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オレは明日からしばらく退屈な時期をすごすことに決めた。目標は二ヶ月。金が尽きるのが二ヶ月後ぐらいだからである。次の仕事はその間にゆっくり考えることにしたらええ。久しぶりに部屋の掃除をする。久しぶりに服を大量に買う。ついでにスニーカーも買う。自転車を買う。Amazonで本とCDをしこたま注文する。多種の紅茶をまとめ買いする。ついでに大好きなバナナチップも買う。スケッチブックを買う。大きなサラダボウルを買う。枕を新調する。お香を買う。温泉のガイドブックを買う・・・そうみなさんお気づきの通り、オレは完全に「調子に乗っている」のだ。人間ここまで機嫌がええとエロい欲求など二の次三の次になることを実感する。ビデオ試写室の店長EからTEL。「お前ヒマやったらウチで働くか?」。アホか。オレのことを失業者やと思もとる。明日から久しぶりに「退屈な昼下がり」を堪能するセレブなオレが、なんでこの年で時給八百円やそこらで営業回りのサラリーマンの精子まみれのティッシュを片付けなアカンのじゃドアホ。明日は「退屈な昼下がり」第一弾として、新調した自転車で真田山の屋内プールに出かけることに決めた。
2006.05.31
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自分の内側と外側が、すっかり入れ替わってしまった感じやねん。だから。オレの中身はゲロと一緒にそこらのドブに流れ出して、代わりに世界全体が図々しくもオレの口から鼻から耳から目から肛門から入り込んできよる。だから。言い換えれば、オレの口の両端をぴぃっと引き裂いて皮膚を全部ひっくりかえしたような。裏が表になって、表が裏になる。今まではなんとなく自分には「内面」というものがあって、世界とのズレにイライラしたり、世界との調和に安心したりしていると思もとった・・・・・・・大間違いやった。世界はオレで、オレが世界や。だから。今日は久しぶりに想像だけでオナニーでもしてみよ。
2006.05.29
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生きとるか?あ、それはワシやがな。約二ヶ月ぶりのログイン。生きとる。生き長らえとる。みんな変わりはおまへんか?仕事はひとつ終わった。しばらく休みや。いつまで?目標は二ヶ月ぐらいか。さて、男三十六才、怠惰な生活を謳歌するための準備を始めよう。
2006.05.27
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意外にも 烈火の如き 肉牛蒡<自評> 地味な顔に似合わぬお姉様キャラを演じ、出会い系コミュでかわいいジャニ系の男子を見つけます。人妻の魅力でアタシ好みにカスタマイズしようと意気込み、旦那にも見せたことないようなエロ下着をつけての初デート。夜のバーでは、彼女のたったひとつの武器である乳谷間を必死でアピールしていることは男子にもバレバレです。臆病な男子をなだめすかしていざホテルへ。お姉様がリードしてあげるわよ、と、辛抱たまらずジーンズをガサガサと下ろした瞬間、あまりのベビーフェイスに似合わぬグロテスクなチンポが出現。「おチンチン」とは決して呼べない「チンポ」がそこに。若い頃の千人斬りを自慢するような大工の棟梁、もしくは金満政治家のごとき隆々とそびえ立つ赤黒い巨根であります。さっきまでの青臭い恋バナは一体何だったのでしょうか。
2006.03.02
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今日は世の中がスローモーションで動いとる。忙しさから解放された夜はいつも、動く歩道からピョンと飛び降りたように体が重く、こんな時はなるべく誰とも口を聞かないことに決めとる。夕方から冷え込んだせいか空気がキレイで夜の通天閣の輪郭がハッキリと見える。駅前のうどん屋できつねうどんと稲荷寿司を食い、コンビニで煙草と剃刀とヘアワックスを買った。コンビニを出てから家に着くまでの間、オレの耳は無意識で周りの雑音をシャットアウトし、まるでドス黒い海底をノッソリと散歩するように歩いた。塞ぎきれない雑音はまるで頭上はるかかなたの海面からかすかに聞こえてくるウミネコの鳴き声のようである。部屋に戻ってポケットの物をテーブルにジャラリと放り出す。ボフフとストーブに点火して、アホ猫にエサをやり、ラジオをつける。こういう日は断じてテレビを観てはいけない。テレビは漬物石のようにただジっと押し黙っていればいいのである。国営放送のラジオアナウンサーは自社の激変がまるで嘘のように淡々とした調子で明日の満潮時刻を一つ一つ正確に読み上げる。それは正しいことである。と一人納得しながらオレは郵便物をチェックした。はい。税金は払いません。ラジオはいつの間にか映画音楽特集に変わり、クソみたいなポール・モーリアの音楽に時々ザザザと波のようなノイズが入って心地よい。オレはアンテナを伸び縮みさせ、部屋の中をぐるぐると歩き、一番おもしろいノイズが入る箇所を探し出した。ピー。ガー。ポロリロ。ザザ。ははは。ムチャクチャなりよった。オレはラジオをベッドに放り出して、メールをチェックし、決断を迫られない案件にだけ返事を書いた。眠くはないのに海藻に足をとられたように体が重い。アホ猫はしばらくストーブの前で寝転んで伸びをし、再びベッドにもぐり込んで丸くなった。明日は休みや。天王寺MIOのFrancFrancで前から目をつけとる壁掛け時計を買おう。無印で安いクッションを買おう。DIESELでデニムのパンツを買おう。オレは買い物リストをメモった。ラジオを切って、ストーブの灯油をベランダから運ぶ。邪魔臭いがオレは灯油ストーブでないと不安なのだ。実際に燃えた炎で暖をとることは冬の幸せである。ガラガラと窓を開けるとピンと張りつめた冬の夜が少しずつ部屋の中に入ってくる。アホ猫はフトンの奥にもぐり直した。オレは吐く息が白いのを確認しながら、両手をシャカシャカと擦り合わせ、深呼吸をして冬の匂いをかいだ。ハードディスクの音が気になり出し、電源を落とす。まだジーとどこかで音がする。蛍光灯を消す。テレビのコンセントを抜く。まだ何かの音がする。冷蔵庫の扉を一旦開けて閉める。オーケー。室内は深海のように静かになった。耳の中でチリチリと妙な音がした。血潮の音ではないかと思う。頭上はるかかなたの海面では、電車のブレーキの音とホステスに送り出される酔っぱらいの声がかすかに聞こえる。オレはなお海藻に絡まったまんまで、ストーブに再び点火し、コーヒーを沸かした。妙に甘いもんが食べたい。今日はこのしょうもないオレオクッキーなんぞで辛抱しといたるが明日はそうはいかん。キース・マンハッタンのケーキをごっそり買うてくることに決めた。上方の演芸に関する記録本を読む。花菱アチャコが全盛期に妾を囲っていたのはこの家からすぐ近くやった。妾に一戸建てとお手伝いさんをつけて囲える漫才師は今でもなかなかおらんやろな。明日チャリンコでその場所を通ってみることにする。遠くに見える駅のホームの電灯が消えた。オレは寝間着に着替え、歯を磨き、今日は性衝動がゼロであることを確認してフトンに潜り込んだ。深海で巨大ダコを相手にモリ一本で勇敢に戦える夢が見れたらええなと思った。
2006.02.28
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青姦の 始終を見届く 冬鴎 <自評> 極寒の粉雪舞う日本海で急にもよおしてしまった二人。海岸に裏返された漁船の陰で着衣のまま立ちバックで励んでいる姿は、おそらくサーモグラフで見ると一カ所だけが真っ赤っかになっていることでありましょう。薄いピンクのセーターを捲り上げて乳を鷲掴みにしたい男に女は必死で抵抗します。寒いから。ただでさえ白いケツはすでに丸出しになっておるのです。男がフィニッシュだけでもなんとかナマ乳を揉みながらとの思いから、無理にセーターの裾を捲り上げますが、いかんせんその下には甲殻のようなベージュ色のババシャツが張り付いておるのです。男はイライラしながらも我慢できずに発射。女性の重装備を甘く見てはいけません。その一部始終を見ていた冬鴎は一連の地味すぎる攻防にアホらしくなって、男の頭上にフンをひっかけて飛んで行きました。
2006.02.15
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冬の夜。アホ猫があくびして、オレがあくびする。なんでオンドレみたいなケダモノのあくびを人間様のオレが伝染されなアカンのじゃドアホ。なぁアホ猫よ、雑種まるだしのオマエと雑種まるだしのオレのつきあいはもう十年ぐらいやろか。頼むからええかげんオレが観てるテレビの前に立ち塞がるんはやめてくれへんやろか?オマエが耐震偽装の話聞いてもしゃあないやろ?まぁオレも聞いてもしゃあないけど。そやけどオレは少なくとも霊長類ヒト科やからオマエよりはオレのほうが耐震偽装のニュースを視聴する権利があるハズや。そやろ。オマエもぼちぼちオッサンやな。それにしてもオマエはオレのいろんな事を知りすぎとる。オレが死ぬ時は押し入れの電動コケシや変態ビデオと一緒にオマエも処分せなアカン。それほどにオマエはオレのいろんな事を知りすぎとる。前妻との無理な体位でオレのヒザがいかれた夜も、オレが前妻にドツかれとるとこも見とる。質の悪いエロDVDが後半カクカクとコマ送りにしかならへんのに必死でオナニーしてるところも、バレた人妻の旦那が怒鳴り込んで来て、オレはビビりまくって腹に雑誌を挿んでドアチェーン越しに虚勢を張って撃退した時も、オマエはオレを見てた。離婚後初めての彼女が処女で、オレのほうがガチガチに緊張しながらチンポが立たんかった時も、オレが夜中に机で頬杖をついて一人小声で「よし」と転職の決断をした時もオマエは傍でオレを見てた。なぁアホ猫よ。オレ、どうなん?イケてんのかな。もひとつか?とフトンの中で頭を撫でながら聞いたが、アホ猫はすでに爆睡で「ニャム・・・グルル」と寝言を言ったあとフトンの中で「プシュン」と屁をこいた。まだまだオマエは屁ぇみたいな人間やと。そうですか。日々精進させてもらいますのでこれからもよろしく。
2006.02.15
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今日はキミを女性と見込んでひとつ聞きたいことあんねんけど。下ネタやけどかまへん?・・・じゃ、遠慮なく。あのな、女性を愛撫する時にな、そう、たとえば下腹部と両方の乳首を一度に責めるのって、あるやん?そうそう、あの感じな。で、まぁ、こう、するやん。女性の左側に横たわって、左手を下腹部やろ、右手を女性の後頭部から回して右乳首やろ、ほんで唇で左乳首やんか。あん時って「今日、オレの髪、ワックス臭くないかな?」って心配になるよな。まぁ、そんなことはどうでもええねんけど。それで。それでや。三点同時にサスサスコリコリレルレルしてたらな、なんか途中で『急に』女性の反応が良くなる瞬間があるやん?わかる?わからん?なんとなくわかる?あ、そうそう、なんかそんな感じの。あの「急なポイント」は何なんやろうと思もて。それまでは、甘~い空気が漂ってんねんけど、なんか急に「よっしゃ!頂上を目指すぞ!」っちゅう感じで、女性が絶頂へ向かい出すねん。それが、なんちゅうか、なだらかなカーブじゃないねん。途中までなだらかであるポイントで急にグッと矢印が右肩上がりで。あとは絶頂までずーっと背中が少し浮いてるっちゅうか、反り返ってるっちゅうか・・。そのブレイクポイントは一体何なん?こっちはわりとムラなく徐々に上げていってるつもりなんやけど。・・・うん・・・あ、それ誰かも言うてたわ。三点のリズムがうまいこと絡み合う感じ、ってことやろ?うん、それはわかんねん。でも、オレがイヤなのは、やってる当の本人はそのリズムを自らの意思では繰り出されへんっちゅうことやねん。そやろ?ナンギやろ?そやねん。だから、誰かにうまいこと説明してもろたら自分の意志でできるんちゃうかなと思もて。え?・・うん、そやな。結果的にはできてるんやからええねんけどな・・・いや、でも、なんか、自分の明確なコントロールでやりたいがな。なんか毎回たまたまできてて「むっちゃ良かった」って言われても、なんか、なぁ?・・・どこかオレ自身のスキルではないような・・なんかルービックキューブをガチャガチャやってたら六面そろってしまいました、みたいな。ほら、だって、ジャンケンを自由に出されへんかったらどう思う?イヤやろ?グー出したいのにパー。チョキ出したいのにグー。勝つ確率は一緒やねんで。でも、なんか、イヤやろ?そういうこっちゃ。フー・・・・・・・。やっぱ愛情・・なんかなぁ・・・。・・・・おい!コラ!オマエなに笑ろとんねん!
2006.02.14
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バレンタインデーの罠に毎年ハマっている。この時期になるといつもより余計に「チョコが食いたく」なるのだ!ただでさえチョコ好きなオレであるが、とくにこの時期は街へ出ればこれでもか!というぐらいに美味そうな写真を使ったポスターがあちこちに貼られ、デパ地下では普段は棚の奥のほうで偉そうにしとる銘品たちが割安価格でこちらを見ている!それはまるで淫乱肉奴隷がバックの体勢で自分の両手で肛門まで拡げて「早くちょうだい!」と誘っているような状況で、「い・・いや・・僕は・・そんなつもりじゃなくてですね・・」などと足早に通り過ぎることができるほどオレは禁欲主義ではないのである。 オレは、冷蔵庫にチョコが無いと不安になるし、「チャーリーとチョコレート工場」は映画館で4回観た。かつてのチョコエッグなどは景品を捨ててチョコだけ食った男である。しかし、バレンタインデーとは、女性が男性にチョコレートをあげるイベントであると同時に、『男が一人でチョコを買う自由を奪われる日』でもある。これはナンギなことである。この自由経済において約2~3週間のあいだ「チョコを買う自由」を剥奪された男たち。ある種のラマダンである。自意識過剰なことは百も承知である。誰もオッサンがバレンタインデー付近に一人でチョコを買うことなど気にも留めないはずである。しかし大の大人がバレンタイン商戦真っ最中のデパートのチョコ売り場で女性の人波に揉まれてガサゴソとお目当てのチョコを物色する姿はハタから見れたもんではないのである。クリスマスの夜に平気な顔で風俗に行くのと同様「これだけはアカン」という人間の尊厳にかかわる境界線である。チロルチョコひとつコンビニで買うにも余計なジュースなどと一緒くたにレジに行く。なぜ普段なら普通に買えるものに、こんなエロ本を買うようなうしろめたさを感じなければいけないのか。自分の器の小ささに憤るオレ。 気持ちを抑えれば抑えるほど余計に欲しくなるのが人間である。しかもこの時期、とびきり美味そうなチョコが山盛りである。この時だけは自分でもちょっとした中毒ではないかと思う。オレの大好きな象のマークのビターチョコのドデカいサイズがワゴンで売られている!食いたい!カブりつきたい!いやしかし今はバレンタイン商戦の真っ最中であり、明日以降は一回限りのセフレのようなよそよそしさを伴って、奴らは棚から消えるのである。あ、そんなことありましたっけね?みたいな。 テーブルの上をきちんと片付けて、コーヒーをいれ、半分ぐらい飲んだところで、チョコの包装を剥ぐ瞬間はオレにとって至福の時間である。とにかくなにか手段を講じなければ。オレはチョコを食いたいピークを2月14日に来ることを絶対に避けるため、仲の良い友達にバレンタインの先行受付を開始した。先払いである。ホワイトデーは倍返しにしたるから、チョコを先にくれ。これではまるで高利貸しではないか。 「もしもし。チョコレートくれ。」「・・・なんじゃそりゃ」「くれるやろ?」「う・・うん。まぁ。でも男から言わんやろ」「言うねん。そこは。緊急事態やから。そこは言うねん」「ほぅ・・」「あのオレが好きなチョコあるやん」「知ってるよ・・でも今年は気合い入れて手作りもええかなぁ。と」「う・・・うん・・手作りもええ・・ねんけど」「象のがええのんか?」「いや・・手作りていつできるんや?」「アホか!あんた。14日でええやんか。明日忙しいん?」「いや・・わからんけど・・今日くれ」「無理やて。ほんなら象のでもええよ。せっかく手作りのあげる言うてんのにぃ」「いや、だからそれはそれとしてやね」・・・と主婦のAちゃんを誘い出し成城石井スーパーへ。「象のヤツの一番真っ黒なヤツな。三箱ほど買うてきてくれ。頼んだぞ」「しゃあないなぁ。ほんで、お金は?」「え?これバレンタインちゃうんかいな?」「何回言わせんねん!今年は手作りチョコなんや!」「あ・・ああ。そか。ほなこれは?」「え・・・ただのお使いやろ」オレは釈然とせぬ気持ちのまま、三千円を渡した。女子更衣室にカメラを持たせて潜入させるAVの手配師のような、また面が割れて直接交渉できない麻薬の密売人のように、オレは夕方の地下街の人混みに身を紛らせて待った。
2006.02.13
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おぎー兄さんとこに何年か前にオレと遊んだ日の日記が再放送されとった。>http://plaza.rakuten.co.jp/ogieno/diary/200204220000/昨日の日記にもご丁寧なコメントをいただいた。ということでご返杯。探したらテキスト残ってたわ。2002年て。古い!でも懐かしい話や。■神無き国の二人 -tribute to Ogeeeno!-■ バラバラと雨が降る中を地域にかかわらず手ブラにノーパンで歩くオレは、待ち時間まで六本木交差点の近くのマリファナグッズのショップで水パイプなんぞを買うともなしに眺めながら五分ほど雨宿りをした。来た。絶対あいつや。交差点で白のビニ傘をさし、待ち合わせに急ぐ男を発見し、兄さんに電話をかけた。「もしもし」「おいっす。兄さん白のビニ傘さしてるやろ」「どこどこ?」「左向いてみ」と中学生のような出会い方やが二人とも三十代の立派な社会人や。東京といえば六本木でっせ奥さん。夜の六本木といえば芸能人や業界人、最近では大阪阿倍野区出身の殺人犯なんかがウヨウヨと蠢いとることで有名や。バーの片隅で田舎モンの小娘をコーナーに追い詰め「恋について僕が話そう」などとヌカしとる秋元康を撲殺するために後ポケットにしのばせた伸縮式警棒は結局使わずじまいやった。実際の六本木はとにかく外人が多い。大阪でも生野区なんかは外人ばっかりやが、白人はおらん。大阪におる白人といえばメットにチャリンコで走り回っとるモルモン教の宣教師ぐらいや。兄さんに「あれが東京タワー」「ここがアマンド」などとマヌケな観光案内をされながら雨の六本木をトボトボ歩いて、一本裏に入ったこれまたインド人が注文を聞きに来るメシ屋に入った。イカスミのおじやなんかを食いながら、ポールウェラーやクラッシュの話をした。兄さんはただの肉食系アジア人好きのオヤジではなかった。アジアの文化に色濃く影響を受けておられる兄さんにとっては、恋愛対象の形成要素として「アジア諸国と我が日本との文化の差異そのもの」を必要とされている。それは文化なき日本の渇望が生み出したひとつの点景でもある。神無き国の兄さんは、この後さらに神無き国を体現するスポットにオレを案内してくれた。 在りし日のディスコを改装して作られたストリップバーの入口で神無き国の二人は入場料二千円を払った。入口には二米ぐらいある岩の塊のごとき黒人のセキュリティがニラミをきかしとる。「なに見とんねん!」と思もたが、ココは敗戦国ニッポンでオレらは神無き国の二人や。天井が低く元ディスコまるだしの店内は薄暗いような眩しいような調光で、オレらは後ろのほうのテーブルについた。ステージでは、ちょっと古めのブリトニースピアーズの曲に合わせて、絵に描いたような白人の姉ちゃんがバツンバツンの巨乳と巨尻をクネらせとる。 夜の六本木に長けとる兄さんも「ココいいね」と気に入った様子で、オレもなんかわからんがとりあえずハッピーな空間やんけと一杯千五百円也のジンジャーエールを飲んだ。兄さんのすぐ後ろで乳を放り出して踊る白人女は不思議とリアリティがなく、オレは明確な違和感とともに目の前でボヨボヨ揺れる乳を見とった。ダンサーの一人一曲の持ち時間が終わるたび「ハクシュシテクダサーイ」とのたまうなげやりな黒人MCはたいしたことない選曲のDJも兼ねとる。しばらく店内の様子をぼんやり眺めながらオレは違和感の原因のヒントを探したが、目の前のテーブルで見知らぬハゲのオッサンが女の脱いだパンツを頭からカブり、諸手を挙げてハシャぐ光景を見たらもうどうでもよくなった。 目の前ではTバックから半分何かが見えとる白人がこっちを見ながらグリングリンとケツを振っとる。アホや。ははは。ホンマどうでもようなってきたわ。「兄さん見て見て!後ろ!ケツケツ!」「うわ乳デカ!」「ホラホラ!兄さん!」とにわかにハシャギ出したオレに神無き国の兄さんはちょっと恥ずかしそうにしとった。店内は見れば見るほどリアリティのないエロ空間やった。カラカラに乾いとる。 席についたオーストラリア人の女はオレを七千円の個室プライベートダンスに誘った。「時間ないねん」「すぐすぐ五分で終わるよ」「五分で七千円かい!」というツッコミは瞬時に英訳できず不発やった。「金ないねん」「お金ないの?」「銀行にはあるで。ヒトの金やけど」と横山たかしひろしのネタも高卒の頭で必死で英訳したが無理やった。横山たかしひろしのお坊っちゃまネタも知らんような女とは話はでけん。兄さんはどこからかノートを取り出しスロバキア人のジプシー出身の女と筆談しとった。さすがや。さっきパンツを頭からカブっとったハゲオヤジは別の女のパンツのヒモの部分にケチなチップを挟んでご満悦や。このオッサンにも息子か娘がおるんやろか。会社では課長やら部長やら呼ばれとるんやろか。 なにからなにまでアホらしい。リアリティのかけらもない。敗戦国の縮図のような店を出て神無き国の二人はトボトボ歩いた。「またあの店行こや」と六本木の駅でオレらは別れた。
2006.02.13
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前回の日記で「ケータイで社長に平謝りするご主人様を、目撃してしまうマゾ奴隷」を書いた。マヌケで切ない。オレはSMにまつわるこの「マヌケで切ない」部分が大好きである。SMはマヌケで切ない。ひいては人間もマヌケで切ない。だからこそオモシロイのである。もちろん普通のセックスにも無数のマヌケはついてまわる。だからこそ下ネタはオモシロイのである。マヌケのない下ネタは下品の一言に尽きる。 この日記に寄せられたコメントで「彼氏なら○○○、しかしご主人様となると○○○」といったものが複数回答あった。なるほどと思った。彼氏(または旦那)とご主人様はどこかで区別されているのだ。あたりまえと言えばあたりまえであるが。上記のシチュエーションに遭遇した時、ラブラブの彼氏なら慰めてあげられるが、ご主人様となると・・・うーん、ということ。これは本当に興味深い意見である。 考えれば考えるほど、ご主人様というのは本当に大変な立場なのだということがよく分かる。とてもやないがオレにはできん。ひょっとしたら奴隷の前で屁もこけないかもしれない。タンスの角で足の小指をぶつけてものたうち回ることすら許されないかも知れない。鼻クソがそよいでいても注意されないかも知れない。靴の裏についたガムを「ハラたつわー」と木の枝で必死に剥がす姿も、奴隷は笑ってくれないかもしれない。雪道で滑って転んだとしても、奴隷がそれについては一言も触れずに、そのまま笑いもなくやり過ごされるかもしれない。こんな辛い人生があるだろうか。自虐ネタで笑いに転換される機会をことごとくスルーされる。羞恥プレーである。ご主人様はいつでも凛として堂々とした態度でいて欲しいという奴隷の幻想をすべて飲み込み、奴隷のイメージの範疇に行動を制限されるとしたら、これではまるで「奴隷の奴隷」である。「ド奴隷」である。ドドレイ。 しかし、ご主人様は別にボランティアで奴隷を調教しているケではないやろから、なんらかのメリットがあるハズやがそれは一体何なのか。たとえ不倫でも何でも彼氏として付き合ったほうが、マヌケなところも弱い部分もお互い共有したうえで、柔和な主従関係を築くことだってできる。ご主人様として振舞いたいだけだとすれば、普通の彼氏に比べてあまりにも制限事項が多すぎやしないか。なにからなにまで面倒くさそうである。日本に名だたる奴隷調教師ならいざ知らず、そこらへんの自称S紳士たちは、彼氏またはセフレではなく「ご主人様」という立場を取ることによってどんなメリットがもたらされるのだろうか。彼氏であれ旦那であれ、縛りも浣腸もアナル調教もできるのである。現にオレなんぞはセックスの最中は噛んだり抓ったり引っ掻いたり叩いたり拘束したりするが、普段は10コ以上も年の離れた小娘に「あんた、何やってんの、もう!」とケツを叩かれたりする時もあるのである。「うわ。鼻クソ付いてる。サイテー。取ったろ。」とか。少なくともオレはそのほうがマヌケで楽しいし、幸せな時間を共有できると思もとる。 オレがいわゆる世に言うサディストとウマが合わんのはそのヘンやろな。肩凝ってしゃあない。奴隷の幻想の中でのみ生き続ける哀れなご主人様を癒してあげられる女神様はどこかにいるのだろうか。ご主人様が奴隷に会う前日にカバンにガサゴソと必要な縄やらムチやらを詰め込む姿、バイブの電池を入れ替える姿、はたまたその電池をダイソーでまとめ買いしたりしてしまう姿、奴隷を「出会い系サイト」で調達してしまう安易さ、など、やはりどう考えてもマヌケで、だからこそ愛すべき人間の姿なのだと思うのだが。ま、でもよう考えたらそこまで漫画的に「カッコイイS紳士」を体現しとる男もそないおらんやけどなー。みんな「そこそこ」で仲良うやってるんやろと思う。何もオレがあれこれ邪推することもあらへんが、ここまで書いたしせっかくやから載せてみよ。この件に関してはこれからまわりの「自称Sたち」にインタビューして回ることに決めた。 少なくともオレにとっては、人間誰にでもあるマヌケな部分を笑って共有してもらえずに、シリアスな大根芝居を続けなければならないとしたら、人生は本当に暗くて長いトンネルのようなものであると思う。笑え。ということで、誰か「ご主人様」だけが得られて「彼氏」や「旦那」は得ることのできないメリットを教えてください。「これは!」と思うご回答には、ささやかながらプレゼントをご用意させて頂きます。大人のオモチャから極上のおすすめケーキまで。
2006.02.12
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ケータイで 平謝りの ご主人様 プレイ中に、何度もしつこく鳴る携帯。やむを得ず舌打ちしながらも奴隷にダンディな声で「そこでおとなしく待ってろ」と電話に出るS紳士。思えばそれがマゾ奴隷が見た最後の勇姿であった。普段かかってくるハズもない、本社の社長からの直電は電話越しに奴隷にも聞こえてしまうほどの怒号の嵐。ラブホの部屋のど真ん中で全裸のまま天を仰いで棒立ちのご主人様は「あ、あ、ハイ・・いえ・、あ、ハイ」と消え入りそうな声で返事をするのがやっとである。部下がトラブルでも起こしたのだろうか。奴隷の調教をする前に、できの悪い部下の教育をするべきであった。目を閉じて両目のあいだを指でつまんだままただただ携帯片手に叱責の嵐の過ぎるのを待つご主人様の唇は微かに震えていた。これではただの全裸の営業マンである。ベッドの上のマゾ奴隷は事態をうまく飲み込めず、心配そうに見つめている。目の前には社長に平謝りのしどろもどろなご主人様がいる。この男は大丈夫だろうか。しかし愛するご主人様が全裸で棒立ちでは風邪をひいてしまう。首輪をつけられ、太ももに口紅で「私はチンポ大好きの淫乱マゾ女です」と、ワリに長い落書きをされていることも忘れ、ラブホのピンクのバスタオルをそっとご主人様の両肩にかける心優しき奴隷。奇しくもその姿は、モハメド・アリの引退試合と同じ姿であった。ご主人様とて人間。社長にキレられてSMどころじゃなくなることもあろうかというものです。あ、今回の季語忘れてるやんけ。ただの狂歌や。
2006.02.11
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一人でお初天神の夕霧そばにて夕食。ここの蕎麦はウマい。蕎麦を待つあいだに板わさをつまむ。夕霧そばを出てお初天神を通り抜けようとすると偶然Sさんに会った。Sさんはオレが以前勤めていたアダルトグッズの会社で商品の開発なんかをしていた生粋の技術者である。モーターとか電池ボックスとかギアとか配線とかが無条件に好き。肝心の女は好きなのかどうか最後まで分からずじまいであったが、女とバイブとどちらが好きかと問えば、あっさりバイブと答えてしまいそうな人である。まるで少年がラジコンを喜んで作るようにバイブのモーターをあれこれ入れ替えたりしては「うーん・・熱問題が残る・・」などと学者のような顔つきでコード剥き出しの試作バイブをしげしげと見つめていた。昔、この日記に書いたバイブ人体実験の主人公でもある。オレは職人肌のSさんが好きだったが、仕事を辞めてからは会うのは初めてであった。しかも偶然お初天神の境内で。オレらは境内のベンチに腰掛け、缶コーヒーを飲みながらしばらく昔話や近況報告をした後、Sさんが思い出したようにオレに言うた。「昔な、春駒くんがよう言うてたネット対応のバイブの話あったやろ?」「ああ・・USBバイブですよね」「あれ、今アメリカでホンマに開発されてるんやな」「・・でしょ。僕もかなり前にネットニュースで見ました。やられましたよねぇ」「ははは。あれ実際にウチらが動いてたらひょっとしたら・・なぁ」「いやそらもう、今ごろ僕らエログッズの勝ち組やったんちゃいますかね。Sさんも六本木ヒルズでバイブ作ってたかも分かりませんねぇ」と笑いながら空き缶をゴミ箱に投げたら見事に外れた。カラコロン。人生はタイミング。次行こ、次。何年か前、会社で一時期オレが「ネット対応のバイブを作りましょう!」と息巻いていたことがあった。復活前のこの日記にも書いたような気がする。パソコンのマウスのようにUSB接続で動くもので、普通のバイブのコントロールすべて、つまりオンオフ・モーターの強弱・回転方向などを、インターネット経由で遠隔操作できる。最愛の二人がたとえブラジルとアラスカに分かれて住んでいても、この地球上にいる限り、彼のマウス操作で彼女は快楽へと導かれるのだ。別にホモカップルでもええけどな。純粋な二人の幸せをサポートするも良し、エロチャットの経営者が導入するも良し、でオレは絶対に売れると断言したが、当時の社長以下メンバーがあまりにインターネット自体への理解がなく、壮大なロマンがいまいち伝わらぬまま有耶無耶に流れてしまったのだ。唯一Sさんだけは分からんなりにも「オモロそうやな」と静かに応援してくれてたんやけどな。その後しばらくしてからHot WiredのITニュースかなんかでアメリカで同じようなアイデアを実現化しているメーカーの記事を読んだ。まぁ今から思えば遅かれ早かれ誰もが考えつくアイデアではあったかもしれん。今なら当時と比べもんにならんぐらいにネット環境も整備されとるので、もっとオモロイこともできそうや。たとえば『USB対応エロ・グローブ』。二つでワンセットのグローブ(手袋)をカップルで一つずつ持つ。PCに接続したグローブにはセンサーが付いていて指のどの部分が動いたか分かる。彼が動かす指の動きは、そのままネットを通じて彼女の持つグローブに伝わる。受け身側の彼女は、椅子に座って股間にグローブをあてがう。彼は言葉を交わさずともWebカメラで表情を確認しながら、彼女を優しく丹念に愛撫することが可能になるのである。これで、従来のようにせわしないだけで実のない文字によるエロチャットは不要。愛する二人はもちろん、エロチャットやオンラインゲームなど様々な活用シーンを提供することができ、お茶の間留学ならぬ、お茶の間風俗の台頭も容易に予測することができるのです。昨今では猫も杓子もあたりまえのように不倫に興じておるが、夜中に主人の寝ている隣の部屋のPCの前で、不倫相手が知り尽くした肉ひだのポイントを丁寧に指で摩り摩りしてもらうこともできるのである。リアルタイムで。奥様はモニターに彼のセクシーな顔を思い浮かべながら、そ知らぬ顔でYahoo!ニュースでも眺めていればいいのです。もちろんあとで彼のもスリスリしてあげましょう。男性用にはグローブにオナカップを装着できるオプションも可能。さて、エロいブログを「エログ」と呼ぶことから、この商品は『エグローブ』と呼んでみる。エローブではないところがミソ。エローブよりはエグローブのほうがヒビキがエロイ。アダルトグッズのネーミングは「ダサいほうがよく売れる」。これは間違いない。普通のセンスから二ランクぐらい下げて丁度ええ。たとえばこの商品なら他には「指キタス」とか。ちょいサブぐらいが丁度エエのである。もし実現化したい人がおったら、ちゃんと企画書書くで。A4で6ページ。二十万円也。以下、目次。■企画概要~遠距離の愛を育むラブ・ガジェット~■USB対応エロ・グローブ『エグローブ』の詳細■ソフトウェア開発/舞台照明も動かせるプログラムの利用■販売ルートについて・・・アダルトショップ以外も販路に■広告チャンネルの選別/小売に頼らない/大口購入先のご提案■さまざまな活用シーンもしパクって成功したヤツは、ヒロタのシュークリームでも持ってお礼を言いに来なさい。そういや『エグローブ』は誰はばかることなく一般の量販店で販売する方法もあるな。それは秘密や。
2006.02.10
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忙殺。ボウサツ。いそがしごろし。この約二週間のあいだにオレが見た数々の断片。70円の自販機。刺青の主婦。白昼の自慰。土下座で謝るオヤジ。トンネルのオレンジの照明。安めぐみ似のホスト。早送りのビデオ。カサカサのゾウガメ。フランネルのパジャマ。京都タワー。「くれぐれもよろしく」と何度もいう岡田代表似の男。ギリギリの銀行ATM。潮吹き。雪に埋もれそうなバス停。旧式エレベーター。幸せの木。チャーリーとチョコレート工場。奥様の白い巨尻。貝とアスパラガスのオードブル。アホヅラを並べ立てた会議。パンスト破り。実直な男。愚直な女。東鳩オールレーズン。氷の自動販売機。体温計。メールの着信ランプ。知らない町の初めて見るスーパー。クリトリスの肉芽。Pinky & Dianneのダサい化粧道具バッグ。冬枯れの万博記念公園。巨大メロンパン。取れそうなブラウスのボタン。ほどけそうな靴ヒモ。味噌煮込みうどん。書き損じた請求書。銀行の監視カメラ。山盛りの灰皿。携帯の電池残量。安宿の天井。駐車場のアスファルト。フェンスに止まるスズメ。一人で寺に佇む女。消毒済みのトイレ。首輪と赤い縄。南京町の肉まん。昆虫標本。爪痕。アホ猫の寝顔。腫れ上がった尻。ホテルの領収書。深夜の自動販売機。点滅信号。嗚呼、目隠しが欲しい。
2006.02.09
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「オッサンこれ替えてくれや」のテーマ作詞/春駒 作曲/久石譲 編曲/ポール・モーリアなーオッサン。これ替えてくれやー。なー、オッサンてー。ちょっと間違ごうただけやんけー。これホットに替えてくれやー。メールしながら席についてオッサンに注文した時に、何か知らんけど「アイスコーヒー」て言うてしもたんや。こんな寒い日に誰がアイス頼むねんなー。考えたらわかるがなー、オッサン。なー、オッサンてー。普段やったらこんな間違いせえへんでー。さっきは可愛いあのコから初めて写メが届いた瞬間やったんや。そやからぼーっとして何か知らんけど「アイス」て言うてしもたんや。しばらく眺めて、オレも自分でハっと気付いたがな。ほんでカウンターのほう見たら、オッサン早速アイスを盆に乗せて運んでくるのが見えたんや。何もそない早よ作らんでもええがなー。なー、オッサンてー。これ替えてくれやー。ホットに替えてくれやー。
2006.01.30
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たまたま株をやってるMから電話がかかってきたので、今回の騒動について聞いてみた。やはりMはライブドア株など所有してへんかった。やっぱり。博徒は素人相手の賭け麻雀はせんのである。真のパチプロはたとえ店がゴト師と結託して店ぐるみの不正を働いてたとしても、店にいちいち文句は言わない。たまたま自分が下品なエサ場を漁ってしまっただけだと。相場師も同じではないかと思う。株で損した、というのは本来自分のスキルのなさを恥じるものであって、間違ってもテレビカメラを前に「私は騙された」などとアホ面ひっさげてのたまうものではないのである。これもひとえに堀江が素人のデイトレーダーを啓蒙してきた結果のマヌケな事態であろう。 遊び方が汚い、という言い方がある。西成区なんぞの賭博ホテルでは、一般のサラリーマンでも遊べるようになっているのだが、「イカサマや!金返せ!」とさんざん悪態をついてジタバタと往生際の悪いのは、ヤクザではなくむしろ一般の客だという。 博打にはいつもそれなりの美学が必要なのである。哲学のない博徒はすぐ身を滅ぼす。哲学や美学というのは言い換えれば一種の意思決定基準である。キレイに遊べるかどうか。それは博打だけでなく恋愛に関しても同じことが言える。 十代の頃、友達Kの親父に賭場に連れて行ってもらったことがある。オレは途中で熱くなって鼻クソみたいな小銭で遊ばせてもろとる恩も忘れ、負けを取り返すのに必死になった。Kの親父は笑いながら「キミ、財布の中にナンボ入っとるんや?」とオレに聞いた。「八千円ぐらいスかね・・」と答えると「ほんなら四千円以上は何があっても突っ込んだらイカンな」と優しい顔で言うた。人は財布の中身が空っぽになると冷静な判断ができない。ギリギリで場に臨むと余計にドツボにハマるのが今も昔も世の常やと。財布の半分を上限と決めたオレは不思議と落ち着いて、最終的にはトントンまで盛り返すことができた。オレはその時の不思議な心の動きを今でも覚えている。あとから思えばKの親父さんがイカサマでうまくコントロールしてくれたのかもしれない。 博打に手ぇ出したことのない素人が、最近の株ブームで博打の面白さを知ってしまった。ライブドアなどに騙されたのなんのとわめく素人デイトレーダーは、たとえるなら、三十路越えてから若いセックスの魅力に取り憑かれた強欲主婦の泥沼不倫に近いものがあるような気がする。泣く前に己のスキルを恥じるべきではないか。美学なき博徒は身を滅ぼす。
2006.01.29
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中年の 自慰を見つめる コタツ猫 バツイチで自由を謳歌しているこの男にも寂しい夜はある。前の職場からカッパラってきたオナホールにローションをたっぷり注ぎ込んで、お気に入りエロDVDのリモコン操作に大わらわである。片手にリモコン、片手にオナホール。これではまるで沢田研二の「サムライ」ではないか。大の男がオナホールにチンポを突っ込んでヌチャヌチャと上下運動をしながら一人暮らしをええことに多少の声もかまわず最高のオーガズムを迎えようとした時、アホ猫が足元からオレを見上げる姿が見えた。アホ猫よ、すまん。
2006.01.28
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今日を平和を実感する「平和実感記念日」に制定する。オレが平和を実感したからや。世の中はいつ戦争が起きてもおかしないらしいが、とりあえず今日のところは御堂筋をキュルキュルと戦車が走り回る光景は見ぃひんかった。オレは明日のメシ代に困ることもなく、ちょっと調子こいたら上ロースに特上カルビも注文できるぐらいや。すごいやろ。世の中は平成不況の真只中らしいが、オレは明日にでも新しいシャツを買うことができる。すごいやろ。 この国の将来なんちゅうもんはヒマな政治家が国民の税金使こて一所懸命に考えたらええだけの話で、国民に政治への関心を持たせとるようでは到底ええ政治とはいえるハズもない。ええ政治とは国民に政治を感じさせへん政治や。ホンマに良質なサービスはサービスを受けとることすら客に感じさせへんもんや。それを国民一人一人が意識を高めてよりよい国づくりを、とは一体誰に向かって言うとるんじゃ。それはタクシーの運転手が客に道を聞くのとおんなじや。税金返せ。オレは払ろてへんけど。 とにかく今は平和や。誰がなんと言おうが平和なんや。通りを歩いてもキレイなお姉ちゃんは金のかかった服着て、高い化粧品を使こてエエ匂いをぷんぷんさせとる。「パンストやぶり放題」と叫ぶキャバクラにサラリーマンが団体割引で吸い込まれていきよる。世の奥様方は浮気相手のチンポに夢中で、安全な柵に囲まれた公園のジャングルジムのてっぺんで悲劇のヒロインを楽しむ。リスクなしの恋愛シミュレーションは、そこそこの汁男優によって泣いたり笑ろたり忙しいこっちゃ。そのおかげで旦那は旦那で若い娘のツやのある肌の張りを心ゆくまでむさぼるスキがあたえられる。 どんだけ考えても世の中はやっぱり平和や。道端で酔っ払いのサラリーマンが寝とった。オレはパチンコで二阡円負けた。アホのDはGカップのコロンビア人を口説いたと得意げにメールを入れてきよった。一時間待ちのカラオケボックスの前には学生があふれとる。ジジィはホステスと同伴出勤しとる。バーテンが口笛を吹きながらタバコを買いに出て来とる。カップル喫茶から出て来た二人と目が合う。「ごちそうさまでしたぁ」とのたまう若い女にご満悦のオヤジ。 ほら見てみぃ。なんぼ考えても世の中は平和やんけと思もた時、路地のゴミ箱の上でネコが顔をこすりながら「ぜんぶ絵空事でっせ」と通りすがりのオレに言うた。
2006.01.27
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Tから電話。来週の前半に初めての録音が行われることが告げられた。オレは得正でカレーうどんを食いながら「あ、ホンマ。了解」と平静を装いつつ電話を切ったが、正直ちょっと緊張していた。だいじょぶか。オレ。社長のところで求人募集した女性と指定日時に待ち合わせ、ホテルにてライターKの書いた淫語満載の官能小説を朗読しながらオナニーをさせる。こちら側の欲しいテンションというか空気感をうまく女性に手短にわかりやすく説明できるだろうか?せっかくギャラ払ろてオナってもらっているのに録音機材(とくにマイクとか)がトラブってしもたらどないしよ。 女性のオナニーというのはたいていの場合、男性の思い描いているものよりかなり「地味」である。両足をピンとまっすぐ伸ばしたまま目を閉じてクリトリスをコリコリコリと優しく擦るだけでイってしまったりするもんや。音声だけなのでビジュアル面はどうでもええが、小声であればあるほど録音時には余計な雑音が入ったりもするのである。Tは補助的にバイブも用意しといたほうがいいんじゃないですか、というが、バイブというのはビックリするほど音がデカいのである。 オレが一番心配しているのは、女性がオレの存在が気になってオナニーに集中できないのではないか、ということで、女性は声優でもAV女優でもなんでもなく、ただの素人である。スタッフはオレ一人とはいえ、たぶん人前でオナニーするのは初体験かも知れない。緊張するやろな。オレが逆の立場なら間違いなく緊張する。なるべく地味な格好で出かけよう。ヒゲはちゃんと剃って行こう。あまり喋りすぎないようにしよう。とりあえずネガティブな印象を与えないように気をつけよう。路傍の石になろう。屁をこきたくなっても我慢しよう。女性もおそらく初めてであろうが、こちらとてこんな奇妙な仕事は今までにやったことがないのである。せめてオレだけでも緊張を隠し通さなければならない。不安感を取り除かなければ行けない。女性には所要時間は1時間ぐらいと伝えてあるとのこと。30分で空気和ませて、あと30分で録音。どうなんやろ。オレは女性の没頭を妨げぬよう死角の背後にいるべきなのか、それとも正面で指一本触れぬ安全性をアピールし続けるべきなのか。許されるのならばマイクだけセットして風呂場にでも籠っておきたいぐらいである。でもスタッフの姿が見えへんのはそれはそれで不安感を与えてしまうのではないか。 しかし、女性が「もっと奥まで・・・」とか「ヌラヌラした太いチンポをちょうだい」などと淫猥な言葉を吐きながら自慰をするベッドの脇で、オレがヘッドフォンを装着し、レコーダーのレベルメーターを凝視する姿はなんとも珍妙な光景である。と思う。その構図に萌えてくれる女性ならええねんけどな。まぁとりあえず頑張ってみよう。やってみたらどないかなるやろ。帰りにミナミのビックカメラにて、録音機材を買い揃える。集音マイク×2、レコーダー×2、経費に紛れてALESSANDROの高級ヘッドフォン(33000円ナリ!)も購入。これぐらいは大目にみてくれよ、社長。
2006.01.27
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風邪おして マゾを縛りて 鼻すする<自評>風邪やと言うておるのに「じゃ今日はゆっくり休んでてください」と言わぬ奴隷。風邪ひいてる時の逢瀬ほど邪魔臭いものはない。ご主人様は仕方なく熱をおして奴隷の期待に添うべく、麻縄やら蝋燭やら手錠やらをガサゴソとバッグに詰め込み奴隷の元へ。しかも今日は前から約束していた野外調教である。よりによって。いつものご主人様モードでプレイは進むが、奴隷を縛り出すあたりからどうも鼻の調子が悪い。あきらかに熱もある。早く家に帰りたい。S紳士の鼻腔の中には尋常ではない鼻水が蓄積されておるのだ。ズルズルともの凄い音を立てて鼻水をアピールするご主人様のさらに倍ぐらいの声で「いやぁ。恥ずかしいですぅ。やめてください」とワガママ奴隷のリクエストはとどまるところを知らない。そこでご主人様は思うのだ。「オレのどこがサディストやねん」と。奴隷のワガママに翻弄されるご主人様の悲哀がうかがえる冬の句である。
2006.01.26
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今日は長いどー。アホに付き合える人だけ読んでください。西九条の駅を降りて駅前のドムドムに駆け込んでクラムチャウダーを啜る。この場所は絶滅寸前のドムドム・バーガーがあること一点にのみ価値がある駅前である。寒風吹き荒ぶ安治川沿いの堤防を歩くと川の水面を滑る横風が氷のように髪を凍てつかせ、オレは慌ててジャケットのポケットからニットキャップとヒョウ柄の耳あてを取り出し、すぐ際を走る大型トラックの埃に目を細めながらシミだらけの堤防のコンクリートを見て歩いた。気のキツい痩せたホステスのような川面の横風は途中で小雪と名前を変えて、オレが目的のトランクルームに着いた頃には対岸の堤防すらかすむほどの雪景色であった。大阪では珍しいので少し立ち止まり、このドス黒い工業地帯に降る雪を眺めた。オレはここに貸倉庫を偽名で借りとる。という事実はこの日記を読んでくれとる物好きなアンタとオレだけの秘密や。もしオレが死んだらこの倉庫に眠る数々の本・ビデオ・CD・服・レコード・大人のオモチャ・子供のオモチャ・他ガラクタは契約者不明の自然解約である期間を経てすべて処分される。誰かカネあったらここを「春駒博物館」として保存してくれへんかな。なかなかレアなお宝もあるねんで。今日は友達が買い取ってくれるというフランシス・レイや映画サントラ、その他フレンチ関連のアナログレコードを取り出しに来たオレは守衛のジジイに言うたびに笑いそうになる時代劇俳優のような偽名を告げてちゃちな鍵を貰い、部屋を開けた。まるで肉屋の冷蔵庫みたいに冷えきった庫内には川に面した明かり取りの小窓が高い位置にひとつあるだけで、正面には穴あき透け透けパンティを穿いた落書きだらけの等身大のガイコツ模型が二〇〇〇年と数字を形取ったアホなグラサンをかけて頭にはおもちゃの王冠を頂いたままサブそうに震えとる。これがこの部屋の守護神である。パンティに飽きたオレはそれを脱がせてガイコツにペニスバンドを装着し、さらに再び穴あきパンティを穿かせて男根を穴から出した。ははは。アホやがな。目的のレコードをガサガサと取り出しとるうちにガラクタの隙間から女モンのワンピースが出てきた。前妻が着ていた夏物の薄いワンピースである。離婚の準備をしてる時、オレに背中を向けたまま「捨てる」と書かれた段ボールにこのワンピースをヒステリックにガサっと突っ込んだのを見たオレが背後からビビりながら「・・それ、捨てんの?」と聞いた。「え?なんで?」と素っ頓狂な声で答える彼女にオレは「いや、それ、オレめっちゃ好きやねんけどなー」と言うと「だからや!」と怒られた。オレは彼女の目を盗んでそれを夜中にコソコソとゴミの中から懐中電灯で探し出し、くすねておいたものである。男はここまで哀れな行動に出てるもんかと情けなくなった思い出の逸品である。音楽の趣味は悪い女であった。酒に弱くカラオケ嫌いのオレを相手に、ベロ酔いのカラオケボックスでドリカムの「うれしい!たのしい!大好き!」をホステス仕込みの超ハイテンションで熱唱されて「なんじゃ!?この女」と困惑した初デートがまるでついこの間のような気がする。ヒールを脱ぎ散らかしてオレのヒザの上で体を丸めて眠る彼女にオレはどうしていいかわからず、しかもカラオケボックスのシステムが今イチ分からんかったので、どエライ延長料を徴収された。オレはその頃、カラオケボックスに「泊まり」があると思もとったのである。当時、新世界を散歩してたら道ばたでドリカムのCDアルバムが百円で売ってたので彼女に買ってプレゼントした。「なんやの?これ?」「ドリカムやんけ。中古やけど。あの歌も入ってんで」「中古はええけど・・・これフタあれへんやないの?なんかホコリだらけやし」「キズ多いけどちゃんと再生するで。チェックしたもん。曲名も裏に入ってるからちゃんと読めるやろ?」「・・・あんたみたいなアホな男、他におらんわ」。これがオレが今まで一番うれしかったホメ言葉である。オレは倉庫の中で、彼女のワンピースのシワを伸ばしハンガーで小窓にかけてみた。薄いグリーンの夏モンのワンピース越しに安治川の粉雪がチラついとる。ははは。アホみたいや。情けない話やがオレは胸がつまりそうになって、現在新しい旦那との間にできた子供も身籠っとる彼女にメールした。「ちわ。クソガキはもう先っぽぐらい出てきましたか?毎晩ちゃんと黒魔術でお祈りしたってるぞ。感謝せえ」。送信。三十五のオッサンは冷えきったトランクルームの中で背中を丸めて子供用のプラッチックの椅子に腰掛け、ヤフオクで必死のぱっちで落札したテントウ虫型のポータブル・レコードプレーヤーをガサガサと設置して、トム・ウェイツのアルバムをA面だけ聴きながら煙草を吸うた。耳の後ろあたりがジンと熱くなって、まぶたが腫れそうに重い。ピリリ。着信。オレはドキっとした。が、いつも散髪をしてくれとるRちゃんからの絵文字満開の難読メールであった。「らーめん劇場行きたいねん。今日は何してんすか?」。なんじゃそら。「へい。行きまひょか。七時になんばパークスで」。返信。今日はとても一人ではおられへんと思もた。守衛のジジイにレコード箱の宅急便を手続きし、オレは来た道を駅に向かって歩いた。小雪は降りやんで、また気のキツい痩せたホステスのような川面の横風がオレを吹き飛ばしそうになった。オレは堤防の途中に設置された作業員用のポカリの自動販売機横のゴミ箱に彼女のワンピースをHMVのビニール袋に煙草の吸い殻と一緒に入れて捨てた。彼女ほどではないにしろ、オレも少しは成長しとるのである。三十五にしては発達が遅れとるが。夕方の駅の雑踏の中、ピリリ。彼女から返信があった。「黒魔術て何よ?今日は寒いで。風邪ひきなや」。西九条の駅から新今宮までの間、シートにグッタリと座ってままオレの記憶はない。新今宮の駅のホームでキチガイのオッサンが「小泉のボケがぁ!」と何度も絶叫しとるのを聞いて我に返ったオレは、息をひとつ大きく吸い込んで、気絶したカエルが息を吹き返したように人波を泳いで難波に向かった。
2006.01.26
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俳人デビューすることに決めた。だから廃人じゃなくて。俳句を詠むというのは意外にカッコイイ。と、ついさっき思もた。オレもいつかは短冊と矢立てを携えて全国の諸行無常を詠んで巡りたいと思とる。では、第一弾。笊みかん しとね激しく 転げ落ち彼女とのセックスに励んでいるAくんは訛りのヌケない大学生。都会に出てきて覚えたてのセックスに、二人とも猿状態でヘッポコな律動を繰り返す冬の夜。炬燵の上には田舎の母から送られてきたミカンがザルに盛られております。若さゆえのストレートなセックスに息づかいも荒くなってきた時、コタツの上のミカンが振動でコロンとひとつ転げ落ちるのです。まるで若いセックスを嘲笑うかのように。一心不乱のAくんは気づきませんが、下になっている彼女は転げ落ちるミカンを横目でチラと見て「ああ、あたし何やってんだろ」と空虚な気持ちになり、また目を閉じる・・・そんな青春をヒリヒリと感じる句である。
2006.01.26
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T坊は十年ほど前から何故かオレのまわりにおる。大学進学とともに広島から大阪に出て来て、特に何をしてるというワケでもない。が、何故か食えてる。適度に顔が広い。でも何もしてない。何かに長けているワケでもない。かといって不幸そうでもない。彼女もおる。でも何もしてない。不思議や。いつも丸坊主でヘラヘラと生まれついての子分肌である。鈍感すぎて怖いもの知らず。驚くほど物を知らんが計算だけは早い。何年か前「オマエ大阪で何かしたいことあんの?」聞いた時は確かに「大阪なんかに住んでてもしゃあないッスよ。二十五までに東京行って一旗上げまっさ」とホザイとったハズやが、こないだ聞いたら「三十までには」に伸びとった。こういう輩の「一旗あげる」「ビッグになる」などの意味不明なフレーズは結局のところ「その時点で何もなりたいモノがない」超ニートな一人立ち先延ばしワードであることは間違いない。オレの予想ではT坊は三十歳ぐらいで「バーやりたいんすよ」と言い出すに違いない。 オレはそんなT坊の住む島之内のオカルティックなマンションに招待された。正直このマンションには何度か行ったことがあるが、わりとコンスタントに不気味な目に会うとる。オレは今年三十五のオッサンで霊感などとは無縁の人生を過ごして来たが、この場を借りて正直に白状するとオレは「ごっつ怖がり」である。遊園地のお化け屋敷に入るだけでもかなりジタバタと抵抗するタイプである。なんやったらキレてその日のデートがおジャンになってでもなるべくならお化け屋敷には入りたくないタイプである。千日前から堺筋の東側の橋のたもとにその化物屋敷はあった。一階の郵便受けにはDMやピンクチラシが散乱し表札は一軒も入ってない。エレベータには異臭がたちこめ昇降が人力なみに遅く、床には靴の先で触れるだけで崩れるほど錆び付いた空き缶が転がっている。エレベータのトビラ越しに各階が見えるが廊下の電灯が切れかかっている階や完全に真っ暗の階がある。とにかく人の生活する気配がない。かなり古い八階建てでT坊の住む部屋は家賃が1DKで五万五千円である。ミナミの中心地まで歩いて行けるこの場所でこの家賃は奇妙に安い。霊感ゼロのオレでもこのマンションが何らかのいわく付きであることは背中のあたりにゾクゾクと伝わってくるのである。 先に結論から言ってしまうとこの八階建ての細長いマンションには二十数部屋あるがそのほとんどが一軒の人妻専門マンションヘルスと化してるのである。いわゆる無店舗風俗。 マンション最上階で受付を済ませた客は指定された部屋に入って一人で待つ。そこに熟女が客指定のコスプレ姿で現れるというシステムである。この店は本来ならこのマンションの部屋をすべて借りあげて営業したかったハズであるが、不動産屋とのトラブルで三軒だけがプレイルームにできず一般住民に賃貸するハメになったとのこと。それゆえ一階には看板もなにもなく最上階に着くまではマンヘルのマの字も感じさせないただの廃マンションである。 そんな「誰が住むねん!」なマンションにはT坊以外に台湾人ホステスが母親と住んでおり、同じ階の残る一部屋はここ二年ほど空き部屋であるらしい。オレがこのマンションを訪れるのは三度目であるが、一度目はT坊の指示ミスでドアを空けると知らんオッサンがネクタイをゆるめて待機しており、二度目は薄暗い廊下で隣の部屋がガチャリと開いてセーラー服姿の四十代のオバハンが物凄い形相で非常階段を駆け上がっていった。この場を借りて正直に白状するとこの時オレはズボンの中で二三滴ションベンをちびった。考えてもみてほしい。廃虚と化したマンションの薄暗い廊下をほぼ一日中セーラー服やチャイナドレスのコスプレのオバハンらがあの部屋この部屋と駆け回っているのである。エレベータで客と会うのを避けるのに非常階段を使うためカツカツカツカツと鈍く響く足音。オレはエレベータの床だけを見つめT坊の階に着いたところで「○階についたら電話ください」という事前の不可解なメールの意味が分かった。消えとるがな!電気!オレは暗闇に浮かぶ廊下奥の緑色の非常灯を見つめ、エレベータの「開」ボタンを必死で押したままT坊に電話した。「ちょー。電気消えてるやん」「あ、着きました?」という声とともにT坊の部屋のドアの辺りに灯りがついた。近付いてみるとドアの上に無印のクリップライトが取り付けられてあった。「これ何やねん?」「いいでしょ?セコムつけてるみたいでしょ?」「・・・」。T坊、一回だけ先輩のお願い聞いてくれ。すぐ引っ越せ。
2006.01.25
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フォトアルバムというものを使ってみた。最近写真をあまり撮っていないので少し古いものばかりやけども。デジカメで撮って、切ったり、貼ったり、汚したり。おヒマな人は左側メニューよりご覧ください。子供は見ないで早よ寝なさい。 春駒画はコチラ
2006.01.25
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どんな女性でも金さえあればついて来る---金でついて来る女としか付き合ったことのない人間の辛苦に満ちた論理である。彼の哀しさをここまで端的に表した言葉はないように思う。そう。確かに彼は「金でついて来ない女性」とは付き合えないのである。心底モテないのであろう。世間では、無一文で借金だらけでも、次から次へととびきりの女性のご寵愛を受ける貧乏男もいることを彼は知らない。 彼はおそらくオレが今までに見たこともないような「金のかかった」女性とセックスを経験していると思う。脱がすのにこっちが気を遣こてしゃあない下着や、関西では一匹も発見されないという「完璧な八頭身」や、角質などとは縁のない美脚、ロリコンアニメから飛び出したような「垂れてない」巨乳、NASAが開発した新素材かと見紛うほどの美肌、など、オレたちのような社会の底辺に棲むゲスな野郎には到底お目にかかることのできない、いわゆる「金のかかった」女相手に汗だくで腰をヘッコラヘッコラ動かしてきたことであろう。テレビで見る彼の指先を見る限りセックスは下手だと断言してもよい。しかし残念ながら、それらはすべて売春婦である。 なぜか。それは堀江自身が「どんな女性でも"金さえあれば"ついて来る」と条件付きで言い放っているからである。言い換えれば「無一文では口説けるかどうか自信がない」のである。金さえあればついてくる女。オレは売春婦以外に思いつかない。たとえ口説くのに十億かかろうが二十億かかろうが「それによって」落ちる女は売春婦である。かなりの「高級売春婦」ではあるが、売春婦であることには違いない。 一般に、金があってモテない男は、風俗に行って欲望を昇華するのです。中には金をちらつかせてうまく店外デートまで持ち込んで、あわよくばセックスできるかも知れません。そうやってモテないながらもつかの間の疑似恋愛を謳歌するのです。堀江はそういう輩となんら変わりない。違いは人並み外れて金持ちであるというところだけです。 金でついてくる女は、金にしかついてこない。まさか杜子春の話を知らん堀江ではあるまい。自分がいかに内面に磨きをかけたところで、彼女はとくにそこを評価してくれないとしたら、こんな悲しいことがあるだろうか。昔世話になった女は「女ちゅうもんは、いざ男がホンマのホンマに困った時、百万円ぐらいポンとキャッシュでいつでも用意できるぐらいやないとアカン」と言うた。カッコエエなと思もた。腹の据わったええ女とはこういうことである。 堀江はおそらく春の公園のベンチに座って缶コーヒー1本で女性を口説いたこともなければ、終電間近のカレー屋のカウンターで「お願いです。あなたとセックスしたいのですが」とカレーを食べながら横並びで口説いたりしたこともない。 マスコミはこれ以上彼を苛めないでいただきたい。金さえあれば口説ける、というのは「金が無ければ女も口説けないヘタレ男でございます」と生き恥を公言しとるようなもんや。「金さえあれば」とは男が決して口にしてはいけないNGワードの一つであると思う。彼がコンプレックス丸出しのダサ男くんであることは世の中のほぼ全員が分かっています。可哀想な男をこれ以上苛めるのは良心が咎めます。金があれば口説ける、と本気で思っているほど彼は矮小な男なのです。どうやらチンチンも小さそうです。想像ですが。こんなモテない男に、金ぐらい持たせてやってもいいじゃありませんか。こんな矮小な男がテレビに出て死に物狂いデカい口を叩く、のを我々はTVの前でただ笑っていればいいのです。
2006.01.24
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法善寺横丁で人妻Eちゃんと「夫婦善哉」を食べるオレは不倫か。Eちゃんは小学生の子供を持つママで、旦那の他にご主人様を持つという、これまたややこしいM女さんである。「オレは今日から人妻のことを『他人主婦』と言うことにしたんでよろしく」「やめてやー。ちゃんと人妻らしい格好してるやんか」と笑うEちゃんはスレンダーなクセに甘いモン好きで、時々連絡してきては「駒ちゃん、○○においしいスィーツの店できたん知ってる?」などとオレを誘い出す。ご主人様も旦那も(ややこしいな)酒飲みで、甘いもんは食べへんからとのことである。なんじゃそら。ともかくオレとEちゃんはセフレではなくスフレ(スィーツフレンド)なのである。Eちゃんのご主人様(要はただの浮気相手であるが)は他人から見ると挙動不審なことだらけで、冷静になればEちゃん以外にもM女を飼育しとることは明らかである。ご主人様なのに割り勘にされることもあるという。どんなご主人様やねん。しかし「精神的なつながりで結ばれてるっていうか・・・」とウットリご満悦のEちゃんに対して「オマエそれ完全に遊ばれとるぞ」とはなかなか言えんもんである。「精神的なつながり」という名の下に、カネもろくろく使わんわ、会いたい時だけ呼び出されるわ、スカート一枚買うてくれへんわ、では奴隷マル損、ご主人様マルもうけである。「精神的なつながり」のワリにはちゃっかりド変態な性行為もしとるワケであるが。一児のママであるEちゃんも、心のどこかでは大事にされてないのでは?ということに気づきつつも疑念にはフタをして、日々の情愛に溺れる毎日を選んでいるのである。女性は「ダメな私」が大好きである。ま、プロレスに観客が「八百長やろ!」と野次を飛ばすのは不粋きわまりない行為であろう。Eちゃんはいつもどこか自信がない。愛される価値がないと思っている。ご主人様にすればそれが好都合であろう。他の男と天秤にかけられないからである。こうしてまた一人「都合のいい女」が世の中にできてしまうのである。そしてオレはその都合のいい女に呼び出されて午後のおやつタイムを共にする「都合のいい男」になるのである。ご主人様のノロケも一通り尽きたところで、オレはぜんざいを啜りながら「まぁ、旦那もよそで女作っとるやろからお互いさまやんなー」と何気なくオレが言うと「・・・」とEちゃんの言葉が詰まった。しまった。不倫の女性にこの言葉はNGワードやった。不倫女性のファンタジーに水を差してはいけないのである。あくまでも旦那の浮気はダメで、自分だけ浮気をしてもいいのである。悪かった。この夫婦善哉はオレのおごりや。許せ。・・・コラ、割り勘のご主人様よ、なんでオマエが割り勘で、指一本触れてへんオレがおごらなアカンのじゃドアホ!
2006.01.21
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腹立つわー。腹立つ。ウチの近所にリストカットの女が住んどる。オレは心の中で黒ガッパと呼んどる。いつも地味目の黒いゴス服で、髪型は全盛期の小泉今日子ばりのオカッパ頭やからである。ハタチはとうに越えとるように見える。駅で会う。近所のミスドで会う。本屋で会う。ビデオ屋で会う。MIOで会う。近所の痩せ犬と同じぐらいの頻度で会う。こいつ無職か。とにかくこの黒ガッパは何かにつけてリストカットの傷口を袖口から晒しとるのである。これが腹立ってしゃあない。包帯かサポーターかなんか巻けや!オレは血とか生傷が嫌いなんや。病院の採血でも注射器から可能な限り顔をそむけるタイプである。ちょっと擦りむいただけでも、かなりあたふたと引き出しをひっくり返してオロナインを探す男である。前妻によく「ツバつけといたら治るがな」と言われた。生理の女は絶対にジーパンすら脱がせん男である。黒ガッパの世をスネた態度は自己顕示欲の塊で、その伏し目がちな早足が見る者をイラッとさせる。ゴミ捨ての曜日を間違えた若者に一言文句を言おうと足早に近寄るババアのような立ち居振る舞いである。自分の手首をカッサバくのは、どこまで行っても本人の勝手である。親はともかく他人がとやかく言うことではない。オレはそんなことはどっちゃでもええのである。しかし常軌を逸した生傷を公衆の面前にこれ見よがしに露出して歩く自由もこの国では認められとるんか?民主主義とはそういうことでっか?誰が悪いねん?小泉純一郎か?頼むからそのまま外を出歩くな。ちゃんと隠せ。オマエの精神的S.O.S.のシグナルは発信する相手を間違えとるぞ。オレのS.O.S.はオマエに届いてへんのか。リスカ傷を晒して歩くのは、中出しされた精子が太ももを伝ってスカートの下から垂れたまんまで電車乗るようなもんや。拭け拭け。ブサイクカップルの駅前キス同様、トドの交尾みたいな声張り上げとる路上ミュージシャン同様、人様の迷惑を考えろと言いたい。プロフでケツ出しとるオレが言うのも何やが、自由の拡大解釈もええかげんにしてもらいたいのである。この寒い季節こそ黒ガッパの自刃傷はセーターの袖からのぞく手首あたりで済んどるが、秋頃はずっと半袖やった。冬になってからもオレがミスドで機嫌よくコーヒーを飲んで朝メシを食うとると、黒ガッパがテーブルの対面に座って上着を脱いだら半袖のセーターや。長袖着ろや!長袖!隠せ隠せ!リスカ+暑がり+デリカシーゼロの女、は最悪やと思もた。それ以前に「半袖のセーター」て何やねん!とも思もた。リストカットとは言うものの黒ガッパの刃傷は一時、ほぼ等間隔に二の腕あたりまで達しとった。数字で目盛り書いたらちょっとした定規やんけ。何計るつもりや。テーブルの奥行きは計りやすそうやけども。とにかく、リスカのみなさんは傷をアカの他人に見せないようにしてください。血が嫌いな男がおるのです。生傷を怖がる中年男がおるのです。さっきも言ったように、リストカット自体はオレは理解できないので否定もしません。それが気持ちええのならせいぜい景気良くカッサバいて鮮血をほとばしらせてください。しかし深くエグリ込んだドス黒い生傷を人様に見せて、他人の快適な朝食空間のテンションを一気に下げるのはリストカットという性癖以前にデリカシーの問題でっせホンマ。前にリスカの女性に会ったことがある。彼女は一応包帯グルグル巻きで隠しとったが、それはそれでまたバレバレやった。何で話す機会があったんか。たしか何人かで飲んでオレと彼女だけが残ってしもたような状況やったと思う。彼女は自分のことをよく喋る。オレの生返事をものともせず自分がいかに不幸かを語る。生きることについて疑問を呈し真剣に悩んどる。どうやって生きるかではなく。生きるとは何なのか、と。ほぉ、またドエライ大風呂敷を広げましたな、お嬢ちゃん。僕は高卒なのでわかりません。彼女は夜が怖いと言った。自己嫌悪によって刃物を手にするとも言った。親の愛が薄いと言った。人間は醜いと言った。挙げ句の果てに助けて欲しいとも言った。オレは何度もあくびを噛み殺した。それでもオレは、たとえその場限りにおいてだけでも彼女を最大限に理解しようと努めたが、その努力は所詮実感を伴わぬ言葉の追体験で、替わりにオレの頭に浮かんだのはかれこれ5年前に死んだ友達Kの姿であった。Kは結婚して娘ができたのをきっかけに勤めてた運送屋を辞めて、10年ローンで中古のトラックを購入して独立した。オレが「お!社長!」とからかうと「いやいやいや。やめてぇや」と照れるKを見て「こんなのんびりした男に運送会社の社長が務まるんかいな」と心配していた矢先、深夜のバイク寝不足運転で奇しくもトラックに巻き込まれてあっさり死んだ。ホンマにあっさりやった。救われようのない話である。日頃から「子供の寝顔みたらなんぼでも働けるで」と仕事意欲に燃えとった不器用なKの笑ろた顔を瞼の裏に浮かべながらオレは「死にたい、死にたい」とヌカす女のファンタジーを聞いた。殺しても死なん女やと思もた。もし、この目の前の女が手首切り落として死んだ残りの人生をKに譲ることができたらどんなにええやろか。神様には生きたいヤツと死にたいヤツの区別がつかんのやな。神はアホや。
2006.01.20
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Aちゃんと新世界で焼肉を食べたあと、彼女が見たことないというので腹ごなしに飛田新地の遊郭をお散歩。灯が入ったばかりの飛田はいつ見ても美しい。「ときにAくん、人妻とはいったいどういう言葉かね」とオレは芝居がかった調子で問うた。Aちゃんは顎に手をあてて「人の妻・・やんね・・人の・・他人の?」「なんで人妻って言葉はエロいんやろか?」「自分の妻ではエロくないの?」「・・・たぶん最初はエロいんやろな」古臭いポルノでは「人妻の○○○」という題が今も定番である。オレたちは飛田遊郭を歩きながら「人妻の~」に続く言葉を交互に考えることにした。オレ「人妻の・・肌」。A「人妻の・・匂い」。うん、あるな。オレ「人妻の・・昼下がり」。A「人妻の・・お願い」。やるなAちゃん。オレ「人妻の・・技」。A「うーん・・人妻の・・人妻の・・庭いじり」。オレ「!・・なんで庭いじりなん!?」。A「いや、今そこでおじいちゃんが庭いじりしてるから」。なんじゃそら。人妻の庭いじり。うん。ええなこれ。なかなか味わいのある言葉である。みなさんもできるだけ淫らに声に出して読んでみてください。せえの。「人妻の庭いじり・・」。よくできました。要するに「人妻の・・」をつければ何でもそれっぽく聞こえるという、マヌケな結論に達したオレたちは、次に「人妻」をすべて「嫁」に置き換える遊びを始めた。「嫁の肌」。高い高いと嘆きながらもSKIIを使い始めたアンチエイジングな様子がうかがえる。「嫁のお願い」。浮気発覚を畏れて最近やたらと嫁のリクエストに答えるようになった旦那の様子。「嫁の昼下がり」。浅香唯もえらい老けたなーなどと言いながらジャージ姿で昼ドラなんぞを見る。「嫁の技」。どんなに固いビンの蓋でも開けることができる。「嫁の庭いじり」に至ってはただのガーデニングである。嫁ハンがどこで覚えてきたんか猫の額ほどの庭にガーデニングなんぞをすると突然言い出してコーナンで土やら肥料やらをどっさり買うてきて軍手姿で一心不乱に土いじりを始めた・・・ところを「ご精が出ますな」などと声をかけて通り過ぎる近所のジジィから見た視点。人妻の庭いじり。人妻と嫁は、言うまでもなく同一人物である。付け加えるならば同時に「主婦」であり「オカン」でもあることが多い。「オカンの肌」「オカンのお願い」「オカンの昼下がり」「オカンの技」「オカンの庭いじり」・・・今日はこれぐらいにしといたるわ。
2006.01.19
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オレはチャリンコに乗ってSHOGUNの「俺たちのメロディ」を熱唱しながら、途中の英語部分をかなりムニャムニャと誤摩化しつつも晴れた冬の上町台地の長い坂を千日前に向かってノンブレーキで一気に駆け下りた。♪男~ だったら~ 流れ弾の~ ひとつやふたつ~ 胸にいつでも刺さってる~ ささ~って~る~運が~悪けりゃ~死ぬだけさ~ 死ぬだ~け~さ~♪取引のあるショップの、ショップというても裏原系でもスニーカーでもインポート雑貨でもなく、この場合は電動コケシ屋のエロ経営者Eさんに呼びつけられて島之内の喫茶店に向かうオレはグラサンにマフラーをなびかせてヒーローさながらの颯爽とした姿である。今日はEさんとの話をサクっとすませて、ドアホのSとアメ村でレコードを漁ったあと、夜はTの家で「Rockn'roll Circus」のビデオ鑑賞会&ヤミ鍋大会の予定で、オレは食材としてカバンの中にとびきり臭いチーズと、穴あきパンストを仕込んどる。喫茶店につくとEさんと一緒にWがおった。うわ最悪や。せっかくのヒーローばりのマフラーも一気に昆布のように萎えた。何回も言うが変態好きのオレは、今まで数々のド変態列伝を見聞きしてきたが、実は変態の中でひとつだけ苦手なものがある。それは「真性のサディスト」や。オレは自分にとって腹の底から憎い人間は周りでほぼゼロで、ほとんどの人間に対してできるだけ温厚に接し、ダメな中にもええとこを見つけようと努力するほうやが、真性のサディストだけとは相性が悪い。こいつらは変態である以前に人間としてアウトや。「サディスティック・パーソナリティ」というのは性格障害のひとつでもある(矢幡洋・著「サディスティックな人格」等参照)。オレは男女関わらず真性のサディストと喋るとほぼ間違いなく最終的にはイラっときてケンカ腰になるのである。以前も話のリズムを絶対に崩されたくない真性女王様にキレた。「だまれ!ドブス!イったこともないクセにエラそうにヌカスな!やすきよのビデオでも観て話の流れイチから勉強せえ!」と天満のSMパブを出たことがある。この日もこのWとちょっとゴタゴタあったが、内容はまったく面白くないのでここには書かない。なぜならこれは不特定多数の読むブログだからである。だからまったく面白くない日記はまったく面白くないのでここには書かない。なぜならこれは不特定多数の読むブログだからである。だからまったく・・・もうええか。とにかくもうちょっとでオレは自分のアリバイを完全に確保したままで、Wのナントカロメオとかいう外車を椎名林檎ばりにチェーンソーで真っ二つにすることもできたのであるが、そこは温情をかけてやったつもりである。サディスト検定試験があれば、このWはまちがいなく1級であろう。ちなみにオレは4級サド免許が取れたらええほうである。オレが日頃オモシロおかしく描いとる、M女になみなみならぬ愛情と努力を注ぐ方々はサド検2級の人たちであることが分かる。ネットで奴隷をコツコツ捜しとるような小物はせいぜい3級やな。下記に思いつくサディスト適正を適当に挙げてみた。(+)の多く(-)が少ないほうが優秀なサドである。●サド検4級<オレ+ かなり穏やかながら、時間をかけてじんわりねじ伏せる+ 忠誠の儀式として目の前でオナニーさせる。イクまで+ 今からゆっくり10数えて、と言いながら両方の乳首をギリリとつまみ上げる- プレイ中に何かオモロイことがあると中断してでも笑いを取りたくなる- 芝居がかった空気に自分が耐えられない- 単純にMのワガママぶりに腹が立つ。気ぃついたらオレばっかり労働しとるがな●サド検3級<エセサディスト+ プレイ中の空気感を壊さない+ たとえ地方出身者でも標準語で首尾一貫できる+ AVを見様見真似での縛りができる+ 普通のセックスでも責め好き。奉仕を加虐と勘違いのフシあり- ご主人様(女王様)のクセに、出会い系サイトで奴隷を探してしまう浅ましさ- 新婚カップルさながらの普通の正常位でフィニッシュしてしまう- 絶対服従を要求する影に潜む、異性への自信のなさ- 痛いと言われたらひいてしまう●サド検2級<準サディスト+ 独自のローカルネットワークでパートナーを確保+ 偏執的な愛情を攻撃性にうまく転化できる+ 奴隷が途中で屁をこいても笑わない+ 奴隷目線での自分の見え方を心得ている(フェラ時にマヌケ面にならないなど)+ 縛りにモタモタしない。ボーイスカウト級の手際の良さ+ 鞭・ロウソク・拘束など一通りの奴隷の幻想に対応できる- プレイにできるできないがある。スカトロはかなり後回しに。- 完全なる主従関係ではなく、奴隷に恋愛感情を抱かせるスキを与えてしまう●サド検1級<真性サディスト+ 人を平気で拳で殴れる+ 病的なほど負けず嫌い+ ごく僅かな侮辱を看過できない+ 人を力で抑圧できると本気で思っている+ 人の話を意図的に遮る。会話の主導権を取りたがる+ 猜疑心が強く、何事もしつこく根に持つ+ 相手が謝ってもなかなか許さない+ 不必要にプライドが高い。自分以外の人間はアホやと思もとる+ 会話でも相手より自分が優れているところはどこかを常に探る+ 奴隷を「本当に奴隷のように」扱える。情けはゼロ+ 基本的に他人を信用しない。信頼関係は奴隷側だけの幻想- 服がダサい。90年代初頭風ファッション。- 友達が極端に少ない。流行に疎い。- 空気が読めない。- ボケれない。イジると本気で怒る。えー、このように。オレは真性のサディストとは一生かかってもお友達になれないのである。こういう輩に「俺たちのメロディ」のロマンはわからないのである。加えて、ええ年こいて「ボケれない。イジると本気で怒る」は致命的である。
2006.01.17
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Tと本町の幸福粥店で中国粥を食べながら、官能小説朗読CDについてミーティング。堀江で買うたバーゲンの袋を山ほど持ってきたTは春風亭昇太そっくりで関西人にあるまじき品の良い顔立ちと身なりである。オレは蒸し餃子を口に放り込みながら、Tが熱心にリサーチした淫語CDの現状について聞いた。AV業界と同じくロリィと熟女に二極化していること、アニメ声優崩れのスタジオ録音が多いこと、テキストがエロアニメのフォーマットを踏まえたものが多いこと、リスナーへの呼称が「お兄ちゃぁん」が妙に多い、などなど。「ほんならそれ以外で考えてみようや」。オレとTはこのテの企画に向いてないかもしれん。なぜなら二人は真面目に考えるのは最初のうちだけで、ものの五分も経たぬうちに「江戸川乱歩の『芋虫』を朗読させよう」だの「キタNo.1ホストが奥様の耳元で囁きます」だの「オムニバス形式でオカマの中に女性を混ぜた『本物は誰だ』」だの「客を入れて朗読オナニーの実況録音盤を出そう」だの「実際に女性を逆さ吊りに緊縛した状態でSM小説を朗読してもらおう」だの「雲雀のピーチクさえずるような春の河川敷に座って読んでもらおう」だのと、市場を完全に無視した企画で盛り上がってしまい、最終的にはオレが「馬の交尾をサラウンドで録音したら絶対オモロい!」と素晴らしいアイデアを口にしたとき、Tは「・・・さて、ぼちぼち真面目に考えましょっか」とヌカシよった。アホか。オレはいたって真面目や。馬の交尾を5.1chスピーカーで再生したらスゴイぞ。とオレが食い下がると「普通の作って、それが売れたらやりましょうね、馬の交尾CD」。Tよ、オマエは大人や。これからもよろしく。
2006.01.17
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朝からベラベラと雨が降る中、オレは幼稚園児みたいなマヌケなビニ傘をさして歩いた。扇町公園の近くでええ年した大人がハチマキをしめてカルガモ親子の引っ越しみたいにヨチヨチと行進しとった。邪魔や。メガホンで消費税撤廃を叫ぶオバハンは厚化粧で、その税金で雇われとるポリコに始終守られながらガキみたいな政治への不満をうめきながら、まさにゾンビの行進やった。このゴにおよんで、まだ政治に何か期待しとるとは呑気なハナシやで。あるいは耳かきですくうほどもない自己満足。街は今日も平和や。あの先頭を歩く厚化粧のオバハンに乳首ローターでも着けて歩かせたらメガホンから出る声もうわずってオモロイねんけどなと空想してたらアポイントのあるマンションの下に着いた。 営業のNは先に来てポカリを飲んどった。コイツはなんかいうたらポカリを飲んどる。カラダがダルい。ポカリ。暑うて死にそう。ポカリ。飲み過ぎたわ。ポカリ。しまいにガンにでも効くとか言いかねんポカリ幻想を抱いとる。エレベーターの中でNは「今から会うオッサンはたいがいSやで」とフった。そのあたりをオレに聞いてくれということや。アポ先のオッサンY氏は大人のオモチャの販売サイトを手がけたこともあるというので話を聞いた。例によってオレは仕事の話よりもオッサンの個人的な性癖の話を聞き出した。Y氏は以前にこのマンションで個人SMクラブを商売としてやったこともあるという。 Y氏は長身の浅黒い五十男で物腰は柔らくどちらかと言えば草食系のオッサンである。本棚には意外にも江國香織などがあった。なんでやろ。PCの前に座っていた二十才ぐらいのおとなしそうな女が冷蔵庫からリンゴジュースを運んできてくれた。オレとNは仕事の話をテキトーにすませ本題に入った。キュッキュと音のする革のソファに浅く腰かけながらY氏は話し出した。Y氏はマルチまがいの商売で十年程前にちょっとした大金を手に入れた。悪銭身につかぬことはY氏も承知で、それやったら好きなように使こてまえと個人で女性向けのSMクラブを開業した。もちろん風俗営業の許可もないし申請もしてへん勝手な商売で、SM雑誌の小さな広告枠だけでの宣伝やったという。日本橋界隈は今もSMクラブの老舗がいくつかある変態エリアやが、そんな小さな宣伝だけでも毎週二三人程度の客が来た。女の警戒心は一回目だけで一回来た客は必ずと言っていいほど得意客になった。Y氏はムチ、縛り、ローソク、浣腸など通り一遍のプレイをこなし小銭をかせいだが、真性のマゾというのはそう来るもんやなく、興味本位のエゴマゾがほとんどとのこと。Y氏のような真性のSにとって日々の紋切り型の肉体刺激は退屈なだけで、ギャーギャー泣きわめく女を前にアクビをこらえたこともあるという。いつか心身共に繋がることのできる理想のマゾ女をお姫様のように待ち焦がれる日々が続いた。 そんな中で何人か「これは」と思う女に対しては、日をあらためて会おうと約束をした。Y氏は女性と向き合って座り、世間話から徐々に支配的な関係性を会話のみで構築していく。二人の間に暗黙の主従関係の合意ができあがったところで、Y氏は洋裁に使うハサミを持ち出し、女にここまで穿いてきたスカートを切り刻むように命令する。日をあらためて会うことにより女はある程度自分の中で気に入ったスカートを穿いてきとるハズで、それを男に切り刻まれるのではなく、自分で切るというのはなかなかできるもんやない。そこで拒否した女には指一本触れずに会話だけして「どうもありがとう。またお待ちしています」と帰らせるが、泣きながら自分のスカートを洋裁バサミで切り刻む女が今までに二人おった。Y氏は極度に欲情する自分を抑えながら冷徹に見守るだけで、一度ハサミを入れた女はY氏が止めるまですすり泣きながら無言で切り刻み、臀部がほとんどあらわになるまで続けるという。この時の涙はいったいどういう種類の涙であろうか。その二人を奴隷にしたY氏はSMクラブを閉めた。Y氏いわく、SMもノーマルもおんなじで理想のパートナーを見つけるのはまったく骨の折れる仕事で、SとMにも無数の段階やレイヤーやバリエーションがある。SとMやから相性が合うなんてとんでもない。細かい好みが合致する間では大まかにSとMに分けて疑似恋愛を続けとるだけですわとのこと。ちなみにさっきオレらにジュースを運んできてくれた女性はY氏の一人娘であった。
2006.01.14
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Tくんと泉の広場で待ち合わせ。ここは待ち合わせ場所であるとともに大阪屈指の売春婦分布地帯でもある。売春婦とはいうものの平均レベルは五~七点(百点満点)の妖怪どもが巣食う魔の地帯と言っても過言ではないが、世の中にはこの妖怪に果敢に挑む怖いもの知らずの男たちも少なくない。相場は壱萬~壱萬伍阡円とのこと。 広場の噴水を中心に常時四~五人の妖怪ほどが客待ちをしている。そのまわりを七~八人の気弱そうな男たちが互いを牽制しながら妖怪に少しずつ近づいて行く。そのバレバレでしらじらしい近づき方は気弱な男特有の意味不明なプライドの高さと相まってギクシャクとおかしなことになっとる。で、オレはそのマヌケな光景を眺めるのが大好きなのである。 泉の広場は東梅田地下街にある噴水でその周りには六つの地上出口がある。「ははは。ビリヤードやな」。オレたちは泉の広場を回遊する数名の売春婦と買春客に背番号を勝手に割り振って、ビリヤードを始めた。九番玉に設定したのは、あきらかに誰のか分からん子供を身籠っていると思われる腹ボテの妖怪で、動きこそ鈍いが妊婦にあるまじき粗雑な行動でバタバタとせわしなく行ったり来たりしとる。オレたちの想像が間違っていなければ近いうちにイリーガルな方法で堕胎して何事もなかったように翌日もここに立つであろう。彼女が生命体として唯一のセールスポイントとするのであろうギャートルズ的な爆乳を通りの男たちにせっせとアピールしていた。この九番玉をポケットインさせる手玉はそうおらんやろと思もた。ブレイクショット。 先手オレ。先ず四番玉の自営業風手ブラ男が二番玉のギャル風ミニスカ三十路女にアプローチ。値段交渉が決裂したのか生理的に合わぬのか二番玉のほうが首を縦に振らない。業を煮やした四番玉は別の獲物を探しに地上ポケットへイン。四点獲得。 Tくんの番。三番玉の推定六十代のジジイが一番をつけた唯一マトモなヤンキー風十代茶髪女にアプローチ。孫とジジイやがな。ジジイ思い切ったなあと笑うオレとTくんをよそに意外にも即決。カネか。一番玉の十代茶髪女はジジイの腕を取って甘えるように二人で地上出口にポケットイン。Tくん四点獲得して四対四の同点に。 そこからはダレダレで、そこかしこでコツンコツンと当たるのだが玉は台に残ったままの膠着状態が続く。「なんか飽きたな。メシ食いに行こ」「そうですね・・・あ!」とTくんの視線の先には、両手に"まんだらけ"の袋を下げガリガリに痩せこけた長身のオタク丸出し眼鏡男が九番玉の腹ボテ妖怪にアプローチする姿があった。それまで笑ろてたオレらは一気になんとも言えん暗澹とした気持ちになってしまった。この世のものとは思えん肉塊妊婦にガリガリで長身のオタク。オタクは最終的に拝むような仕草をして口説きにかかっていた。料金交渉に手間取っているのか。肉塊妊婦は「やれやれ、まぁ僕ちゃんがそこまで頼み込むんやったらしゃあないなぁ」といった表情で二人一緒に地上出口にポケットインした。Tくんは「聞くとこによると、九百円で本番ができる女もいるそうですからねぇ・・・」と遠い目をした。 おい長身のオタクの兄ちゃんよ、その両手いっぱいの"まんだらけ袋"には何が入っとるんや。"まんだらけ"でなんぼ使こたんや。お気に入りの可愛らしい萌えキャラグッズもぎょうさん入っとるんやろ。なのにオマエは今からキュートなネコ耳メイドではなく推定年齢四十代の薄汚い肉塊妊婦を買春しようというのか。なぜわざわざ理想と現実をそこまで乖離させる必要があるのか。オレはもはやビリヤードはどうでも良かった。 すっかり沈んだオレたちは、「・・・ああいう人種の矛盾だらけのファンタジーも、ある程度理解してみたいもんですね」というTくんに「・・・そやなぁ」と同意し、二人で東通商店街を突き進んでまんだらけに潜入した頃には、そんなマヌケな大義名分はすっかり忘れて諸星大二郎の小説「キョウコのキョウは恐怖の恐」をゲットしてちょっとテンションが上がった後、コリアンダイニングでチゲ鍋をたらふく食った。
2006.01.12
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前妻がお歳暮の余りもんをぎょうさん持ってやって来た。お歳暮が余るほど送られてくる家にうまいこと嫁ぎやがったなと言うと「アホかアンタ。全部お返しせなアカンねんで」と怒られた。ほなお歳暮でいったい誰が得するんや、と言おうと思もたがドツかれる前にやめた。オレは大好きなハムの詰め合わせのフタを開けて「うぉぉ!めっちゃウマそうやん」とテンションを上げると彼女は「ちゃんとあのコと半分コするねんで」と釘をさした。あのコとは毛布の間から顔だけのぞかせたアホ猫のことである。彼女が家を出る時に残したものはボロボロの扇風機とこのアホ猫一匹だけやった。むしろアホ猫がたらふく食ったハムの残りをアンタが食べなさいという主旨のことをヌカした彼女はお歳暮の箱をオレの部屋の所定の位置にテキパキとしまった後で、オレの前に座り直した。「話あるねんけど」「・・・?今さらオレとヨリ戻そう思もても・・・」「アホ!だまって聞き」「・・?」「・・・子供できてん」「・・あ?ああホンマ?良かったな!おめでとう」「・・・」「名前オレつけたるし!ウチの猫の名前から一文字とって・・・」「・・・」鈍い冬の夕日が差し込む薄暗い部屋で久しぶりに彼女の涙目をみた。オレは妊娠のことよりも単純に人前で泣くことなどない強い彼女の涙目に困惑し、親に怒られる子供のように服のスソを指の跡が残るぐらいギュっと掴んで彼女のうなだれた頭頂部をただ見つめた。彼女はしばらくして鼻を一度だけすすって「ありがとう」と言った。「ありがとうは婿さんに言わな!こんだけハムぎょうさんもらえる立派な人なんやからな」。婿さんが車で迎えにくるまでの間、彼女は自分自身に整理をつけたかのように見えた。オレは何かお祝いをあげなアカンと押し入れをゴソゴソ探した。妊婦にアナルバイブあげてもしゃあない。結局オレは人生ゲームのコマの車に夫婦と子供一人を乗せて彼女にあげた。子供はピンク色。「まだ男か女かわからんで」という彼女に「女や。絶対女」とおれは言い切った。「ランドセルはオレが買うたるど」というオレに「それまでアンタが生きとったらな」と悪態をつく彼女は妊婦にあるまじきピンヒールで階段をカツカツと降りて行った。階下には人生ゲームのプラッチックの車とは比べもんにならん外車が迎えに来とった。おい、アホ猫よう聞けよ。オレとオマエに妹ができるぞ。
2006.01.11
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ひさしぶりに社長に会う。社長はカタカナの「シ」と「ツ」の区別もつかん典型的な大阪の肉食系オヤジで、意味もなく大声で笑いながら「儲け話持ってきたったど!」とヌカすがたいがいの場合は仕事に見合ったごくごく順当な報酬であって決して濡れ手で粟は掴ませてはくれへんのがこのオッサンや。「・・ああ、ありがとうございます」とオレが半笑いで礼を言うと「これでオマエも"ホリエモン"みたいに儲けてくれや」とホンマに誰が笑うねん!という腐れギャグをぶちかました。こう書くと五十を越えたオッサンみたいであるが社長は四十一歳でオレと五つしか変わらんのである。世間には実年齢を上回る「加速オヤジ」というのがいる。若い頃から「オッサン」として振舞っているとある地点からオッサン化にターボがかかってしまい、さらにVシネマでしか見たことないような漫画的なオッサンへと変貌を遂げる。意味なく相手の肩を叩いて笑う。酔うてへんのに顔が赤黒い。車の中が臭い。手の指が不気味に太い。風俗の最高峰はソープであるといまだに信じて疑わない。など。 今回社長から与えられたミッションは「官能小説を読む女性の声を録音する仕事」であった。世の中にはいろんな仕事があるもんや。夏ぐらいまでにオムニバス形式のオーディオCDで6作品ほど制作し秋には独自の販売網で小売りしようと考えているらしい。オレがたまたま録音機器なんぞを遊び半分で持っているのでその部分を仕事に生かせと。ふーん。意外に思ったオレは「それって社長が考えたんですか?」と聞いた。「あったりまえやがな。あえてDVD全盛の時代やからこそ「音声の世界」に魅力があるワケや」・・・おかしい。このオッサンがこんな気の効いたことを立て板に水で話せるわけがない。こないだまでDVDのチャプターのことを「チャクター」と言うとった男である。しかも今までのようにアダルトグッズやエロビデオを販売するのではなく、いわばある種のクリエイティブコンテンツを制作するのであって、このオッサンが性に対してそんなに繊細な感覚をもっているハズがないのである。だいたいこのオッサンなんぞはエロ本でオナニーをする時に性器がドアップに写ったページで射精を迎えるというデリカシーのカケラもない下劣な男であり、ストリップ劇場では臆することなく最前列でかぶりつく。こんなアホ社長とのつきあいもかれこれもう十年になるねんなとしみじみしつつ「わかりました。やったことないけどなんかオモロそうですね」と言うと、社長は急に安心した表情になり「な!ええやろ?よっしゃ決まりや。あとはTくんと企画内容打ち合わせてくれ」というなり無意味にウシャシャと笑いながら席を立った。Tくん。やっぱりか。場所を変えて芸大出の映画マニアTくんの事務所で企画書を見せてもらった。そこにはさっき社長がオレに滔々と語った内容がまるごと書かれていた。 ともあれオレは「淫声録音技師」としての仕事も始めることになった。決められた日程にビジネスホテルに録音機材を持参する。会社が用意するバイトの女性が官能小説を読みながら自慰に耽る様子を声を殺してできるだけ良い音で録音する。それを自宅で音声編集しCDのプレス工場に納品。ここまでが仕事。まずオレに課せられたタスクは機材選びからである。どさくさに紛れて自分が欲しい機材も買うてこましたろ。社長はどうせ順当なギャラしか払ってくれへんのは確実やが、映画好きのTくんと仕事をするのは楽しいし、まぁとりあえず始めてみよか、とTくんと江戸堀のバーで祝杯をあげた。
2006.01.10
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南森町のオイスターバーでE女王様と食事。江戸川乱歩とブラックマヨネーズと報道規制とキム兄結婚とウディ・アレンの話をした。彼女は去年まで実際に十三のSMクラブで女王様をしとった。共通の友達で音響マニアのDが主催する「野外録音の会」で初めて会ったのは去年の春ぐらいやろか。オレは奈良の薬師寺で美しい雨音を録りたかったのだが実際の雨音というのは想像以上に不連続なもので「サー」という途切れ目のない雨音というのは録音するのが非常に難しい。イライラしたオレは途中で投げ出して、自分の屁の音などをDの高級集音マイクで録ったりしていた。Dに本気で怒鳴られるオレをハタから眺めて口に手をあて必死で笑いをこらえていたのがE女王様であった。 Eちゃんは現在女王様を引退し海外に居住するために英語を猛勉強中で、しかも北浜でリッチなマゾ男くんに借りてもらったマンションに住んどる。オレは不思議の国のアリスに出てくるホワイトラビットの指人形をカクカクとEちゃんのほうに向けて動かしながら「でもそれってM男に飼われてるワケやんな?」「そやで」「なんか・・・おかしないか?」「なんで?」「いや・・女王様がM男に飼われてる、っていうのが」「春駒くん、この業界長いのにまだまだロマンチストですよねぇ」と笑われたオレは今年三十六で笑ったEちゃんは二十五才である。彼女はアリスの指人形をこちらに向けてカクカク動かしながら「私たちがやってることは"サービス"、"ごっこ"じゃないですか」と可愛らしく言い放った。Eちゃんの言い分によれば「世の中のSMのほとんどがフィクションである」と。男女のじゃれ合いのただのパターンのひとつにすぎんと。 たしかにオレは理屈では分かってるつもりでもまだまだSMという青い鳥幻想を額面通りに捉えすぎているロマンチストかも知れんなぁ。究極のSは「自分以外を信用しない」し、究極のMは「極限的自己否定」である。とてもやないがオレは真性のSにもMにもなれん。その両者のあいだに「愛」はない。ましてや生活を共にしてお互いを思いやったりワガママをぶつけあうこと自体がそもそもSMという構図に矛盾しとる。S極とM極のあいだに無数に存在する巷間のSMカップルはすべて「ごっこ」であると言ってもいい。こうやったらM女が身をよじって悶えるハズやとあれこれ気をはりめぐらせて画策するサービス精神旺盛なご主人様と、恥ずかしそうにしながらもご主人様に結果的にいろんなプレイをリクエストするワガママ奴隷。これを「SMごっこ」と呼ばずして何と呼ぼうか。 彼女は二十歳ぐらいの時にM奴隷として真性のサディストに囲われたことがあったが二日で逃げ出したという。性的暴力や服従強制などではなく、単に「自信過剰」なところが耐えられなかったそうである。彼女は恐怖や痛み以前に「自分の世界をすべて奪われる」と感じたとのこと。Eちゃんは不思議の国のアリスに出てくる「I see Nobody」の話を引用して「SMなんか本当は無いんかもねぇ」と言って天井を向いた。オレは「むー・・・」と指人形だけをカクカク動かした。
2006.01.09
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・・・ひそかにブログを復活してみよう。この広大な楽天ブログの中で当時の連中はこれに気づくだろうか?旧タイトルを一番に答えられた人には豪華賞品をさしあげます。しばらく月並みな仕事ばっかりで大してオモロイこともなかったオレは相変わらず天王寺区の片隅にアホ猫と二人で暮らしとる。以前ブログを書いてた時はアダルトグッズの開発やデザインに関わる仕事をしていたのでくだらんバカエロ話でもネタに困ることはなかったが、その後広告デザインの仕事一本で食っていたのでとくに何ということもなくただ忙しい日々が続いた。2006年正月。オレは「そういやブログとか書いとったなぁ」とダシ汁のしみ込みすぎたシイタケを食べてる途中に思い出した。このダシ汁のしみ込みすぎたシイタケは、元旦にツレのR邸にて老若男女入り乱れての「オセロ大会」の戦利品として、おせちの重箱の一番下の段をまきあげてきたものである。Rから「上二段はカンベンしてくれ。二日三日と親戚がまだまだ来よるんや」と泣きが入ったので、オレも他でもない兄弟のためやと思もて情をかけたのが間違いやった。おせちの三段目。それは『とてつもなく鈍い色で埋め尽くされた彩りのない世界』なのである。まるで深海千百粁のマリワナ海溝の海底にひそむ未開の深海生物のごとく、ただただ押し黙ったままの無彩色のしいたけや温野菜たち。正月もとうに過ぎとるというのにオレはこのダシ汁のしみ込みすぎたシイタケをつまみあげ、ストーブの前で寝ころんどるアホ猫にあげた。アホ猫よ、オマエにも手伝ってもらわんとなかなか減らんぞこれは・・・というわけで、今年はちょっとブログを書いてみようと思うオレである。それは、前職のアダルトグッズ会社の社長から、摩訶不思議な仕事が舞い込んだからである。またしばらくは広告の仕事との二足のワラジになるが、オモロそうなので是非やってみようと思う。タイトルは「HEADPHONICな日々」。仕事記録を中心に淡々と進めていけたらと思います。よろしくお付き合いください。
2006.01.08
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