『等価交換』



なんの犠牲も無しに得られるものなんて
何もない--------


「等価交換」

「なぁ、大佐ー。」
ある雨の日。
心無しか憂鬱な顔で仕事をしている大佐に、エドは話しかけた。
「何だね。鋼の」
オートメイル付け根が痛むのかうずくまるエドに大佐は顔を覗き込みながら返事をした。

「錬金術師…って、淋しい生き物だよなぁ…」
「何を粋なり…。鋼のも錬金術師だろう。淋しいのかね?」
唐突に遠い目で話し掛けるエドに大佐は仕事をしていた手を止めた。

「錬金術の基本は等価交換。
 だったら術師は何も得ちゃいない…。
 それどころか……失って行くんだ…」
「…鋼の?」

「オレは何も得ちゃい無い。
 母さんも蘇らせることも出来なかったし…
 弟も無くしかけた…」
話していくうちに、どんどん声が小さくなっていく。

エドを心配してかせずか、大佐は口を開いた。
「鋼の。たしかに、錬金術の基本は等価交換。
 術師なら失うものもでてくるだろう…」
「…………。」
「だが、犠牲を負ってこそ得るものも必ずある。」

「オレは何も得ちゃい無い!!」
エドは机をバンと叩き叫んだ。

エドの金色の目からは涙がこぼれていた。
悲しさからか絶望、悔しさからか
壊れたような顔で泣き崩れるエドは顔を隠しながら雨の降る外へ飛び出して行った。


1時間は泣き続けたであろうか。
エドは涙を拭いながら街をさまよっていた。
拭いでも拭いでも枯れ果てる事のない涙にエドは苦戦していた。
「…バカやろう…。なんで無くならないんだよ。
 オレの大切なものは持っていくくせに…」

「それも大切なものだと私は思うがね」
大佐は傘もささずにビショビショになっていた。
勿論、エドも傘もささずに居たためビショビショになっている。
大佐は畳んだままの傘をエドに渡した。

「…傘あるんならさしてこいよ…」
「おや、忘れていた。」
濡れた笑顔で冗談を言う大佐にエドはぷいと顔を反らした。

「君がそんなに泣くとは珍しい。
 雨でも降るんじゃないかね…おや、もう降っているな」
「…泣いてねぇよ。」
「その顔の雫は何だね?」
「これは……あ、雨だよ!!」
エドは必死で誤魔化すが大佐は悟ったように笑う。
「さっきは指令部の中でも雨が降っていたようだが…雨漏りかね?」
「………」
クスクス笑いながら話す大佐にエドは涙を拭いながら言訳をする。

「鋼の。何も得て無いと言うなら私が何か見合うものをやろうか?」
「…え?」
「それとも、私ではやれないようなものが欲しいのかね?」
「……。」
エドは少し考える素振りをして恥ずかしそうに顔を下ろして言った。

「…いらない」

「え?」
何かやろうという大佐にエドは何も要求しなかった。

「オレは…大佐が居てくれればいいよ。
 多分オレは何も得て無いわけじゃなかったんだ。
 いろんなものを無くしたおかげで軍の人たちや…大佐に会えた。」

さっきまで崩壊寸前のような顔をしたエドは別人のように強い顔で笑った。

「………雨…止んだな。」
エドの笑顔に大佐も微笑みを返し、空を見上げればもう雨は降っていなかった。


------錬金術とは物質の構造を理解し分解し再構築する科学技術である。
「等価交換」は質量保存の原則から証明される。
無から有を生み出す事はできない。
それと同様に、有から無に変える事は出来ない------


「なぁ、大佐ー。」
「何だい鋼の?」
濡れた街をエドと大佐は指令部へ戻っていた。

「せっかく持って来たんだし、傘さそっか。」
まだ畳んだままの傘をパンッと勢いよくさした。

「大佐、いっしょにはいろ!」
「あぁ」

雨の止んだ街にはまだ人は出てきていない。
外を歩くのは青い傘をさした2人だけ------


 -*-*-*-*-*あとがき*-*-*-*-*- 
えーっと、初の鋼小説ということで。(短いですが;)
シリアス(?)ロイエド(!?)書いてみました。
その場で直書きなので制作時間は1時間も掛かったか掛かって無いか。
私が今まで書いた小説って大半は雨の話しなんですが…;
鋼ってシリアスイメージむんむんなんでギャグな小説かけるのか…;
まぁ、第1作目はシリアス。第2作目は…明るいのにしようかナァ;(無理だ)

H16.2.1(明日は私の誕生日~vv)

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