苦労した方言



方言の違いというのは、どこの国にもあると思うが、
ノルウェーでは最初とても苦労したのがこの方言の違いである。

ちょっとばかし方向がずれて、本来行きたかったスウェーデンから
ノルウェーに来たとき、私は言葉に関してそんなに心配をしていなかった。
ノルウェー語とスウェーデン語は近いし、スウェーデン語が
ある程度聞き取れているならば、ノルウェー語を理解するのは
それほど難しくはないのではないかと思っていた。

それが大きな間違いだった。
同じノルウェーでも、東側オスロの方言は、はっきりしていて、
私には理解が比較的しやすかったのだが、
ここは西側地域、しかもそれに加え独特のベルゲン方言がある、
ベルゲンだった。

新聞は何となく読めた。
テレビのニュースだって何となく解ったのに、実際バスのなかとかで
人が話している言葉が一言も聞き取れなかったのだ。
しかも3ヶ月、4ヶ月経っても、同じ状態。だんだんと自信喪失・・・
そして、ノルウェー語のクラスでは、毎回私が口を開くたびに
君のはスウェーデン語だ、だのと先生から文句を付けられてる・・

クラスで習う「標準」ノルウェー語が、周りでは話されていない・・・

例えば「私はノルウェー人ではありません」という文。
クラスで習うのは Jeg er ikke norsk.(ヤイ アー イッケ ノシュク)である。
しかしベルゲン人は、「私」にあたる Jeg(ヤイ)をヤイとは言わない。
Eg(エグ)という。Rの発音も、東では巻き舌、ここではドイツ語のように
喉に引っかかったようなRの発音をする。

だから「エゲイッシェノゴシュク」(無理やりですが)という風に聞こえる。そりゃ、わかるかいな、と今では思う。
最初は、何でこっちの人はみんな エグエグ言ってるのかな?
なんて思っていて、エグが「私」という意味だと解ったのは
大分あとの話だった。

でも6ヶ月経ったある日。バスの中の人々の会話が、突然少しは
理解できるようになった。それからは、大分楽になった。
そのあたりから、気持ちが楽になり、ノルウェー語に慣れてきたんだな、
と自信が出てきて、話すのを聞いて、この人は南のほうのひとだな、
とか北のほうの人だな、とか大体わかるようにもなってきた。

それでも、私のノルウェー語はまだまだ発展途上。
英語ばっかりしゃべっているので、全然伸びていないのが現実です。


◆家族のノルウェー語◆

パートナーの家族は、みんな英語が堪能なので、私がいるときは
私が話が解らなくて取り残されないようにと気を使ってくれて、
最初の頃は、英語でずっと話してくれていた。
だから、最初からいろんなことが話せたし、良かった。

しばらくしてから、私がノルウェー語を学べるようにと、
家族同士の会話は私がいてもノルウェー語でするようになったが、
やはり癖か、私には無意識に英語で話してくることが多かった。
最近は努めて、ノルウェー語を話すようにしてくれているのが嬉しい。

しかし、この家族、みんなそれぞれ違う方言を話すので面白い。
お母さんは、オスロの人で、バリバリにオスロの話し方をする。
ベルゲンに30年住んでいても全く変わらない。家族のなかで、
一番聞き取りやすい。

お父さん(お母さんの旦那、パートナーの父親ではない)は
ベルゲン人。でも割とクリアーに話してくれるので、わかりやすい。

弟は、ベルゲンぽい話し方をするが、ちょっと違い
妹は、ベルゲンの一番わかりにくいきつい方言を話す。早口
下の妹は、西と東の方言がちょうど良く混ざった話し方をする。
ゆっくり話すので、解りやすくはある。

一番問題は私の彼である。物凄い早口で、しかもはっきり発音しないので
未だに何を言っているのか一番解らないのがこの人。
今までの人生をずっとベルゲンで過ごしていながら、ベルゲン方言を話さない。

なんで家族でここまで違うかと思うくらい、一人一人違うのである。
未だに何故だかよくわからない。


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