4-1




   「かしこまりました」

    薄氷色の瞳が不適に笑って、クリスタルの灰皿を、すうっとテーブルに差し出した。


    だって、ヘビースモーカーなんだもん。
    会社では我慢して「煙草なんて」、って顔してるけど、こういう処だからいいわよ、ね?

    おもむろに煙草をくわえると、すかさず綺麗な長い指がライターをつかみ、目の前にささやかな灯をともしてくれる。
    その仕草の優雅さと、ライターの火で薄暗い店内に陽炎のように浮かんだ彼の顔が、夢見心地な空気を作り出していった。


    本当に、綺麗─────……


    振り向く、顔も。

    紡がれる、声音も。

    その動作、ひとつひとつ、まで、も……


    何を思い浮かべても、この薄氷色の瞳には見透かされてしまいそうで、寒気すら覚えるくらい、に。


   「どうかなさいましたか」

    唐突に言葉を投げかけられ、はっと我に戻った。

    いや、唐突じゃ、ない。
    単に、自分が音も風景も何もかも、吹き飛ばしてしまっていただけ、なのだ。

   「ああ、いえ……」




    「初めてなので、ちょっと疲れちゃって」     「あなたが、あまりにも素敵だから」


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: