ヘンリーの国際関係学

ヘンリーの国際関係学

『構造改革ヘンリー流』




本を読んで泣いた。生まれて初めて。

恋愛小説でも、家族ものでも、お笑いでもない。

『構造改革ブレア流』(藤森克彦著、TBSブリタニカ、2002年)を読んで泣いたのだ。

なんだこいつは?と思うだろうが、まぁ読んで欲しい。
僕は神戸市外国語大学のディスセクのネゴとして、ディスを勤しんできた。幹部なので「実力が無いといけない」というものに囚われ、アーギュメント(以下、Arg)を出さないと評価されなかった世界の中(少なくとも当時はそう思い込んでいた)で、「Argの為のArg」をしようとしていた自分がいた。勿体無いし、もっと有意義にできたと今なら思う。僕は。

ここでちょっと、話を本に戻そう。
本に書いていたことの一つにマニフェストについての説明があった。マニフェストとは「政党や候補者が政策目標や実現への手順、財源、時期などを数値を用いて具体的に示した公約集のこと」で、「政権公約」とも訳される。選挙の2年前から用意され始め、選挙戦で提示された後、政策を巡って政党間の論争がなされる。そして選挙という形で国民が選択をする。政権獲得後も2~3回、国民や関係団体、専門家から意見を聴取し、民意を反映できる形に変更を行い(コンサルティングペーパー、グリーンペーパー、ホワイトペーパーと呼ばれる)、実現に向けて努力する。マニフェストの達成(具体的数値で示される)は次の選挙戦で、投票する政党を決める重要な要素となる。
「政府は国民に対して責任を持って意見を示し、それを国民は自己責任で監視している」という、日本とは違った「成熟した」システムがそこにあった。

1年前の僕なら「これだから日本ってやつは・・・」と言っていただろう。でもそれは間違いだと今の僕は思う。このような政治になっているのは、「日本の政治のせい」ではなく、「僕のせい」なのである。
「おかしいとわかる」「こうした方がいいと考える」「こうあるべきだという提案がある」
・・・なら、なぜ何もしなかったんだろう?
どうすればわからなかったんじゃない。出来なかった訳でもない。
単に、自分がしなかった。それだけのことだ。
誰かのせいにして文句を言うだけの自分の無責任さを恥じて、僕は泣いたのであった。

日本の政治はよくないという文句は聞いても、「だから私はこうした」って話はほとんど聞いたことがない。政治は腐敗しているのではない。我々が腐敗させているのだ。その無関心さ、無責任さ、無行動によって。そんな自分の悪さを認めない「逃げ」によって。これほど言論や思想の自由が許された国に居ながら。

ディスを何のためにやるのか?楽しみのためにやることを僕は否定しないし、僕は今でもそういうものだと捉えている。ただ、政治を遠いもの、変えられないもの、という前提で、遊びや大会の成績の為だけにディスやってしまうのはどうかなぁって思う。政治って、こうして僕が文章を書くこと、友達と喋ること、講演会で話を聞くこと、大人と話をすること、メールを政府の偉いさんに送ってみること、政府になりきってディスをすること…、全部「政治」じゃないのかな?って考えてみるだけで身近になる気がするんだよね。政治が遠いって考えている限り、変えられないままになってしまうんじゃないかなって思う。

ディスでしている事って、とっても大事で面白いことやんね。でも、ディスの為にディスをするんじゃなくて、自分の意見の発表の場にディスを利用してはどうかな?そうした時に、ロジック力・英語力・プレゼン力・マクロな視点・ストラテ…なんてモノの「必要性」って勝手に自覚するだろうし、その為の努力ってとても楽しいもんだと思うのね。「ディスの為」に努力するよりも。しかも結果的に評価されるディスができるでしょ。これって、「遠回りな近道」じゃないかな?理想を高く、ジェットコースターのてっぺんに持っていくだけで僕らは予め敷かれたレールの上も力強く走るみたいに。

遠くない政治を身近にして、色んなことに注意してみようよ。無関心から抜け出そう。そうするとディスを通して、自分が描く日本を語ってみたくなると思う。そうなると、自分の思いや考えを語るために必要だなって納得して、進んでディス力の向上の努力ができると思うよ。

僕は本を読んで泣いた。自分が恥ずかしくなったから。
もう泣かないために、まだ僕はもがくつもりです。
これを読んで、もし、もがきたくなったら、友達や親御さんにちょっと喋ってみたらどうかな?ディスカッションという遊びを通して、日本を変える運動をしてみてはどうかな?

ひとりひとりがちゃんと考えること、それが「構造改革ヘンリー流」です。
未来の自分や子孫たちに誇りを持って残せる日本になれますように。

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