幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

桜の姫君3



「今日も少しだけど花見客がいるし…ちょっと散歩してこよっと」と木から下りると丘の周りを散歩に出掛けた

他の人から見えないため何をしても見えないと言うのはちょっと楽しい

「やっぱり年寄りが多いわねぇ…。若者はいないのかしら」と丘の上を目指す

上の桜はもう少しだが咲いていた 小さく咲いているのもあれば、大きく咲き誇っているものもある

「あら、こっちはもう咲いてるのね。なんで私のは育たないのかしらねぇ…」と呟く

幽々子はどこからとも無く扇子を取り出す。扇子を閉じては閉めての動作を繰り返しながらも丘の頂上を目指す

「なんか遠く感じるわね…。私も年なのかしら」と苦笑した

丘からは町を一望でき、さらに桜の木がたくさん生えているためピークになるとスゴイ数の人々が丘の頂上を上り、景色を求めていた

今はピークじゃないし人なんてぜんぜんいないでしょう。時間帯も今お昼だし。と思っていた

頂上にまでつくと案の定誰もいなかった…と思ったら記念碑に隠れかかっている男女がいた

「前から言いたかったんだけど…あの…好きです!付き合ってください!」と女の声がする

「こんな僕でよければ…」と男は恥ずかしそうにしている

「あらあら、恋の告白場になってるじゃないの。二人を応援するって言ってもなんだけど…ささやかなプレゼントって事で…」というと扇子をバッっと開いた

両手に扇子を持つと少し咲いている桜の木下で舞い始めた

その華麗な舞いは空気を震わせた 桃色の髪が風に靡き、扇子は風を切る

次第に桜が咲き始める。幽々子の舞っている近くの桜の木々の花びらは優雅に咲き誇っていた

そして次第に優しい春風が丘の上に吹き、やさしく桜の木を揺らすと、花びらが宙に舞い始めた

春風に乗って舞う花びらは二人の辺りに漂った

「わぁ~きれい!まるで私達のことを祝ってくれてるみたいね」と女がはしゃいでいる

「ほんとだね。でも何でさっきまで咲いてなかったし、ここ以外は咲いていないのに何でだろうね」

「そんな細かいことはいいの!幻想的だなぁ」と女は男の腕に自分の腕を絡ませた

そうしてしばらく何も言わず立ち尽くし、しばらくすると二人は手を繋いで帰っていった

「久々ねぇ…誰かのために舞うなんて」と幽々子は扇子を片付けた

「いつ見ても幽々子の舞いって綺麗よねぇ」と風に舞う桜の木の上に魅魔がいた

「みんな木の上から登場するのね」 「あら、偶然じゃない?」と笑った

「明日が咲くんじゃない?これ」と魅魔が言う 「ええ、多分明日ぐらいに咲くわね」と答えた

「まぁピークの日に花見しましょうよ」 「そうね。今年はきっと綺麗よ」

「毎年綺麗じゃないの」 「まぁそうだけど・・・」

「今年もいつものメンバーでしょ?」 「だれだったかしらね~」ととぼけた顔で幽々子は言った

「あなたと私と紫でしょ?」 「ああ、そうだったわね」と笑って答えた

「幽々子も年ね」と笑っている魅魔 「なっ!?ま、まだぴちぴちの幽霊よ!!」と頬を膨らませた

「幽霊は年は取っても体の年齢は変わらないんだからきっと頭を使ってないからよ」とさっきより大きな笑い声を上げた

「ば、バカにするなぁ~!」と魅魔をぽこぽこと叩く 「あいたた、冗談よ、冗談!」と笑いをこらえながら言った

「ほんとかなぁ~?」と魅魔を睨む 「ほんとよ」と笑って答えた

「まぁ、また来るわね」と手を振った 「もう来るなぁ~」とまた頬を膨らませて言った

そうして魅魔は消えた

「あ~今日も暇ねぇ。寝てこよっと」というと大きな桜の木へと歩いて帰った

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