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   「カンパリオレンジにするわ」


   「かしこまりました。カンパリオレンジですね」

   オーダーを確認すると、すっと手を上げるジェット。
   それに呼応して、さっきのあどけない顔をしたホストがテーブルにやってくる。

   「ジョー。カンパリオレンジを頼む」
   耳打ちするように囁いた声を彼女は聞き逃さなかった。

   ジョーっていうのね。
   やっぱり可愛いわ、この子も。

   彼女の視線に気づいたのか、ジョーはにっこりと微笑むと店の奥のカウンターへと消えていった。

   「俺も何か戴いていいでしょうか?」
   「え?ああ、好きなのを頼んでいいわよ」
   「ありがとうございます。では同じ物を」

   邪気のない笑顔を寄越すと、ジェットは指を鳴らしてカウンターの奥のジョーに目配せをする。
   ジョーはこくんと頷いて、カンパリオレンジを二つ、運んできた。

   ふうん。これがホストっていうものなのね。

   アイコンタクトで事を運ぶ手順が、第一印象とはまるきり違っていて、自分がホストクラブに来たのだ、ということを実感する。
   その鮮やかな応対にこっそりと感心して、

   「それじゃ、乾杯しましょう?」

   彼女はグラスを持ち上げ、ジェットと向き合った。
   長い前髪に隠れた瞳と目が合う。

   ジェットは緩く微笑むと、その長い指でグラスを掲げた。

「今夜、二人が出会えたことに」     「今日は是非楽しんでいってください」


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