CLUB 009 入店



   いよいよこの日がやってきた。

   その店の噂を聞いて以来、何が何でも来たい、と熱望した店。
   その店――ホストクラブ009――の前で、彼女は目立たないよう小さく深呼吸をする。
   そしてバックからすばやくコンパクトを取りだし、さっと鏡に目を走らせた。

   うん。変なところはないわよね。

   自分の身支度を確認し終わると、彼女はおもむろにそのドアに手をかけた――。


   「「いらっしゃいませ」」


   重厚感のあるそのドアがふと軽くなったかと思うと、中からドアを支える二つの手。
   にこやかな笑顔で両脇に立つ、新人らしいホストが二人。

   ……この二人が新人って事は他のホストも相当期待できるわね。

   彼女は満足げに笑んで、彼らの案内するままに席につく。

   「どうぞ」
   「ありがとう」

   跪いて手渡されたメニューを、さも慣れた風に見えるように優雅に受け取って。
   その実、期待に高鳴りっぱなしの胸を目立たぬように押さえ、メニューを開く。

   中には噂通りホストたちの写真とプロフィールが並んでいた。


   「どうぞ。貴女のお好みのホストを」

   営業とはわかっていても、向けられた笑顔に体温がほんの少し上昇していくのをごまかすように、
   手に持ったメニューをぱたん、と音を立てて閉じて。

   彼女はゆっくりと口を開いた

   「そうね。それじゃ――」


「ハインリヒを」 「あなた(ジェット)にするわ」 「あなた(ジョー)にするわ」



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