vol.2~踊り場~


 unbelievable  vol.2~踊り場~



  私が以前勤めていた病院でのこと・・・・
  その当時私は整形外科病棟に勤務していました。

  この病棟の患者さんは「入院している」と言っても、
  骨折云々での入院が多く、
  特に若い男性患者ほどエネルギーを持て余している人が多いわけで・・・・

  二ヶ月、三ヶ月~と入院が続けば続くほど・・・・

  ある日の朝、
  遅刻ギリギリになったので急いでエレベーターに乗り込もうとすると

     ブー!ブー!ブー!

  定員オーバーのブザーが冷たく鳴り響いたのでした。
  もう一方のエレベーターは最上階にいる。

     んっ、もう こんな時に限って!
     仕方ない、今日は階段を使うとするかっ!

  ドタドタドタドタ・・・・!
  勤務病棟にたどり着いたときは ゼーゼー の ヘロヘロ
  呼吸を整えるためにスーハースーハーと深呼吸をしているとき
  階段の上の方からなにやら奇妙な声?が聞こえてくる。

     おやっ?なんの声?これ

   耳をすませて聞き直してみたら・・・何も聞こえない。
  何かの空耳だろうと思い勤務についたのです。

  待ちに待った食事タイム♪
  食堂へ降りるときもエレベーターに振られてしまい、

     ダイエット、ダイエット♪

  と、自分に言い聞かせながら階段をまで行ったら、また何か聞こえる。
  ・・・・やはり、何か聞こえる。
  人の声のような、大きなため息のような何とも言えないものが。

     休憩時間でもあることだし
     ちょっと見に行ってみよっと

  半分ドキドキ、半分ワクワクな気持ちで階段を上っていくと
  その奇妙なものは人の声だとわかってきたの。
  あと1階で屋上 というところで・・・・
  なんとなくその声が何なのかわかったのです。
  どうやら女の人のあの時の声。
  そこで気を利かせて階段を下りればいいものを

     んんっ!?♪!

     ちょっとぉ~こんなところでエッチなんかしないでよぉ~!

  注意した方がいいのかいけないのか迷いながらも、
  半分興味を持ってしまった私は
  現場がチラッと見えるところまでソロォ~ッッと!

     ゲッ、503号室のSさん! 

  男性の方が勤務病棟の患者さんだったので私は慌ててしまい、
  ポケットに挿していたボールペンを落としてた事にも気付かず階段を下りました。
  当然足音を忍ばせて。

  だって、Sさんの彼女は私の親友のKちゃんなんだもの・・・

  昼食はサラサラ~と食べて、何も見なかったと思いこんで仕事に戻ると
  ちょうどそのSさんの部屋からナースコールが・・・・

     「芽ネギさん、503号室のHさん点滴終わったって!」

  503号室は6人部屋。そして、Sさんのいる部屋でもある。
  努めていつも通りの笑顔で点滴を抜去し、
  いつも通りに部屋を出ようとしたらSさんが私を呼び止めて言ったのです

     「芽ネギさん、このボールペン芽ネギさんのですよね?
      このビーズですぐに解りましたよ。
      なぜか上の方の階段に落ちていましたよ。」

  そう言いながら小さなビーズのアクセサリーの付いた
  私のボールペンを差し出したのです。

  私は顔がカァーーーッと赤くなるのを感じながら受け取ろうとしたら

     Sさん「見たでしょ」

     芽ネギ「入院が長くなって気持ちは解らなくもないけど、
          あんな所ではやらない方がいいよ。危ないからね。」

  そう言ってさっさとその場を去りました。
  その翌日スーパーで買い物をしていたら偶然Kちゃんと出会い、
  一緒に食事をすることになったのです。

  現場を見てしまったことには触れないように気を使いながらの食事。
  何がどんな味だったのか全然覚えていないほど
  何故か私は緊張していた。

  食後のコーヒーを飲んでいる時
  やはり一言言っておいた方がいいと思い思い切って 

     芽ネギ「Sさんから聞いた?
          ごめんねー、見るつもりはなかったのよ」

     Kちゃん「えっ?」

     芽ネギ「いくらデートできないからって病院でエッチするのは
          ちょっと考えモノだよね。危ないしね。」

     Kちゃん「そっ・・・・・そうね・・・・・」

  その後は他愛もない話をして別れました。

  そして、2週間ぐらい経った頃。。

  SさんがKちゃんに振られたという噂が友達同士の中で流れてきた。

  仕事中だったけど、こっそりSさんに聞いてみた。
  すると意外な返事が返ってきた。

     「突然Kがマジで怒った顔をして面会に来て
       『別れましょう』 
      と一言だけ言われた。俺、Kの事はマジだったのに・・・」

  その後Sさんの食欲が落ち、落ち込み方がひどいので、
  Kちゃんにその事を知らせるために電話をしてみた。
  そしたら・・・!!

  Sさんはかなりの【浮気者】だそうで、
  今までも何度か別れ話を持ちかけてきたけど、
  Sさんの押しでここまで付き合ってきたんだって。

  だけど、私が言った「病院でのエッチ」の話を聞いて
  きっぱり別れる事にしたの!と。

  どうやら、踊り場でエッチしていたのは
  Kちゃんではない別の女性らしく・・・

  KちゃんにとってSさんは
  別れた方が良かった相手なのかもしれないけど、
  SさんにとってKちゃんは
  結婚を意識していた大切な存在だった。

  私の一言でこんな結果になってしまったけど、
  今では二人とも素敵な彼女・彼氏を見つけて
  ラブラブ進行中みたいなのでホッとしているこの頃。


  Sさん、Kちゃんが別れの決断をくだす手助け(?)をしたのは
  ・・・・・・実は私です


                                   完







© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: