Heikの狂暴温泉芸者

Heikの狂暴温泉芸者

四季心中





君の唇が ぼくの 頬に触れて

上気した ぼくの顔を

薫風が拭い去った。

それが春。



蒸し暑い雨が 湿った音をたてて

降り続ける あの部屋で

汗ばんだ 君の乳首を

ぼくが噛んだ。

それが夏。



銀杏並木をバイクで 駆け抜け

ぼくの腰にまわした 君の手が

はしゃいで震えた。

それが秋。



空調のいかれた

凍えるようなエレベーターに

手をつないで乗り 地階へ

あるいは 深海へ・・・

音も無く 下降していった。

それが冬。



そして ふたりには もう

二度と 春が訪れることは ない。









二OO三年四月二十九日

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