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どんよりと曇っていて今にも雨が降りそうな朝
ちょっと憂鬱な気分
紅茶を飲みながら窓辺に植えてある
白い野ばらの花を見ています
野生の薔薇なので園芸種のような華やかさはないけれど
可憐な優しさが好き
だからお庭にもたくさん植えてあるのよ
秋には赤い実をつけます
その実を採っておきローズヒップティーにします
嬉しいことには植えたばかりの
薔薇ピーエール・ドゥ・ロンサールが2輪咲きました
淡いピンクの花が素敵です
きっと来年はもっとたくさん咲いてくれるでしょう
野の小ばら
わらべは見つけた、小ばらの咲くを、
野に咲く小ばら。
若く目覚める美しさ、
近く見ようとかけよって、
心うれしくながめたり。
小ばらよ、小ばらよ、あかい小ばらよ、
野に咲く小ばら。
わらべは言った「お前を折るよ、野に咲く小ばら!」
小ばらは言った「私は刺します、いつも私を忘れぬように。
めったに折られぬ私です」
小ばらよ、小ばらよ、あかい小ばらよ、
野に咲く小ばら。
けれども手折った手荒いわらべ、
野に咲く小ばら。
小ばらは紡ぎ刺したけれど、
泣き声、ため息、かいもなく、
折られてしまった、是非もなく。
小ばらよ、小ばらよ、あかい小ばらよ、
野の咲く小ばら。
by ゲーテ
高橋健二 訳/新潮文庫
※ヨーロッパの野ばらは赤いのでしょうか…
モーダリンの散歩道
ぽっかり、しろい雲が 空をながれ、
野には、五月の金色の花が、散らばる。
水仙は足もとに咲き、つぐみがそばを翔ぶと、
から松のふさ飾りが ゆらゆらゆれる。
ほのかなかおりが、朝風にのって はこばれる、
しめってふかい草の
と、掘りおこした褐色の大地の匂が。
小鳥は、たのしい春の誕生をよろこび、
ゆれる木の枝から枝へととんで、さえずる。
春のささやきと音で、森はすっかり活気づき、
はいのぼる野バラの木で、つぼみが淡紅色に咲く。
クロッカスの花壇は、ふるえる白銀の炎のよう、
つばさをひろげた松は、恋の物語をささやき、
笑い声をたててゆれ、みどりのマントをゆする。
凹地の楡の木かげは、鳩のかがやく虹の
銀色の胸の、はなやかな光で、あかるくなる。
ごらん! ひばりは、むこうの牧場の巣からとび上がり、
クモの巣の糸と、露のネットを つきやぶり
青い炎となって、川を下ってゆく。
かわせみも、矢のようにとび、大気を切りさく。
この生命感はすばらしい、たとえ季節の終わりは
ちかくても。
冬の破壊と雨が、やがて訪れ
ゆりの金色はあせて、くりの花が 赤白の
大波のように、草地に散りしくことだろう。
この暖かい日ざしも、やがては うすれ
木の葉は落ち、小鳥は あわただしく去って、
わたしは、花なき日の雪のなかに、とりのこされ、
春のかがやきと、すぎさった青春の喜びを かみしめる。
しかし、しずかに、わが心よ!
空しいことと思わないでおくれ、
太陽や、草原や、花のかがやきを見てきたことを、
生きて恋してきたことを。
はかない恋こそ、ふたたび
咲く春の花よりも、さらにすばらしいものだから。
byオスカー・ワイルド
松浦 暢 訳