GUINの匣

GUINの匣

風の隙間


暖かな日差しがとても眩しい。春は近いと囁いている。

斜陽とともに冷えた風が流れ、冬を忘れるなとつぶやいている。

私はその僅かな隙間に背中を丸め、埋もれるように急ぎ足で通りすぎる。

ポケットに手を入れ、ゴソゴソとかき回しながら。

探しても希の物は出て来やしない。

そう、通り過ぎた物だけがそこに残る。

先が見たけりゃ丸めた背を伸ばそう。

つかみたければその手を出して、凍える指をぐっと握ろう。

そのうちに暖かい日差しが震える拳を緩めてくれるさ。


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