幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

桜の姫君



その木のしたに一人ひざを抱えて震える人が見える

暗い闇の丘にある桜の木の近くにある電灯のおかげで道は照らされ、そして桜の木の辺りにも1本の電灯があり、木の位置を確認することができる

するとどこからとも無くその木の下にもう一人の影が現れた

「ほら、泣かないで」と声がいきなり聞こえたのでひざを抱えて泣いていた少女はびくっと驚く

「どうしたの?お母さんは?」と柔らかい笑顔で女性は聞いた

「お母さんとけんかして家出してきたの。私、お母さんが謝るまで家には戻らないもん」と泣きながら言った

「お母さんきっとお家で心配してると思うよ?お姉ちゃんもついて行くから謝りにいこう、ね?お母さんだって悪い事をしたと思ってるはずよ?」

「ほんと?」 「うん、だからね、一緒に謝りに行きましょ」と手を差し伸べた

「うん!」涙をぬぐって手を繋ぎ、お母さんの元へと急いだ

「あなたのお名前は何って言うの?」 「私は恵美(えみ)って言うの。お姉ちゃんは?」

「私は幽々子(ゆゆこ)っていうの」 「かわいい名前だね」 「ありがと、恵美ちゃん」と微笑んだ

しばらく恵美の家への道を辿っていると人影が見え「恵美!恵美!」と呼んで走っている

「あ、お母さんだ!」と恵美は大きな声で言うと母はこちらに向かって走ってきた

「心配したのよ!」と母は言う「ごめんなさい」と少ししょんぼりしたように言う恵美に対し、母は頭を撫でていった

「ううん、お母さんこそごめんね。あんなこといっちゃって」 「じゃあ、仲直りね!」 「そうね」と手を繋いだ

「ありがとう!幽々子お姉ちゃん!」と手を振った

幽々子はにっこり笑って「バイバイ、恵美ちゃん」と手を振り返した

「何言ってるの?恵美ちゃん」 「幽々子お姉ちゃんがお母さんのところまで一緒についてきてくれたの」と笑顔で答えた

「どこにそんなお姉ちゃんいたの?」 「え?あそこにいるでしょ?」と言い、指を差した場所にはまだ幽々子は手を振ってこちらを見送っていた

「きっと幻でも見たんでしょうね」と母は笑っている 「違うもん!だってほら!」 「ハイハイ、帰りましょうね」と姿が見えなくなった

一般の人には見えない者がいる それは幽霊だ 子供のころだけ見えるものというのもよくあることだ

「あら、幽々子じゃないの、こんな場所で何してるの?」

「あ、み~ちゃんだぁ。そっちこそこんな場所に何でいるのよ?」

「私はいつも通り散歩よ。あなたは?」 「私の桜の前で泣いてる子がいたから助けてあげたのよ」と笑って答えた

「優しいのね~。私なら多分無視するわよ」 「あ、ひど~い。可哀想でしょ!」

「嘘、嘘。ちゃんと助けるわよ」 「本当かと思ってじゃない」と互いに笑っている

魅魔(あだ名はみ~ちゃん)は幽々子が幽霊になった頃からずっと友達だった幽霊だ

「そろそろ桜も咲き乱れる頃だからたくさん人がくるのよね~」

「あら、もうそんな時期だったわね。今年も花見やるの?」 「もちろんよ、私の桜はどこの桜にも負けないわよ」と言い張った
「ふふ、楽しみね」 「つまみが無くなったりしたら人間の物を取れば良いのよ」と言った

「あらあら、そんなことしていいの?」 「あんたがよくやってることでしょ?」 「あれは貸してもらってるのよ」

「返さないんでしょ?」 「まあね」と誇らしげに言う 「変わらないわねぇ…」と幽々子は笑った

「うるさいわね。あ、散歩の途中だから私もう行くね」 「うん、またね、み~ちゃん」 「じゃ~ね、幽々子」と言うと手を振り別れた

桜の木の前まで来た幽々子は桜を撫でた

「また、桜が咲く季節がくるのね」と呟くと涙を流した

「なんであなたは私を置いて逝ってしまったの…?」とまた一粒涙が流れ、土に染み込んでいった

「あ、いけないいけない。あのこと思い出しちゃった」と涙をぬぐい笑顔を作った

桜の木は流れた涙を吸い込んでいった…

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