幻竜の羅刹

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クリスマスの夜 11



「あれ?おまえなにしてんの?」というと雄太は答えた

「仕事に決まってんだろ。見てわからないのか」

「いや、そう言う意味じゃなくてさ。なんでお前がいつもと違う時間から仕事はじめちゃってるわけ?」

「昨日お前がたくさん仕事しただろ?あれはおまえのクリスマスの日の分もだいぶ混じってたんだ。そのことを俺は今日初めて知ってな。俺もクリスマスくらいはゆっくりしたいから明日の分も頑張ろうかなぁと思ってやってんだよ」

「彼女もいないのに早く仕事終えて何する気なんだ?」

「だ、黙れ!!俺だってゆっくりしたいときはあるんだよ!!」

「まぁ、頑張れよ」と言うなり、自分はいつも通り仕事をはじめた

仕事中には隣の雄太が「がんばるぞぉ」とか「うぉー」などという小さい声で叫んでいたがそこは無視しておいた

昼休み中にも飯を食いながらやっている まるで昨日の流星のようだった

「あらら雄太君じゃないか。お昼まで仕事とは感心だねぇ」と、昨日とは反対の立場で言ってやった

「う、うるせぇ!!昨日はお前だってこうだったじゃないか」

「え?なんだって?聞こえないなぁ」

「とぼけやがって…。覚えてろよ!」

「あいあい、まぁ頑張れよ~」と笑顔で退散していった

お昼過ぎも隣の席ではもう目を大きくあけて「にらめっこなら負けないぜ」並の迫力でパソコンと向き合っていた

「ドライアイにならねぇように気をつけろよ~」と流星は忠告するが

「ドライアイなんぞ恐くねぇ!俺の心が潤うように目だっていつでも潤ってるぜ」とわけのわからないことを言い始めたので無視というカードを選択した

そして、流星はいつも通り仕事が終わったが雄太はあと少し仕事が残っていたようなので手伝ってやった

「ありがとな」と感謝の言葉が口からこぼれる

「これぐらい即効で終わらせてやるよ」というと本当に即効で終わらせてしまい、二人はいっしょにかえることにした

「お前さ、クリスマスの日に隠し事あるだろ?」と流星が聞くと雄太が答える

「親友には隠しきれないな。俺にはな、本当は彼女がいるんだよ」と告白する

「ほ~、彼女がいたのか。いないとかいってすまんな」

「いや、言わなかった俺も悪いんだ。それでな、クリスマスの日にはあいつに求婚しようと思ってるんだ」

「それはお前にとって一世一代の大勝負じゃねぇか。応援してるぜ」

「ありがとよ。絶対に結婚して幸せをつかんでみせるぜ」

「頑張れよ。俺には応援することしかできないからな。結果に期待してるぜ」

「まかせとけ」と二人は笑って雪の降る町の通りを歩き、それぞれの家へと帰っていった

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