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   「ボトルを入れようかしら」

   「ありがとうございますっ!」
   勢い込んで言うジェットに、はっと我に返る。


   しまった。つい調子に乗っちゃったわ。そんなつもりじゃなかったのに。

   とはいえ、満面の笑みで喜ぶジェットに、取り消しの言葉を言えるはずもなく。

   まぁいっか。臨時収入で懐は豊かだし。それにこの子がこんなに喜んでくれるんならそれも悪くない。

   嬉々としてボトルを取りに向かうジェットの後姿を見やり、目を細める。

   新人である彼が、初来店の客に指名されてしかもボトルをキープしてもらえる、なんてこと、
   もしかしたら初めてなのかもしれない。


   嬉しさを隠し切れない、といった表情で戻って来たジェットに、彼女はくすり、と笑いを漏らす。

   指名されることはなくとも、ヘルプでついたときに覚えたのだろう。
   ジェットは、慣れた仕草でグラスに氷と琥珀色のアルコールを満たしていった。

   この子が、ホストとして成長していくのを見るのも―いいえ―この、私が、成長させていくってのも一興かもしれない。


   鼻をくすぐるアルコールの香りを楽しんでいる彼女の心境は、紫の君を育てる源氏そのもの、であった。


      2度目の来店     同伴する


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