マンハッタンの幼稚園



現在妻子は日本にいて、娘は幼稚園に通っている。
何とか家族一緒に住めるような身分になりたい。

しかし、日本でもそうだが、引っ越した時点で、こちら(NY)で
すぐに入れるような幼稚園を探すことは現実的に不可能だろうと
思われる。そこで、ある程度事前に幼稚園を探し出すことにした。

私は11月にこちらにやってきたわけだが、こちらの幼稚園事情は
まったくわからない。アメリカでは、9月に学期が始まり、5月から
6月までその学期が続くということだけがかろうじて事前に知ってい
た情報だろうか。

どうやら、アメリカでは、幼稚園は義務教育ではないらしいとい
うことにようやく気がついた。ということは小学校のように公立
があると言うわけではなく、みんな私立、あるいはカリフォルニ
アやニューヨークの大学のように州立や市立があるのか、、ぐら
いだろう。

義務教育ではないということを考えると、幼稚園に通わせないと
いう選択肢もあるにはあるわけだが、今まで幼稚園に非常に楽し
そうに通っていること、いままでの娘のはじけぶりから見て、と
ても家庭内ではおさまりきらなそうなことを考え幼稚園を真剣に
考えることにした。

一応ニューヨークに入る前にインターネットでニューヨークの幼
稚園事情を調べてみた。しかしなんだかちっともわからない。数
多くの幼稚園があるようだが、大きいのか小さいのか、どの学年
まであるのか、本当に千差万別でまったくイメージがわかなかった。
これは実際に現地にいくまではどうしようもないな。。新聞を呼ん
でみると、日本顔負けのお受験があるらしいということもわかった。
これはまぁ我々にとってはどうしようもない。




11月ニューヨークに着いてから、幼稚園の情報を集め始めた。イン
ターネットでは収まりきらないほどの幼稚園とそれこそ消化しきれ
ないほどの情報があるということがわかった。

その結果決めたこと。
私の英語の理解能力の問題と時間の制約・・から、ある程度きめう
ちをせざるを得ないな・・これは。

客観的な情報よりも自分が仕入れる範囲での口コミの情報でまぁ今
娘が通っている幼稚園に近そうなイメージのところを選ぶことにし
た。そう入っても難しい。個性重視とどの学校も謳っていることも
あって、学校自体の情報がそれこそ個性的だ。日本の偏差値に毒さ
れてしまっている私にはどうにもこうにも判断基準がない。しかも
判断しようにも時間がないのだ。

もうひとつ我々として気になるのは、日本人であり、超マイノリテ
ィである我々に対してどこまで寛容であるかということだ。もしか
したら、今の我々にとっては、それが一番重要なことかもしれない。




情報を集めてみると、どうも願書を出す前に学校開放日というのが
あるらしい。普通の親は、そこで幼稚園の雰囲気というのを悟るら
しい。私の場合はそんなものはとっくに終了していた。あとは、願
書を出して面接とかがある際に、学校を見て回るしかないのだ。し
かし一応外観だけでも学校の様子を見ておきたいと思った。

幼稚園は、マンハッタン中に散らばっていた。まぁ5番街とか中心部
にあるものもあるが、どちらかというと、逆に1番街とか9番街とか
不便な場所にあるところが多かった。2日ほどかけて、幼稚園外観周
りを始めた。こういう時に役に立つのが、地下鉄ではなく路線のき
めが細かいバスだ。この2日間でマンハッタンのバス事情にだいぶ詳
しくなった。

外観だけといっても、だいぶ幼稚園の様子は違うものだ。重厚なとこ
ろ、フレンドリーなところ、まったく看板を出していないところ・・
本当にいろいろあった。参考になった。




一応、教育内容、外観の様子と、勿論家からの近さ、友人の子供達が
通っていて評判のいいところを併せて3つをピックアップして願書を
出してみることにした。仮にA,B,C としようか。

Aは、ビレッジにあるフレンドリーなところだ。友人の子供が通って
居たところでもある。何しろビレッジというおしゃれなところに
あるのが、うれしい。ちょうど子供達の帰り時間にそこについたが、
本当にカジュアルで活発な感じである。

Bは、私の家のあるミッドタウンウウェストから一番近い幼稚園。
歩いて通うことも不可能ではない。実は、幼稚園の本まで買って調べ
て見たのだが、ミッドタウンウェストには、手ごろな幼稚園というのは
あまりないようだ。子供達は結構居るような気はするのだが・・
この幼稚園は、教会の中に併設されていて、3歳から5歳の子供達が
ひとつの教室で生活をしている。こじんまりとした感じの幼稚園だ。

Cは、マンハッタンでも高級住宅地のアッパーイーストにある。
この中では一番大きな幼稚園で小学校まである。家からの交通の便は
悪いが、30分はかからない。この学校の特色は、例えば問い合わせを
したときの反応がいちいち的確だし丁寧だ。いい返事も悪い返事もす
ぐ返ってくる。いわゆる学校としての組織がキチンとしているところ
に違いない。
やはり下校時に行ってみたが、気のせいか子供までおしとやかな感じが
してしまうのは、気のせいだけだろうか。
反面学校の教育方針がしっかりいていることから、こちらの希望がど
こまで通るかとか、そういう個別の希望をどこまで聞いてくれるか、
私の子供は日本人で非常にはじけているがそういう子供でも十分に受
け入れてくれるかと言う点が我々としても一番気になるところであっ
た。

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生徒の選び方も学校によって様々であった。
Aは、選抜なし。先着順で決定。
Bは、親の面接
Cは、親と子が別々に面接を受ける。(3歳半の子供の面接ですから遊び
でしょうけど)現在の幼稚園からの推薦状と親の調書


Aの順番待ちはきつかったなぁ。1月5日に学校前に並ぶというのだが、
今年の冬の寒さは異常であった。年末に一度問い合わせたところ、受付
は朝8時からだという。
「じゃ、何時ころ皆さん来るんですか」と聞くと、学校の人は「だいぶ
早いですよ。7時には行列が出来てますよ。。」というではないか。私の
子供は4歳だから、幼稚園にも編入の形で入らざるを得ない。キャンセル
待ちだという。だから娘に割り当てられたスペースは狭いに決まってい
る。このため、言われた時間よりもかなり早く行かなければならない。
決死の覚悟で早朝5時半に学校に到着した。げげげ・・・
既に30m以上の行列が出来ている。しかも私の後も続々とタクシーで
親が乗り付けてくる。マンハッタンの人たちの教育熱には圧倒された。
しかもさむいっ。その日は小雨までぱらついていた。ほっかいろを持っ
ていたのだが、ほとんど役に立たなかった。私も前に並んでいる人たち
と一緒にコーヒーを買い出しに出て、何とか受付時間まで時間を持たす
ことが出来た。
確かに、この幼稚園は面接といった選抜はない。しかしこの真冬に夜明け
数時間前から並ぶ親の熱意で選抜するというのは、ある程度理にかなって
居るのかもしれない。それだけ教育熱心な親のこどもであれば、少なくとも
ある程度のレベルの子供が育つであろう、と考えることについて合理性はある
ような気もする。3歳くらいの子供を面接して合否を判断する方がどうかして
いるという考え方もできる。
ちなみに行列の中には日本人はいなかったが、数名のアジア人は認められた。
しかし、話に聞いてみると一クラス複数名の日本人が在籍しているようで
ある。
さて、この合否どうなることやら・・

実は、私は、東京のとある旅行会社のイベントでNYまでの往復航空券1万
円、先着20名様というのに並んだことがある。土曜日の朝10時に受付で、
私は金曜日の夕方8時ころにイベント場まで行った。徹夜覚悟だった。
甘かった。非常に・・。既に200M位の行列ができていた。先頭は、既に
一泊しているらしい。世の中の人は熱心というか暇な人がいるものだと半
ば社会勉強をしながら、半ばあきれつつ即刻退散をした経験があるが、そ
のときの経験を思い出した。

話がそれてしまった。

Bの親の面接は気楽だった。幼稚園の園内を見せてもらって気楽な話をして
それでおしまいだった。1月の半ばに訪問したのだが、その時点でひとつ空
きはあるものの3月までは結果を出せないということだった。ここは期待が
もてる。聞かれたことは、唯一他にどこかの幼稚園に出願しているか、今日
幼稚園を見て、すごく興味をもったか、それとも一般的に興味をもったか
の2点だけであった。
20名程度のクラスの中に日本人は2名。他アジア人は2名、そのほか英語が
第2言語である子供が3名ということで、かなり多言語の比率が高い。
おまけに教師もフィリピン、韓国など多言語からの先生が多く、日本人への
理解も高い。
ここは期待が持てる。

Cはもっとも丁寧な対応だった。子供がアメリカに居るときを見計らって面
接をしてくれた。面接は、勿論英語であったが、事前に想定された質問で
十分対応できた。今まで親がどのような教育を受けてきたか、子供にどの
ような教育方針で臨んでいるか、なぜこの学校に興味があるのかといった
ことであった。さらに、私がなぜ日本にいたのに、自分たちの幼稚園を知
っているのかにすごく興味をもたれた。でもその後に問い合わせたら、何
しろここも空席待ち。あまり期待できないような言い方をされた。

ここは、願書を出すのが大変だった。例えばこちらから願書の送付をお願いし
て、願書をこちらが書いて、それで郵便で送り返すのは一々時間がかかる。
そんなことを思いながら調べていて、ふと気がついてみたら、今日がその締
め切りである11月30日。しかも日曜日。
電話したって学校はつながるわけもない。そもそもお願いもしていないので
願書も無い。そこで、メールで「願書を出したいんですけど・・」と書いた。
(なんと泥縄・・・)
月曜日電話で確認してみると案の上、「そんなメールついていない、日にち
が過ぎてしまっているから願書は今からでは受け取れない・・」と拒否され
てしまった。そこで何人かの人と、一応メールで意思表示をしていること、
11月末日は日曜日であり、どうしようもなかったことを交渉して、その日
のうちに学校までいって願書をなぐり書きのまま提出してきてしまった。
まぁ願書を一応受け取ってもらっただけでもありがたかった。
もうひとつ、これは、願書を提出した後ではあったが、現在の幼稚園からの
推薦状と両親からのなぜ本幼稚園を希望するのかという調書の提出を求めら
れた。日本ではまだ幼稚園にいっていない位の年代なのに結構丁寧な審査を
するものだとびっくりした。
 我々には、例えば子供を共学校に通わせることについてどう思うか、子供
への教育方針等非常にかなり詳しく記述することが求められた。
 こちらとしても、ここまで丁寧に見てもらえるならば・・と日本から子供
の幼稚園の教材や何か参考になりそうな写真なんかをすべて学校に持ってい
った。
 逆にここは日本人やアジア人をほとんど認めることが出来なかった。





でも3つに共通しているのは、自分のところが一番良いという強烈な自意識を
持っていること。それから料金がべらぼうに高いこと。

マンハッタンは子供を育てる場所ではないとよく言われる。それは例えば治安
が悪いとか、空気が悪いとかそういうことではなく、教育を受けさせるための
コストが高いからではないかと疑ってしまうくらいだ。普通の人が払えるよう
な金額ではない。私だって当てはまる。これで子供と幼稚園の相性がわるかったら本当に手のうちようがない。まぁこればかりはしょうがないが・・

これから毎年毎年教育をどうしようか悩むことは間違いない。


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