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最果ての世界
戦場の舞姫。
そこに不釣合いな軽やかな音楽と軽快な手拍子が響く。
その中心で彼女は踊っていました。
曲と同じように軽やかな身のこなしで。
クルクルと回転し、ふわりと宙に舞い、まるで蝶のような。
「さすがは『舞姫』だ」
誰かが恍惚に似た声で告げました。
「そうですね、まさかこんな所で見れるとは」
また他の誰かが嬉しそうに言いました。
「平和になった国でもう一度、見てみたいものだ」
そしてまた違う声が願うように言いました。
「そのために俺たちは戦っているんですよ!」
周りの男たちが声を揃えて言いました。
「みなさん、私の舞いを見てくれてありがとう。
また明日も同じようにこの場所でお会いしましょう」
舞い終わった彼女は、静かに告げました。
その声は少女のように少し高く、しっかりとした美しい声でした。
そして静かに全員の顔を見渡し、笑顔でその場を去りました。
「ふう、さすがに毎日だと疲れるわね」
自分のテントに戻った彼女はそっとため息を零し、呟きました。
「ならなんでこんな所を舞台にしてんのさ?」
暗闇の中から少年のような声がして、彼女に聞きました。
「…私も守りたいものがあるから、かしら?」
少し間を置いて、彼女は答えました。
「ふうん、そんなもんなんだね~…」
少年の声は更に不思議そうに呟きました。
「そんなものよ?」
少し笑いを含んだように彼女はそっと言いました。
「エマの考える事ってよく分かんないもん」
拗ねたように少年の声は彼女を呼びました。
「貴方もその内に分かるわ。ね、そうでしょう?」
エマと呼ばれた彼女は慰めるように諭すように少年の声に語りかけます。
「貴方はまだまだ幼いから。焦る必要なんてないのよ。
私のようにならない選択をして欲しいの。
分かってくれるかしら?私の気持ち。
良い子だから機嫌を直して?トト」
「誰か来るよ?」
足音が聞こえる、トトと呼ばれた少年の声はそう続けました。
その声はエマの前をフワフワと飛ぶ猫の声でした。
「誰かしら。こんな時間に…」
「あの、こんな時間にすみません。お話がしたくて、来たんです。入っても良いですか?」
戦場には似つかわしくないほどの、幼い声。幼い少年の声。
その声の主が、エマにとって珍しい客人でした。
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