―あなたの小さな胸に小川をお持ちですか―
あなたの小さな胸に小川をお持ちですか
内気な花が風に吹かれ
頬を赤くそめて鳥が水をのみに訪れ
影が揺れそよぐ場所を――
どんなにか静かに流れてゆくので
誰も小川があるなどと知らないのです
だけどあなたは生命(いのち)の水を
日ごとそこから貰っているのですよ
ええ 三月には可愛い小川に気をつけて下さい
川があふれるときですから――
雪が丘を急いでかけおり降りて
橋がよく流されるのです
そのあとは八月でしょうか
牧場(まきば)がからからに乾くころには
忘れないで下さいね
この可愛い生命(いのち)の小川が 燃える正午に干あがらないように
(エミリー・ディキンソン)
中島 完(たもつ)訳
エミリー・ディキンソン詩集『続 自然と愛と孤独と』国文社1937年刊
心の中に流れている小川はその時の気持ち次第で
静かに流れたり、あふれそうになったり、干上がったりしているのでしょう
静かに流れることが出来るようにしたい・・・
貴方の心の中にも小川が流れていることを忘れないで…

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