GUINの匣

GUINの匣

金色の空を取り込んで


ひび割れたすき間から夕日のあかね色が差し込み、冷たい風など忘れて見入ってしまう。
いつしか指の芯まで冷え込んで、慌てて歩き始めた。
目の前に最短距離の横断歩道。右手には心臓破りの歩道橋。
時間にはゆとりがあった。
迷わず歩道橋を選ぶ。歩道橋の上から大きなキャンバスをのぞき込む。
夏、涼を運んでいたため池は吹き荒む風に縮み込んでいるように見えた。水面は空と同じ凍えた色。
薄氷のすき間のあかね色はどんどん透明になって、金色に変わっていった。
自分の心にも同じ金色。少し暖かくなった。

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