ハピー百貨店

ハピー百貨店

しんまい天使ハピーのわたがし作り







ハピーは、死んでしまった犬です。

天使としてはまだまだしんまいさん。

天国へ来たばかりのころは、羽の動かし方も上手ではありませんでした。


★★★★★★★★


けれど、天国での毎日はとてもゆかいです。

お友だちと遊んだり、いろんな形の雲を作ったり、蓮の花のベッドでお昼寝をしたり。










ときどきは、おうちへ帰って家族の様子を見に行くこともあります。

でも、そのたびにハピーは胸がぎゅっと苦しくなりました。

家族は毎日、ハピーの名前を呼んで泣いていたのです。

「ハピー……。」






「もう一度だけ会いたい。」

その声を聞くたびに、ハピーまで泣きたくなってしまうのでした。



★★★★★★★★



天国ぐらしのワンコたちは、遊んでばかりではありません。

みんな「天国工場」で、わたがし作りのアルバイトをしています。

材料は、ふわふわの雲。

神様から一本の割り箸をもらって、

くるくる。

くるくる。

くるくる、く〜るくる。

真っ白なわたがしを作ります。

「ドッグフードの味になあれ。」

そう思えば、大好きなドッグフードの味。

「ホットケーキの味になあれ。」

そう思えば、あの憧れの バターとハチミツがたっぷりかかったホットケーキの味になります。



天国では、思ったことが本当になるのです。









ある日、ハピーは首をかしげました。

「このアルバイトって、なんのためなんだろう。」

だって雲をそのまま食べても、ちゃんと好きな味になるのです。

わざわざ、わたがしの形に巻く必要なんてないように思えました。



神様はその質問を聞いて、にっこり笑って

「いつかわかりますよ。」

そう言ったきり、何も教えてはくれませんでした。


★★★★★★★★


天国で二年がたちました。

おうちでは、家族が新しい犬を迎えました。

ハピーは雲の上から、そっとその様子を見ていました。

新しい子は元気いっぱい。

家族も笑顔で、その子を抱きしめています。







ハピーはうれしくなりました。

「みんな、笑ってる。」

もう泣いてばかりじゃない。

それは本当にうれしいことでした。


でも……

家族が新しい子の名前を呼ぶたび、

ハピーの胸は少しだけチクリと痛みました。








「私は、もう思い出になっちゃったのかな。」

「もう忘れられちゃったのかな。」

そんなことを考えてしまう時もありました。






★★★★★★★★



それでも天国での日々は続きます。

ハピーは毎日、心をこめてわたがしを作りました。

失敗した日もありました。

形がゆがんでしまった日もありました。

それでも、毎日くるくる巻き続けました。

すると、いつのまにか天国工場でも一番上手なわたがし職人になっていました。



そんなある日、不思議なことに気がつきます。

神様がくださる割り箸の中に、ときどき一本だけ、七色にきらきら光る割り箸があるのです。

その割り箸で作ると、わたがしは虹色に輝きました。

とってもきれい。

見ているだけで幸せになるような、ふしぎなわたがしです。







でも、もっとふしぎなことがありました。

虹色のわたがしを作ったワンコは、そのわたがしを食べません。

大切そうに抱えて工場を出ていきます。

そして、二度と戻ってこないのです。

「どこへ行くんだろう。」

ハピーにはわかりませんでした。

ある日、お友だちのクッキーくんが虹色のわたがしを作りました。

「ハピー、じゃあね!」

そう言って、しっぽを振りながら走って行きました。









とても幸せそうな顔でした。

ハピーは思いました。

「きっと、あのわたがしには特別な意味があるんだ。」




★★★★★★★★



それから、また長い月日が流れました。

ある朝、ハピーは目を覚ましたとたん、不思議とわかりました。

「今日は、ハピーが虹色のわたがしを作る日。」

誰かに教えられたわけではありません。

でも、心がそう言っていたのです。

ハピーは神様のところへ駆けて行きました。

「神様。」

「今日は、虹色の割り箸をください。」

神様は、とてもやさしい目でハピーを見つめました。

「今日は、とくべつ心をこめて作りなさい。」

「はい!」







ハピーは元気よく返事をしました。

くるくる。
くるくる。
くるくる。
く〜るくる。

今までで一番ていねいに。

今までで一番やさしい気持ちで。

世界でたったひとつの虹色のわたがしができあがりました。








ハピーは、そのわたがしを大切に抱えて、一目散に天国工場を飛び出しました。

その瞬間、ハピーは全部わかりました。

どうして、わたがしを作っていたのか。

どうして、毎日練習していたのか。

どうして、神様は理由を教えてくれなかったのか。

今日、この日のためだったのです。

自分が心をこめて作った最高のわたがしを、

世界で一番大好きな人へプレゼントするためだったのです。



天国の入り口で、一人の人があたりを見回していました。

はじめて天国へ来た、しんまい天使さんです。

その姿を見つけたハピーは、

もう走らずにはいられませんでした。

「会いたかったワン!」

ハピーは勢いよくその人の胸に飛び込みました。

「ハピー❢」

飼い主さんは涙を流しながら、ハピーをぎゅっと抱きしめました。

「ずっと会いたかった。」

ハピーは虹色のわたがしを、そっと差し出しました。









「私が作ったの。」

「ずっと練習してきたんだよ。」

飼い主さんは笑顔になりました。

「ありがとう。」

「とってもきれいだ。」

「きっと世界で一番おいしいわたがしだね。」

そして、やさしくこう言いました。

「また会えたね、ハピー。」

「これからは、ずっと一緒だよ。」

その言葉を聞いたハピーは、しっぽがちぎれそうなくらいうれしそうに振りました。

そのときハピーは、ようやく知りました。

家族は新しい犬を迎えても、

ハピーを忘れたことなんて、一度もなかったのです。

心の中には、新しい子の居場所も、

ハピーの居場所も、

どちらもちゃんとありました。







愛する気持ちは、ひとつしかないものではありません。

大切な家族が増えるたびに、

愛もまた、ひとつ増えていくのです。

ハピーは安心しました。

そして、世界で一番幸せな笑顔になりました。

よかったね。

ハピーちゃん。







これは私の願望でもあります
ハピーの名前を天使になった愛するあの子に置き換えて読んでみてください
きっとまたあの子に会えるでしょう


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