ててくれた命の恩人なの!!だからこんな私の命くらい…」

パシッ!という音が響く 透が幽香の頬を叩いた

「今何って言った?私の命くらいなんだって?捨てていいってか?」

「うっ…うぅ…」

「ふざけるなよ!!親は幽香を捨てた。だから何だ?強く生きろよ!!花達の為にも!!育ててくれた花のためにも生きろよ!!」

「ごめんなさい…ごめんなさぃ…」 泣き崩れ、囁くような声で幽香は言った

そんな幽香を透は抱きしめた

「ぶったりしてごめん。何も知らない俺がでしゃばってごめん。泣かせちまってごめん…」

「うん…うん…う…ん」と喘ぎ声を必死で押さえて泣く幽香

「でもな…約束してくれ。命は大切にすると。決してさっきみたいな事は言わないと」

「うん…絶対に、言わない…言わない…よ?」

透の胸の中で泣きじゃくる幽香はどこにでもいるようなか弱い少女だった

そんな幽香を透は濡れた手でなでつづけた 泣き止むまで ずっと、ずっと…

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