Momo-mama's Diary

Momo-mama's Diary

藤棚

女の子は藤棚の下でお母さんを待っていました
幼稚園の遠足のお弁当の時間、
みんなでお母さんとこの公園で待ち合わせて
楽しいお弁当の時間です

たっぷりと緑の葉を繁らせ、手が届くほどに
美しい紫の房を差し出してくれている藤の花、そしてその甘い香り
その藤棚の下で、お母さん達は待ってくれていました
でも、女の子は知っていました
お母さんはその中に居ないだろうと言うことを
やがて、みんなそれぞれに楽しそうにおしゃべりしながら
お弁当を広げ始めると、とても一人ではいられなくなって
そろそろと歩き始めました

大きな池の周りを2回、3回と回ってもお母さんの姿は見えません。
石橋を渡ったり、しゃがんでお魚を眺めたり
でも藤棚から離れない場所でお母さんが来るのを必死で待っていました

どのくらい時間が経ったでしょう
「ごめんね、遅くなって」
息を切らして走ってきた母親の顔を見た途端
本当は泣き出したくなったのをこらえ
「ううん、今さっきだったよ」と、母親に駆け寄り
その手をしっかり握りました。
スキップする女の子の足下で音と一緒に砂利も元気良く跳ねました

母となった女の子は藤の花を見るたびに
藤棚の下で立っている自分の姿をくり返し思い出して
話しかけてやるのでした


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