はじめのいっぽ

はじめのいっぽ

NICU(新生児集中治療室)


そして小さな赤ちゃんにどう接したら良いのか分からなかったり。
毎日がいっぱいいっぱいでした。

呻吟(呼吸が苦しくてうなること)の観察の重要性が分からなくて先輩にこっぴどく叱られたり。
静かに子どもが具合が悪くなっていたり。
赤ちゃんは話さないから自分たちの観察力がものをいうのです。
最初は業務をこなすのにたくさんで赤ちゃんが十分にみれていなかった。
社会人として、チームで働いていることの意味とマナーも先輩からたくさん教わりました。
お母さんと接するのもビクビクオドオドしながらでお母さんには不安を与えてしまっていました。

5月に入り、初めての夜勤で早産の赤ちゃんの入院を受けた時、あまりの小ささと脆弱さに圧倒されて何もできず足はがくがくして動けず、その日の夜勤を終えてしまいました。
人工呼吸器や点滴がたくさんついて保育器に収容されている赤ちゃん…。
あまりに痛々しくて怖かった。
それしか頭になかった。
アラームが鳴っても怖くて見に行けないくらいでした。
そんな中、初めて「死」も目の当たりにしました。
自分の祖父母がなくなった時もその場に自分はいなかった。
でも今度はその場に自分が間近にいる。
あまりに小さな赤ちゃんが必死に闘いながら、でもその中で亡くなっていく…。
こんなに小さいのに、まだ人生を始めたばかりなのに。
そのことがあまりにショックでNICUのすみでシクシクないたり。
でもそんな中で私たちはこの小さな命を救っていかねばならない
という思いも強くなりました。

でもNICUを続けていきたいと思わせてくれたのはやはりMちゃんの存在が大きい。
超早産で産まれたMちゃん。
たくさんの命の危機と闘いながら約1年入院していました。

本当は私の先輩が受け持ち看護師だったのですが、先輩が辞めることになり
是非私に受け持たせて欲しいと頼み込みました。
この子は絶対生きておうちに帰してあげたい。と強い気持ちもあったのです。
Mちゃんはとても生命力が強くて、たくさんの危機を迎えながらも
それを一つ一つ乗り越え、大きくなり退院の日を迎えることができました。
退院の時は夕日が差し込んでいた頃でした。
産まれて初めて病院の外に出たMちゃん。
ほっぺが夕日で照らされて赤くなっていました。
そして外に出た瞬間、とてもまぶしそうな顔をしました。
あまりにそれが印象的でした。
その子が病院以外の環境を感じることができたことが感動的でした。
「本当にこの子を生きておうちに帰すことができて良かった」
「赤ちゃんの生命力は私の想像以上にかなり強い」
「たくさんの危機を迎えながら、それと必死に闘う子を見守る母や家族も本当につらかっただろうけど、頑張ってこられた。すごいなあ」
今までのことを思い出して、同期の子とMちゃん家族を見送りながら
涙を流しました。そして
NICUでとことんやっていきたい。もっと赤ちゃんの勉強をしていきたい。
もっとお母さんや家族を支えられるくらいの存在になりたい。
と誓い合ったのです。


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