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June 2, 2004
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      yuri_w03-2.jpg


      ☆I was born☆


      確か 英語を習い始めて間もない頃だ。
       或る夏の宵。父と一緒に寺の境内を歩いて
      ゆくと 青い夕靄(ゆうもや)の奥から浮き出るように
      白い女がこちらにやってくる。
      物憂げに ゆっくりと。
       女は身重らしかった。父に気兼ねをしながらも僕は
      女の腹から眼を離さなかった。
      頭を下にした胎児の 柔軟なうごきを 腹のあたりに
      連想し それがやがて 世に生まれ出ることの不思議に打たれていた。
       女はゆき過ぎた。


       少年の思いは飛躍しやすい。
      その時 僕は<生まれる>ということが まさしく<受身>である訳を
      ふと諒解した。
      僕は興奮して父に話しかけた。
      ―やっぱりI was bornなんだね―
      父は怪訝そうに僕の顔をのぞきこんだ。
      僕は繰り返した。
      ―I was born―さ。受身形だよ。
      正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。
      自分の意思ではないんだね―。
       その時 どんな驚きで 父は息子の言葉を聞いたか。
      僕の表情が単に無邪気として父の眼にうつり得たか。
      それを察するには 僕はまだ余りに幼なかった。
      僕にとってこの事は文法上の単純な発見に過ぎなかったのだから。

       父は無言で暫く歩いた後 思いがけない話をした。
      ―蜉蝣(かげろう)という虫はね。
      生まれてから二、三日で死ぬんだそうだが 
      それなら一体 何の為に世の中へ出てくるのかと 
      そんな事がひどく気になった頃があってね―
       僕は父を見た。
      父は続けた。
      ―友人にその話をしたら 或日 これが
      蜉蝣の雌だと言って拡大鏡で見せてくれた。
      説明によると口は全く退化して食物を摂るに適さない。
      胃の腑を開いても入っているのは空気ばかり。
      見ると その通りなんだ。ところが、
      卵だけは腹の中にぎっしりと充満していて
      ほっそりとした胸の方にまで及んでいる。
      それはまるで 目まぐるしく繰り返される生き死にの
      悲しみが 咽喉もとまで こみあげて居るように見えるのだ。 
      淋しい 光りの粒々だったね。
      私が友人の方を振り向いて
      <卵>というと 彼も肯いて答えた。
      <せつなげだね―>。
      そんなことがあってから間もなくの事だったんだよ。
      お母さんがお前を生み落としてすぐに死なれたのは―。


      父の話のそれからあとは、もう覚えて居ない。
      ただひとつ痛みのように切なく 僕の脳裡に
      灼きついたものがあった。
      ―ほっそりした母の 胸の方まで 息苦しく
      ふさいでいた白い僕の肉体―。

      (消息)より
      吉野弘
      ことばの流星群:集英社











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Last updated  June 2, 2004 09:51:34 PM
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