しあわせのかたち

しあわせのかたち

『新世紀エヴァンゲリオン』観覧記(3)





時は西暦2015年。
南極の氷雪溶解による世界的危機(セカンドインパクト) から復興しつつある時代。
箱根に建設中の計画都市、 「第3新東京市」に突如襲来する“使徒”。彼らはその正体も目的も不明だが、 さまざまな形態・特殊能力で人類に戦いを挑んできた。
この謎の敵“使徒”に人類が対抗する唯一の手段が 「汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン」である。
国際連合直属の特務機関「ネルフ」によって主人公「碇シンジ」を含む3人の少年少女がその操縦者に抜擢された。
今、人類の命運を懸けた戦いの火蓋が切って落とされる。
果たして“使徒”の正体とは? 少年たちの、そして人類の運命は?
パワフルなバトルアクション。謎また謎のスリリングなストーリー。少年少女達の葛藤、そして心の成長。
ダイナミックに展開する、本格アニメドラマです。



 前回のラストでドイツにあるネルフの支部から、弐号機とともに「アダム」と呼ばれる細胞組織が日本に運び込まれてきた。その形態から、どうやら「使徒」と強く関係しているらしいことがわかる。
 あーなるほど。Adam(アダム)とEve(イブ/エヴァ)で、「使徒(シト)」と「人(ヒト)」なわけね。

 なんというか、ここにおいてこの作品全体に漂う衒学趣味の方向性がやっとこさっとこ理解できたような気がする。旧約聖書と構造心理学ですか。ははー。遅いですかね。



<9話~12話>(DVD3枚目)

 全般的にアスカが活躍する回が多い。
 ロボットアニメらしからぬエヴァシリーズではあるが、この9~12話はアクションシーンが多用される。第10話「マグマダイバー」では使徒が使徒になる前の、胎児のような姿が映し出される。
 使徒(シト)は人(ヒト)なのか?
 そこらへんの説明がいっさいないまま物語は進む。

 制作者サイドの狙いとしては、ここらで単純な冒険活劇を見せておこう、ということがあったような気がするが、どうも私には合わなかった。エヴァンゲリオンというシリーズが旧約聖書に引っかけて人間の内面を描こうとするのであれば、中途半端な青春ドラマや恋愛ドラマ、いわんや「巨大ロボットアニメ定番のシーン」などは邪魔に感じてしまう。

 特に「恋愛」と「青春」は、舞台となる第3新東京市が「セカンドインパクトによって四季が壊れ、常に夏」という設定と無関係ではないだろう。狙いはわかるが狙いすぎ、というヤツである。


 もうひとつの狙いとして、この9~12話の連作では、アスカの魅力を見せようとしているところが気になった。エヴァに登場する3人のヒロイン、綾波、アスカ、ミサトを、制作者サイト(具体的には庵野秀明監督)は「それぞれ別の魅力を持った女性」として描きたかったのではなかろうか。

 まったくタイプの違う3人の女性(赤木リツコ博士を入れて4人とカウントしてもいいかもしれない)が作中で活躍すれば、視聴者はどの女性かが好きになる。はずだ。そんな狙いがあったのではないか。

 現実存在としての女性には、綾波的な要素もアスカ的な要素も、ミサト的な要素もあるんだけどなあ。私には登場する女性全員が、ファザコンに見えて仕方がない。庵野監督の持つ女性像の投影なんだろうか。

 とまれかくまれ、まあ私ならミサトさんが好みかな。
(まんまと庵野監督の狙いに引っかかっているわけだが)



 探しものは見つかっていない。

 職場の知り合いに聞いて回ると、「全編見た」という知り合いが2人いた。
 感想を聞くと、「暗い気分になった」、「ラストが納得いかなかった」とのこと。
 感情移入するとロクなことにならなさそうだ。
 むうう。アニメくらい寝っ転がってラクな気分で見るべきだと思うんだがなあ。



 旧約聖書によると、知恵の木の実(リンゴ)を食べたイヴは「あらやだ、私ったら裸だわ」と気づいて、イチジクの葉で体を隠す(「イチジクの葉」は機密機関ネルフのトレードマークであり「知恵による隠蔽」を象徴する)。
 知恵を持ったことを知った神は、アダムとイブをエデン(楽園)から追い落とす。

 このことから、キリスト教では「知恵」を「罪」と考える。
 神ってずいぶん心が狭いなあ、って思うよね。
 これは「人間の知恵が、やがて人間自身を滅ぼすんじゃないか」という不安から来ているのではないか、といま私は思うわけで。


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