心配かけないで




部室に不二と手塚が残っていた。
紅白戦の途中に降った雨は結局すぐに止んでしまった。
「止んじゃったね。」
「ああ。」
「あれ位だったらまだできたのに・・・。」
「不二!」
「・・・冗談だよ。」
手塚には冗談に聞こえなかった。
「面白い奴だね、越前は。」
「・・・。」
「やっぱり手塚は越前とやってたんだね。・・・都大会の前ぐらいかな。」
「なぜわかったんだ。」
「裕太対戦した時の越前が前と違ったから・・・かな。」
「どういう風に違ったんだ?」
「う~ん・・・何となく。」
誤魔化してみる。
「そうか・・・。」
やはり深く追求してこない。
「越前が変わったのが手塚のおかげなら、僕は手塚にも感謝しなきゃ。」
「なぜだ?」
「越前と裕太の試合。越前が前のままならきっと裕太も前のままだったよ。手塚のおかげで越前が変わって、その越前のおかげで裕太は変われた。だから手塚のおかげもあるってことだよ。」
「そうなのか・・・。」
「うん。」
手塚はあまりよくわからなかった。
「でも・・・。」
不二は手塚の左腕を見る。
「完治・・・してるの?」
「ああ。」
そんな感じはしなかった。
何となくだが・・・。
「手塚は無茶するからな。」
「いつ俺が無茶をしたんだ。」
「秘密・・・。」
「・・・。」
「でも・・・。もしも本当は肘が治ってないのに越前と試合をしたんだったら・・・。」
「何度言わせるんだ不二。俺は大丈夫だ。あの後も何も変化は無い。自分のことは自分が一番良く知っている。」
「そう・・・。」
「不二。雨も止んだし早く帰るぞ。」
「うん・・・。」
不二はとても不安になった。




「不二?」
「・・・。」
「不二ってば!」
菊丸は不二にのっかかった。
「あ!!」
不二は体制を崩し、菊丸もろとも倒れてしまった。
「いてて・・・。ゴメン不二大丈夫?」
「うん。英二こそ大丈夫?」
菊丸は不二に手を貸した。
「どうしたにゃ?さっきからボ~ッとしてるにゃ。」
「ううん。何でもない。」
「そう・・・。」
「・・・部長まだ来てませんよね。」
桃城が何か知らないかと菊丸と不二に聞いてきた。
「そういやそうだね。」
「大石もいないみたい・・・。」
河村が心配そうに言った。
「おチビはいるにゃ!」
菊丸はリョーマを見る。
前にこんなことがあった時はリョーマもいなかったからだ。
「あの二人がいないということは・・・。」
乾は何かわかった口ぶりだ。
「乾。何にゃ!」
「そうだよ教えてよ。」
「乾・・・。」
不二だけはその意味を察したようだ。
「乾、竜崎先生は?」
「まだ職員室だ。」
急いで職員室に走っていった。




「良かったな何も無くって。」
大石はホッとした。
「ああ・・・。」
「竜崎先生には上手く誤魔化してもらうように言ったから大丈夫だよ。」
「・・・そうではないようだ。」
大石は手塚の見ている方を見た。
「不・・・二・・・。」
知らないはずの不二が息を切らしてそこにいた。
「手塚・・・。」
「不二!・・・あの、これは・・・。」
「大石。悪いが先に帰ってくれないか。」
「うん・・・。」
大石は反論するのをやめて言うとおり一人帰っていった。




「やっぱり・・・肘の調子が良くないんだね。」
「ただ検査してもらっただけだ。」
「・・・。」
不二は俯いた。
「・・・心配したんだよ。」
「そうか・・・。」
「本当に心配したんだよ。」
「悪かった・・・。誰にも心配をかけないようにしたつもりだったんだ・・・。」
「言ってくれればいいのに。」
「言う必要は無いと思った。」
「・・・そう。」
不二は顔を上げた。
いつものニコニコ顔だ。
「ゴメンね手塚。呼び止めちゃって。」
そう言って不二は走って帰った。
手塚の顔を一度も見ずに・・・。




次の日の朝練。
「不二調子悪いでしょ!」
菊丸はきっぱりと言った。
「授業中もなんか上の空だったし、食欲も無かったし・・・。」
「本当に大丈夫だって。」
「不二調子悪いんだったら休んでいいんだよ。」
大石は心配だった。
あの後に何があったかは大体想像ができた。
「ううん。本当に大丈夫・・・。」
遠くから河村はその光景を見ていた・・・。




「不二。」
放課後。
手塚からお呼びがかかった。
「・・・すまなかった。」
「何が?」
「昨日のことだ・・・。」
手塚もずっとそれだけが気になっていた。
「僕はなんとも思ってないよ。」
「・・・心配をかけないようにしても結局は心配をかけているんだな・・・。」
手塚は少し悲しそうだ。
「謝るのは僕だよ。手塚に嫌な思いをさせちゃって・・・。ゴメン。」
二人は顔を見合わせた。
クスッと笑った。
「僕がどれだけ手塚のこと心配したかわかる?」
「・・・何かあった時には不二にも言うことにする・・・。」
「うん。それなら僕も安心だよ。」
約束した。
やっと心のもやもやがなくなった気がした。
「一緒に帰らない?」 「ああ。」
不二は手塚の手を握った。
手塚は気付かないフリをした。
「もう僕に心配をかけないでね。」






*あとがき*
サイト開設にあたって昔の小説を引張りだしてきました。何を書きたかったんだろう?と自分で思いました。
初めての不二塚でした。千影が書けって言ったんで(笑)。なぜか私は不二が書きにくくて奮闘しました。
こんな物をアップするなんてどうかしてるかもしれませんね。でも、思い出ってことで。
                                                 BYノエ





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