GUINの匣

GUINの匣

にわか大工


昔から大工仕事には興味があって、父が庭先で『ぎぃーコぎぃーコ』やり出すと傍で見ていた。
父は大雑把でも、手を動かして何かを作る事を苦にしない人だった。傍へ行くといつも何かしらの説明をしてくれる。

「ノコギリはそのうち切れると思って挽かんと、慌てたって切れへんで。」
「鉋を使いたい?それやったらまずは刃の研ぎ方から始めんかったらあかん。」
「金槌は長う持ってあてぇや」
「木の切り終わりは、ゆっくり落とす方に手ぇ当ててせんと割れるがな。」

などなど、説明とも独り言ともとれるようなペースで話してくれた。

父のすごいと思うところは、幼いし、失敗するであろう私に、

「やってみるか?かめへんやってみ。」

とすんなりさせるところだろうか。失敗しても叱られた事がない。笑いながらいつもこう言う。

「ほうらな。せやから言うたやろ。お父ちゃんが直すから、見とってみ。」

である。私にはなかなか出来ない事である。邪魔くさいだろうに。
そして、失敗したものが釘打なら釘を抜き、鋸引きならゆがみを直す。その地道な作業がまた楽しくて父の傍で日がな一日過ごしていた。

私が大工道具や大工仕事に抵抗なく(大工道具に囲まれていると妙に安心感がある。ホームセンターなら半日居れる。昔は一日だったが、最近は気忙しくて無理かな)、それなりに時間の掛かる事を執拗にやれるようになったのは父の姿を重ねるからだろうか。以前も日記に書いたが(項目ー父についてをお読み下さい)、地道にまじめにを絵に描いたような人だった。

幼い時ずっと使われていた踏み台があったが、それも父作だったらしい。(全くぐらつきがなかった)

「あれもお父ちゃんが作ったやつやねんで。」

そう言った時の父はとても自慢気で、うれしそうだった。


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