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Skull-Sick~その狭間に立つものたち~ 2
が、ディーゴは素早く身を捻りながら回転、突きをかわして距離を詰める。
速い。
回転の遠心力を乗せた短剣の一撃。俺はカザフで受ける。
伸びたままのアマサメをそのまま右へ、水平に刃を走らせる。
ディーゴは右の爪で受けたが、威力を殺しきれずに体が横へとぐらつく。
そこへカザフでさらに追い打ちをかける。不安定な体勢でさらに受ける瞬間、空いていた奴の右腕が高速で迫った。
俺は緊急後退、腹部をディーゴの爪がかすめると同時に、何とかカザフを振り切る。
俺は大きく飛び退き、ディーゴも俺の攻撃に横へと流れた。
ディーゴの一撃は、皮膚までは届かなかったものの、服を裂かれた。
あの状況から反撃してくるとは、つくづく恐ろしい奴だ。
手数ではこちらに勝ち目は無い。一撃一撃の威力にものを言わせるしかない。
一瞬の目線の交錯。そして再び刃が舞う。
僅かな時間差で繰り出される左右の刃、視界全体でとらえ、確実に受けていく。
しかしディーゴの攻撃は止まない。上下左右、身軽な体を生かした高速の斬撃が襲ってくる。
俺はうまく距離をとりつつ、最小限の動きでそれらを弾いていく。
が、このままではヴィンカーの二の舞。俺は受けつつも、タイミングを測る。
ディーゴの左右からの攻撃、今だ!俺はカザフ一本でその二つを何とか弾き、アマサメで奴の足をすくう水平の太刀。
しかし、ディーゴはそれも計算に入れていたのか、超反射で垂直に跳躍、さらに空中で縦回転、凄まじい速度で垂直に爪が襲い来る!
俺の今の低い姿勢では受けが間に合わない!
下半身の筋肉を精一杯使って、不自然な体勢のまま後方に跳躍、爪は俺の右足をかすめて地面を叩いた。
妙な姿勢での後方跳躍で、俺はうまく着地できない。
そのまま後転して一挙動で立ち上がる。
三、四メートルの距離を稼いでディーゴと向き合う、が、その瞬間。
ディーゴの跳躍、次の瞬間に、奴は俺のすぐ懐で短剣を振りかぶっていた!
速すぎる!!明らかに人間の身体物理限界を超えている。
「うぉぉ!!」
俺は身を捻りながら回転、迫っていたディーゴの刃が俺の背中を切り裂く!
構わずそのまま回転からアマサメを放つ。
ディーゴは爪で受け流して後退。
「逃がすか!!」
俺はさらにその回転の延長で、カザフを水平に放つ!さらに、柄の上部にある小さなトリガーを引く!
遠心力を加えたカザフの内蔵されたスプリングが伸長!柄から先がしなる様に伸びる!
ディーゴの眼が見開かれる。奴にとって想定外の攻撃は、そのまま脇腹を切り裂いた!
バキン。重い金属音と共にカザフはもとの姿へと戻った。
ディーゴは前方で、血が噴出している脇腹を抑えながら地面へと膝をついた。
だが、その眼の炎はまだ消えていない。
俺の背中からも血が流れる。
「四つ牙・・・・噂に聞く通りの強い男だ」
ディーゴが荒い息で、しかし淡々と言う。
「今のが貴様の全てか?」
俺は内心を誤魔化すために笑顔を作る。
「・・・・どういう意味だ?」
「ったく。しらばっくれるのもいい加減にしろよ。・・・・俺には見えるんだよ。貴様の”中身”が」
その言葉を聞いた瞬間、教会内の空気が変わった。
見えない嵐が巻き起こっているかのようで、物理的な圧力すら感じられる。
「そうか。やっと貴様の正体が分かった。”喰った”のは三匹か?」
ディーゴは言いながら立ち上がる。脇腹の傷はもうほぼ完治していた。
「ほう、お前にも見えるか。なら話は早い。お前の”中身”、俺が貰い受ける!」
「やってみろ。ただし、こちらも簡単にはやられない」
その言葉の直後から、奴の体に異変が生じ始めた。
全身からみるみるうちに灰色の毛が生じ、体の形も変化している!
ディーゴの呻き声と共に、その体は灰毛に覆われ、一回りほど大きくなった。筋肉の量が増大。その顔の輪郭もすっかり変わってしまった。
最後に、ディーゴの悲鳴と共に、異変は終わった。
その姿はもう、二足歩行の大きな”狐”であった。
俺の全身を汗が伝う。
「そうか・・・・そうだったか。ディーゴ・ザ・アヌビン!」
ディーゴは短剣を腰に収め、爪も装置の内部へと戻した。
そして、椅子に突き刺していた鎌を抜く。
刃の部分が折りたたまれているそれを無造作に一振り、すると、折りたたまれた刃が遠心力によって展開された。その姿はまさに禍々しいものであった。
刃が一つでは死神が持つものに近い鎌も、刃を三枚も備えると、全く別の物体に見える。
『は、反則だ・・・・』
中のもう一人の俺が嘆いた。
『今さらだ、そんな言葉。俺達は常にルールの外側に生きてる。法則なんてなんの役にもたたない。そのための薬。そのためのお前の知識だ』
『僕はいつからこんな野蛮な日常を過ごすようになってしまったんだろう』
そう言ってため息をついた。
『”あの日”からだろうが』
俺は腰のポーチから小さなフラスコを一本取り出す。中には透明な液体が入っている。
蓋を外して一気に飲む。おえ、あまりの味に舌が麻痺した。
液体はすぐに体に染みこんでいく。
直後、鼓動が異常に早く強く鳴り出した。体が爆発しそうだ。
自分でも分かる。全身の血の巡りが速くなる。自然と全身の筋肉に力が入る。
くっ、凄まじい変化。このまま体が吹き飛んでもおかしくない。
全身の筋肉が痙攣をし始めた。
『お、おい!大丈夫なのか!?』
『大丈夫、痙攣が終われば準備完了』
全身からめりめりと不吉な音が聞こえる。体内が熱い。燃えているようだ。あまりの苦痛に自然と呻き声が漏れる。
そうしているうちに、痙攣が治まってきた。眼が充血しているのが自分でもわかる。全身の血管が拡張されている。それは見た目にも浮き上がっている。
呼吸が乱れて収まらない。が、構わず戦闘体勢を取る。
「何か、妙な小細工をしたようだが、準備はいいのか?」
「ああ、いいぜ。かかってきな」
直後、ディーゴ、いや、アヌビンの跳躍。
人間形態の時からさらに速い。踏み込んだ地面が割れて沈んでいる。
アヌビンが鎌を下に構えながら超高速で近づく、が俺は不思議な感覚を覚えた。
眼にも止まらぬ速度のはずが、スローモーションに見える。
薬の効果だった。
脳の高度興奮状態における感覚の鋭敏化、さらにそこから、筋肉本来の力を二十~三十%にまで抑えている”タガ”を少しだけ外し、通常ではありえない力を発揮できる。大多数の眠っている遺伝子を起こし、特殊な能力をも兼ね備える。
薬の力を簡単に言うとそうなるらしい。
下から突き上げてくる三条の刃をアマサメで受け、さらに弾く。
俺のアマサメはあっさりと鎌を弾きかえし、アヌビンの体も後方へ小さく吹き飛んだ。
アヌビンは驚愕の表情でこちらを見た。
俺は我ながら驚きつつ、さらに踏み込む!
一つは両腕が翼と化した怪鳥、一つは巨大な熊、もう一つは牙をはみ出させた獅子だった。
ただ、そのどれもが、まだ不完全な、混じり気の多い雑なものだった。
まず獅子が、空中から爪で切り裂こうと飛びかかってきた。
モズはズウゼの刃の付いていない方でその獅子の横腹からを殴りつけた。
獅子は右方向に吹き飛ばされたが、直前まで獅子の居た空間から大熊が拳を叩きつけてくる。
モズはすぐさま反応、後方に飛び退く。大熊の拳は深々と地面を抉った。
どんな屈強な人間でも、その一撃を食らったが最後、骨を砕かれ内蔵をつぶされて死に到るだろう。
後方に飛び退いたモズは地面に片手をついて着地。先ほど殴り飛ばした獅子ももう起き上がっている。
だが、モズは気付いているだろうか、真後ろ上空、完全な死角から怪鳥がその獅子にも負けぬ鋭い爪を光らせて高速で近づいているのを。
起き上がった獅子が一声咆哮を上げ、またモズへと突っ込んでくる。
この中では最も緩慢な大熊も迫りつつある。
モズがそれらに向かってズウゼを構えた直後、怪鳥の爪はすぐそこまで迫っていた。
首が引きちぎられる直前、モズの周囲を驚くほどしなやかな動きで光がめぐった。
そして、怪鳥はその胴を横一文字に切り離され、真っ赤な血や内臓をこぼしながら地面へと落ちた。
ズウゼの光であった。なんとモズは視線を前に固定したまま怪鳥を倒したのだ。
さらに獅子がさっきと同じ動きで襲い掛かる。
モズは体を素早く獅子の懐に潜りこませ、ズウゼを突き上げた。
獅子の右前足が赤い筋を引いて宙を舞った。
が、同時に、真後ろから大熊の鋭い爪と拳が迫っていた!
それに気付いたモズは体を急回転、何とかかわすものの、脇腹を薄く斬られた。
作業着に血が染みこむ。
「ふう、やはり老いたわ」
モズは静かにつぶやいた。
獅子の方はすでに戦闘不能。残るは大熊のみ。
すると、大熊は信じがたい行動に出た。
なんと、脇に倒れてもがいている獅子の頭部を自らの手で粉砕したのだ。
獅子の頭は見るも無惨なものとなり、脳漿を散らして命を絶った。
そして、死体の足をつかんで持ち上げ、咆哮と共にモズへと向かって猛然と投げつけた!
血をまき散らして向かってくるそれをモズは渾身の力をこめ、ズウゼの刃の反対側を突き上げて後ろへと弾いた!
直後、死体の影から現れた大熊が放つ全力の拳!かわすには間に合わない!
「力比べか、受けてたつぞ!」
モズはそのままズウゼの刃の反対側を打ち下ろす!
拳とズウゼの激突!しかしそのどちらも動かない。
熊とモズ、両者の力を込めた足が地面を抉る。
数瞬の拮抗状態。しかし。
「うおぉぉぉぉ!」
ドン。凄まじい重低音。ズウゼが打ち下ろされ、地面を砕いたのだ。
弾かれたのは、拳の方だった。モズの純粋な力の恐るべきこと。
地面を砕いたズウゼ。刃は真上を向いている。
モズはそのままズウゼを突き上げ、大熊の胴を斜めに切り裂いた。
さらに突き上げた力を利用して回転、今度は遠心力も込めて横一文に胴を二等分した。
大熊も怪鳥のあとを辿った。
モズは向き直って遥か彼方にある二つの影へとズウゼを向ける。
その眼にはまだ殺気が燃え盛っている。
二つの影は、すぐにモズに背を向けた。いつの間にか後ろに控えていた大きな虚烏鳥の背に乗り、去っていった。
それを見たモズは大きく息を吐いた。
全身の汗が戦いの激しさを物語っていた。
脇腹の出血はまだ続いているが、軽傷のようだ。返り血も相当浴びてしまっている。
バンザはと言うと、遥か後方でこちらの様子を伺っていた。
モズが手を振って招くと、ゆっくりと歩き出した。
「それにしても、何者か。何故わしに虚仮人を・・・・ディスゴーツ」
モズは誰にも聞こえないような声で一人つぶやいた。
遥か前方で、ずんぐりとした体型の老人が巨大な熊を切り倒した。
「ふむ。やはりあの鍛冶師は強いな」
並んでいた二つの影の小さな方が言った。それはまだ十代半ばほどの顔立ち。美しい銀髪が肩の辺りまで伸び、しかしその美しい顔の右半分が黒い眼帯で覆われている。
「やはりもう一歩完全には遠いようです」
大きな影が言った。ボロボロの布に巻かれた剣らしきものを手に提げ、短い黒髪に、顔は鼻の辺りまで白い布を巻いている。男ともとれる姿だった。
「元からあの老人を倒せるとは思っていない」
「オレを使ってくだされば、あのような老人など一息に葬って見せます」
「・・・・身の程をわきまえろ」
「・・・・はい?」
「あの老人の純粋な力を見たか。ウルシメが石騎士の不死軍勢へと単独で飛び込んだ際の魔業を見たか。彼らを侮ってはいけない。自らの自負が強すぎてはいけない。私は全てを甘く見ない。シド、貴様はただ私の傍で、私の身を守っていてくれればいい」
「・・・・仰せのままに」
「さて、”試作品”の出来ほども分かった。戻るぞ」
「はい」
大小二つの影は、いつの間にか後方に待機していた虚烏鳥の姿と共に、高く去っていった。
俺とアヌビンの体は共に吹き飛ばされた。
長椅子をいくつも破壊して、俺は体制を整えた。
アヌビンはもうすでに跳躍に移っている。
瞬く間に十メートルの距離をゼロにして鎌を振るう。
俺は後方に跳躍、しかし間合いの長い鎌の刃は俺の腹部を切り裂く。
構わずにカザフを振るう。伸びた刃がアヌビンの右肩を抉った。
さらに両者が後退、距離をとる。
その頃にはすでに傷は完治しかけている。アヌビンも、俺もまた。
薬の効果のおかげで、何とか戦えている。
しかし、薬を使用してすでに三十分は経過した。急がなければ。
焦燥感が俺を襲う。薬が切れた場合、俺に勝ち目は無い。正に死闘。
だがそれはおそらくアヌビンにも同じ事だろう。一つの肉体に人間と虚ろ、二つの特性を兼ね備える虚仮人は、寿命が極端に短い。
その変身能力を使用すればするほど、肉体への負荷も大きいはず。
両者の目線が交差されたそのときだった。
「みーつけた」
教会入口の方向から、突然男の声がした。
俺とアヌビンの視線が向かう。
そこに立っていたのは。
「四つ牙!?」「不協和音!!」「ゼフガ!?」
男、アヌビン、俺の叫びが同時に起こった。
入口に立つ男、マスケット銃を手に提げたそいつは、大分前に行方不明となっていた凄腕のデバッガー、ゼフガ・ルーフィスであった。
だが、それよりも俺を驚かせたのが、アヌビンの言葉だった。
「四つ牙がいるたぁ、聞いてねえぞ・・・・」
そうぼやいて、ゼフガは頭をかいた。
「不協和音・・・・だと?」
「おぅおぅ、そういや四つ牙さん、あんたぁロシエルの野郎には会ったかい?」
「何だと!四つ牙、貴様!」
三人の会話が飛び交う。皆混乱しているのだ。
だが、アヌビンの”不協和音”への反応からすると、まさか。
「待てよアヌビン。ゼフガ、確かにロシエルと名乗る少年に会ったぜ。何か不可解なことをほざいていた」
「ちっ、生かしておいたのかよ。散々大きな障害だとか言っていたのによぉ。まあいい、逃亡者に加えて四つ牙さんも相手とあっちゃ分が悪い。とんずらさせてもらうぜ」
「待て、逃がす――」
ゼフガを追おうとした瞬間、爆音と共に脇の長椅子が爆ぜた。
奴のマスケット銃だった。
「サービスで教えといてやる。俺はまさしく不協和音、ディスゴーツのメンバーだ。それと、そこにいる化け物は、”俺たちが作った”。だが逃げ出した。俺はその後始末を任された。・・・・じゃあまた、いつか会うだろうな」
そう言って、ゼフガの姿は扉の向こうへと消えた。
だが、ゼフガの言葉で俺は確信した。
『つまり、ディーゴ君は・・・・』
『ああ、そう――』
直後、俺の視界が激しく揺らいだ。まともに立っていられない。剣を支えにして何とか姿勢を保つ。
『薬の効果が切れ始めたんだ!』
何とかアヌビンの方へと目をやると、揺らぐ視界の中、奴もまた異変を生じていた。
苦痛に顔を歪めている、さらに全身が震え始めていた。
『分離防衛!』
簡単に言うと、アヌビンの体もまた、拒絶反応を起こし始めているのだ。
「・・・・なあ、アヌビン」
俺は何とか声を絞る。
「・・・・なんだ」
強がってはいるものの、若干鋼の声も震えている。
「お前、ディスゴーツに追われてるのか?」
「・・・・」
「イエスと取るぜ。実はな、俺もディスゴーツから敵とみなされているらしい」
「何が言いたい?」
『つまり僕らは』
「つまり俺らは――」
両者ボロボロの中、最後の言葉を言おうとした直前。
「ヴィンカーめ、なんと言う様じゃ」
今度は、教会入口に、小柄な初老の男が立っていた。
その手には、ヴィンカーのものとは違う装飾のされたスラッシャー。
「役立たずが。・・・・しかし、うぬらのなんと言う強大な力よ。流石のヴィンカーも及ばぬか。どれ、この、わしが直々に相手をしよう」
新手の警団。しかも、おそらくヴィンカーをしのぐ使い手。次から次へと、今日は厄日だ。
直後、大きな脈動と共に全身に激痛が走った。
力が入らない。
『ダメだ、副作用が起こり始めた!安静にしなければ危険だ!』
『状況を見て言え。安静な場所なんてどこにも無え』
そう、見るとアヌビンもディーゴへと戻っていた。全身に異常なほど汗をかいている。
二人とも、もはや戦える状況ではない。
「何があったかは知らんが、なにやら本調子ではないらしい。だからと言って容赦するわしではないが。死んでもらおう」
そう言って老人は疾走を開始した。
俺とアヌビンの眼にはあきらめの色が一瞬浮かんだ。
だが。
老人の間合いに入る直前、甲高い金属音が聞こえた。
とうとうかすんでさえきた視界に映ったのは、鍔迫り合う大柄の男だった。
「ヴィンカー!?」
なんと言う男だ。俺の打った延髄からもう回復したのか!いやそんなはずは無い、おそらく、ヴィンカーも気合で立っているのだ。
ヴィンカーが力任せに押し切る。老人は小柄な体を宙で器用に回転させつつ後退した。
さらにヴィンカーは背中のもう一本のスラッシャーを手に取る。
両のスラッシャーを回転させ、構える。
「ヴィンカー、謀反か」
老人の殺気が教会を満たす。
「逃げろ!!」
その言葉が誰に向けられたものなのか、俺は一瞬では理解できなかった。
「早く逃げろ!それくらいの時間は稼ぐ!」
俺とディーゴは顔を見合わせた。
「しかし・・・・なぜだ?」
そこでさらに金属同士が悲鳴をあげる。老人は、なんと言う身体能力か、中空で身を回転させながら残像すら残る速度で攻撃を繰り出してくる。
ヴィンカーも二本のスラッシャーを駆使して受け止める。
「お前等二人は俺が殺す!それが約束と復讐だ!!」
その言葉を聞き、再度ディーゴと顔を合わせる。
ディーゴは鎌を収め、地に落ちたローブを纏う。
俺もアマサメを収めて、もう言うことをきかなくなり始めた体を何とか動かして入口へと向かう。ディーゴも後に続く。
扉を開け、死闘を繰り広げるヴィンカーの顔を見る。
「待ってる!必ず、殺しに来い!」
そう叫んで、俺たちは教会を後にした。最後、眼の端に捕らえたヴィンカーの顔に見えた笑顔は、気のせいだったかもしれない。
外へ出ると、ポツポツと小雨が振り出していた。
厚い鉛色の空は、更なる雨を予感させた。
俺たちは、共にボロボロの体を引きずりながら、何とかリガータを抜けた。
連中も都市外までは追ってこないはず。
それでも念のために少し歩いて、大きな木の下で雨宿りをした。
俺もディーゴも、木の下ですぐに倒れ伏してしまった。
全身の筋肉が吊っているような感覚。しばらく動けそうにない。
さらに、過呼吸による肺の極度疲労、雨に打たれたうえ血管が急激に元に戻ったため、体が驚くほど冷たい。
血の巡りすぎで頭痛が酷い。強い吐き気が襲ってくる。
『頭痛と吐き気は、おそらく鎮静剤が切れたせいもあると思う』
『これほどの反動なら、もう死んだ方がましだ』
俺の心からの声だった。
「ディーゴ」
何とかとなりにへばっている男の名前を口にする。
「・・・・なんだ」
「大丈夫か?」
「変身したあとと元に戻ったあとは死ぬほど具合が悪いんだ」
「虚仮人もリアルに大変だな」
「貴様のせいだ」
「まあそう言うな」
そして俺はさっき言えなかった言葉を表す。
「・・・・俺たち、もしかしたら、仲間かもしれねえんだ」
「・・・・」
「俺はお前みたいな存在をさがしていた。俺の近くにいても、呪いの影響を受けないお前のような存在をな」
「・・・・」
「俺と一緒に戦わねえか?」
「・・・・」
「なんか言えよ」
「おれは、ディスゴーツを、潰す」
「だから、手伝ってやるって言ってんだよ。一緒に来いよ」
「・・・・」
「俺は。イエスと取るぜ」
「勝手にしろ。その前に、”もう一人”そろそろ姿を現してはどうだ」
「どうもこんにちは」
「・・・・器用に入れ替わるものだ」
「君とは大分構造が違うからね。僕の方は医者やってます。君の言う”妙な小細工”をする係りやってます」
「随分と、違うな」
「そりゃ、もちろん。あんな野蛮なのと一緒にしないでよ。一応、言っておくけど、君の”構造”について興味あがる。ちょくちょく質問したときは、正直に答えてほしい」
「知らん」
「では、よろしくね」
くらい空から降りそそぐ粒は、予感どおり激しさを増してきた。
巨木の元で、俺たちはそれでもまだ動けなかった。
「おれはこのまま寝る。虚ろが近づけば分かる。起こすなよ」
「了解」
俺は仰向けになって空から落ちてくるものたちを見る。しかし反動のせいで実はあまり見えていない。
『巨木の下にいると、思い出すよね』
『”あの日”か』
『そう』
『ただ、あの日はずうっと、世界の果てまで晴れわたってたがな』
『今だって、ずっと、世界の果てまで雨が降ってる。そんなに変わりは無いよ』
忘れない、俺たちはあの日からはじまった。
Skull-Sick~その狭間に立つものたち~ 終
(c)QWERTY Kari様
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