9月の中のもう一本


厳冬のベルギー。アウクスブルク郊外にあるドイツ軍捕虜収容所。ひとりの白人アメリカ人兵士の死体が発見された。犯人として逮捕されたのは、同じアメリカ人捕虜の黒人将校。この事件をめぐって裁判が開かれることになり、イェール大学で法律を学んでいたハート中尉(コリン・ファレル)が被告人の弁護を命じられる。アメリカ人捕虜同士の裁判における陪審員がナチスという茶番劇の中、上官のマクナマラ大佐(ブルース・ウィリス)と激しく対立しながら、一歩ずつ真実に近づいていくハート。大佐の背後で進む脱走計画が浮かびあがった時、運命の評決が訪れる。犯人は誰だ?被害者は何故殺されたのか?脱走計画の行方は?ラストに明かされる、それぞれの理由と選択。想像を超える感動的な結末を、あなたは目撃する。
<あらすじ>
 トーマス・W・ハート(コリン・ファレル)は、イェール大学で法律を学ぶ26歳の青年。1944年、徴兵されてヨーロッパ戦線に送られた彼は、父親が上院議員だったことから中尉の肩書きを与えられ、ベルギーのアメリカ軍司令部で安全な任務についていた。しかし、上官を空挺部隊本部へ送り届ける途中、米兵になりすましたドイツ軍に捉えられた彼は、拷問を受け、連合軍の秘密を白状したことで殺されずに、バルジの戦いで捕虜になった兵士らと共にアウクスブルク郊外のドイツ軍捕虜収容所へ送られる。

 ナチスのビッサー大佐(マーセル・ユーレス)が管理する収容所で、ハートが最初に目にしたもの――それは、ロシア人捕虜たちの公開処刑だった。ドイツ軍の残忍な歓迎のやり方に、憤りと恐怖を覚えるハート。しかしそれよりも彼の注意をひいたのは、処刑された兵士に向って敬礼を捧げるウィリアム・A・マクナマラ大佐(ブルース・ウィリス)の姿だった。マクナマラは、アメリカ人捕虜のリーダーで、ビッサーからも一目置かれる存在だった。さっそく彼のもとで事情聴取を受けたハートは、拷問のことを偽り、マクナマラから「嘘つき」のレッテルを貼られ、一般の兵士と同じCバラックの宿舎に送られる。

 その宿舎の中心人物は、ベッドフォード(コール・ハウザー)という名のメンフィス出身の2等軍曹だった。調達屋をする彼から新しいブーツをプレゼントされたハートは、陽気でタフなベッドフォードに好感を抱く。しかし、まもなくその印象が覆される出来事が起こる。同じCバラックに同居することになった黒人少尉のスコット(テレンス・ハワード)とアーチャー(ヴィセラス・シャノン)に対して、ベッドフォードがあからさまな人種差別の行為に出たのだ。それはエスカレートする一方で、ついにベッドフォードの罠にはめられたアーチャーがナチスに処刑される事態にまで発展する。
だが、事はそれだけではすまなかった。米軍の空襲があった晩、アメリカ人区画にある劇場の裏手でベッドフォードの死体がみつかり、スコットが犯人として逮捕されたのだ。現場に駆けつけたマクナマラは、ビッサーに対して裁判の開催を要求。ハートをスコットの弁護人に指名し、自分にすべてを報告するように命じる。ナチスが陪審員を務める茶番劇の主役に、自分が非力であるがゆえに指名されたことに気づき、歯がゆい思いにかられるハート。しかし、スコットの無実を信じる彼は、情報をよこせと迫るマクナマラと対立しながら、真実を探る道を歩み出す。

 その間も絶え間なくのしかかる、マクナマラのプレッシャー。彼は、なぜこれほどまで自分のシナリオどおりに裁判が進むことを望むのか?自身も若き日にアメリカへ留学し、イェール大学で学んだナチスのビッサー大佐は、アメリカ人捕虜の中に芽生えた対立を楽しむかのようにハートの弁護活動に影で協力する。疑惑にかられながらも調査を進めていったハートは、やがて驚くべき事実をつきとめる。それは、マクナマラを首謀者とするアメリカ人捕虜達が、裁判の最終日<評決の日>に、劇場の地下に掘ったトンネルを通じて脱走する計画だった。計画を知ったハートは、スコットの命の重さを省みず、裁判でナチスを引き付け、脱走劇の隠れ蓑に利用しようとしたマクナマラに激しく詰め寄る。

 同時にベッドフォード殺人事件の犯人と真相を知ったハートに、最後の日は刻一刻と近づく。葛藤にさいなまれ、心を引き裂かれる思いで最終弁論の法廷に立つハート。果たして彼は、どんな決断を下すのか!? そしてハートの下した決断を知った、マクナマラがとった行動は・・・



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