幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

MIRAGE SKY



悠斗はそっと隣を見た。悲しくて泣きそうになったので前を見ることにした。

悠斗は思っていた。あの時俺が由希(ゆき)を守ってやれなかった。だから・・・

そうそれは現在八月十五日から一ヶ月前のことだった・・・

七月十五日、悠斗と由希は学校を終えて、二人で並んでかえる途中だった

「今日は最低だったぜ。俺は何もしてないのに藤田に怒鳴られたんだぜ?ふざけんなってんだよ。」

すると由希は笑って答えた。

「勘違いは誰にだってあるよ。気持ち切り換えて明日も頑張ろうよ、ね。」

「ああ、そうだな。」

悠斗は由希のかわいい笑顔が好きだった。

そんな会話をいつも、そして今日も繰り返していた。

二人の笑顔は眩しかった。あのときが来るまでは・・・

住宅街に入り、2人が別れる十字路をむかえた。

「じゃぁ、また明日な。」 手を振りながら言った

「うん。また明日ね。」

由希は有事のほうを見ながらバックして手を振っていた。

そのときだった車が猛スピードで由希の奥からやってきた。

「危ねぇ由希!!道の端に寄れ!!」 悠斗は叫んだ。

「え?」 振り返ると同時に・・・由希は飛ばされた。

悠斗は必死になって由希を追いかけた。 由希は頭から血を流してぐったりしていた。

「嘘だろ?なんとか言ってくれよ由希。明日も学校に一緒に行こうって約束したばっかりじゃねぇかよ・・・目を覚ましてくれよ由希。」

由希は何も言わずただ悠斗の腕の中にいた。

「うわああああああ!!目を覚ましてくれよ由希!!俺を残して逝かないでくれよ!!」

一心不乱に叫んでいた。しかし由希はもう帰ってこなかった。

頬を流れる涙はもう動くことない少女の顔をぬらしていた。

高校2年生、野々原悠斗と神崎由希の恋は儚く散っていった。

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