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古き樫の森 本編
近日中にて、かねてより懸案である、
地の宝玉を与える儀式を執り行なうので、
サファイア・クューガー嬢に、伝言をよろしく。
地の精霊より愛を込めて』
はじめに
おや、朝っぱらから、何のメッセージだ。
はて、地の精霊に、お願いしていたかな。と、首を傾げるウイン。
まあ、いいか、相手からくれると言って来るのなら、頂いた方がいいに決まっている。近日中とのことだから、今朝、王様からの至急会いたしの伝言が来ているので、今日中にサフィに話をしておこうか。と、一人考えるウインであった。
それが、サフィたちに取っては、大変な事件へ、知る由もないウインであった。
◇ ◇
確かにドアを開けたアスカ。
何ここは、とつぶやく、どうしたのと、のぞき込むサフィ。腹へったと、立ち止まる二人を押し倒すような勢いで転がるようにして、「黄昏のサラマンダー亭」に入るはずだった三人。
けれど、今居る所は「黄昏のサラマンダー亭」ではなく洞穴。何処をどう見たって、うっすらとほのかな明かりはあるが、土で覆われた洞穴だ。唖然とする三人だった。
やがて、何処からともなく不気味に響く声。
「ようこそ、我が地の棲み家へ。我は大地をつかさどる地の精霊である」
もし、捕まえたならば、地の精霊が持っている宝玉をあげよう。反論も出来ず。呆然とする三人に対して、半ば強引にゲームを開始する地の精霊であった。
まる一日を使ったような感覚と気力を振り絞り、反則スレスレの技を繰り出すサフィ。地の精霊を捕獲しようと、地下に広がる巨大迷路、果敢にチャレンジする。途方にくれるマリス。
開き直って、腹を括り、巨大迷路の一角を、炎の魔法で遮断する。地の精霊の逃げ場をなくす戦略に出た。それが功奏したのか、サフィとマリクに、徐々に追いつめられていく。
「やっと、捕まえた」と、洞窟内に鳴り響き興奮するサフィたち。
捕まえられた地の精霊。意に反して不気味に微笑む。意外に早く捕まえられたと、この事態にホクホク顔でいる。
ケゲンな顔をするサフィとマリク。おや、もう一人、アスカはいずこに、最初に地の精霊に遭遇した時点で目を回しているアスカを発見する。
いやいや、もう少しで、アスカの封印魔法に、閉じ込まれるところであった。と、目を細めている地の精霊。何かヘン。
アスカの自己犠牲的な魔法により、地の精霊は出鼻をくじかれてしまい。一気にゲーム終盤へと進んだ。三人の巧みな連携が、早期、捕獲劇になったようだ。おもむろに、特別に、と、三人に対して、地の魔法を授けよう。なかば強引に申し出をする。
ただで、くれるのならもらっておこうとマリクの一言で決まる。
「ノーム・ディフェンス」は、地の防御魔法である。絶対防御のために、相手の攻撃を防御出来るが、こちらの攻撃も出来ない。最終的な防御魔法であるので、注意して使うようにしよう。「ノーム・クラッシュ」は、地の攻撃魔法である。おもに、地盤を割り敵を落とす魔法であるから、使い道を誤れば、孤立無援の極地を味わう。「ノーム・ボンバー」も地の攻撃魔法であり、たくさんの石や岩が頭上から降り注ぐきわめて危険な魔法だ。
まあ、三つとも、あまり効果的に使えないかもしれないが、持っているに越したことはないから、それぞれ、気をつけて使うことを忠告する。
それぞれ、使い手の適正があるから、心して魔法を使うようにと付け加えた地の精霊である。
そして、サフィには、地の宝玉を与えて、実に楽しげなゲームであった。ウインによろしく、と、満足しながら去っていった。
やっと終わったと、崩れるように座り込む三人であった。
そして、「黄昏のサラマンダー亭」に入った時、あんた達、何その格好は、今まで、何処の砂遊びをしてきたんだい。
店が、ホコリぽっくなるから、いったん外に出て、顔を洗ってきなさい。
ローザから、容赦ない言葉を浴びせられて、僕たちのせいじゃないんだけれどなとぼやきつつ、渋々店を後にする三人であった。
程なくして、豪華な馬車がつき、そのまま、強引に入れられてしまい。
昼食を食べ逃す三人であった。
1章魔法学園「サンツェッペリン」
一、騒 動
いたずら三人組は焦っていた。
まだ見つからないか。次の授業に間に合わないじゃないか。
いったい、何処に逃げ込んだんだ。アラナスは。
二階の渡り廊下を小走りにいくローレン。今回はやりすぎたようだ。苦虫をかんだような顔つきでぼやいている。
そんな思いを逆なでするかのように、アラナスから「炎のペンダントを取り上げたのが、やばかったようだな」など、しきりに文句を言うフォリア。
どちらにせよ。
早く見つけないといけない、もし、アラナスから「炎のペンダント」を取り上げた事が、ジーザス老先生の耳に入ったなら、しばらく、謹慎処分をくってしまうよ。ミシール。
最悪は、今度こそ退学処分になるわよ。前を行くローレンとフォリアに言葉を投げかけた。
そんな折に、魔法道から、一台の豪華な馬車が到着した。
おや、いま時分に、何事だ。
注目するいたずら三人組だった。
二、いたずら三人組の挨拶
おや、豪華な馬車から出てきたのは、アスカじゃないか、やけに慌てているな。続いて見知らぬ男女が降りてきた。
おお、良いことを閃いたぞ。得意げに話すローレン。
まさか、あの二人組にいたずらでもするんじゃないのかと、フォリア。
あたり、考えることは同じなのね。ミシールも続く。
この騒動で、時間稼ぎをして、アラナスを探し出して、かくれんぼを終わりにしないといけない。
あっ、そういや、今日、得優生が一人来るから、朝の授業だけで終わりにして、午後からは、特優生のために歓迎セレモニーが、執り行われると、ニワトリ教師が言っていたな。
でも、あいつらがそうなのか、女の方はまあいいとして、男の方はガキぽく見るからに特優生に見えないけれどな。
ちょうど良い。論より証拠をご覧じろと、アラナスから奪い取った「炎のペンダント」の威力を試そうじゃないか。
先頭を歩いているマリスに向かって、「炎のペンダント」を威勢良く投げつけたローレンだった。
さて、特優生の実力の程を拝見と行きましょうか。フォリア。
騒ぎが大きくなると心配げに、手を組み祈るミシールだった。
これが意外な方向に、発展するとは、いたずら三人組も、標的にされたマリスにも知るよしもない。
神様のいたずらなのだろう。アーメン。
サイは投げられたとおどけているローレンたち。
三、炎のナイフ
矢のように投じた「炎のペンダント」。短剣型をしているから、その鋭さも半端じゃない。
けれど、実践豊富なマリスたち。鼻をあしらうかのように、起用に「炎のペンダント」を受け止めて、投げてきた方向に機敏に投げ返す。
あとは、サフィとアスカで、次の攻撃がこないのかと、気を張る。
「炎のペンダント」から、炎がわき上がり、上で様子を見ているいたずら三人組の方に、よりいっそう炎が過激になりながら戻っていった。
慌てる三人組。
逃げようとしている鼻先をかすめて飛び去った。少し焦げ臭い。髪の毛でも焼いたようだと、叫ぶフォリアとミシール。
炎のペンダントの軌道を見つめているマリクは、焦りの色が見えた。
やばい、大きな声を発して、屋上の上にいる男子生徒に声をかける。
とっさに、見上げる五人。
屋上の上に備え付けている鐘突堂の所で、今にも首を吊ろうとしている生徒の姿が目に入った。
手も足もできない五人達。
一人、念を送っているマリク。
「叶えろ! そのロープを切るんだ!」
見事、念が通じて、「炎のペンダント」は首を吊っている生徒のロープを切断した。
みんなが、ホッとしている時。次の瞬間、くだんの生徒は、思わぬ行為に及んだ。今度は、高さ30メートルもあろうかと、鐘突き堂から、ダイブしてしまった。一難去って、また一難。いたずら三人組は、もう、息絶え絶え状態だ。
けれど、同時に、魔法を紡ぎ出す三人。
サフィ・マリク・アスカたちは、ダテに実戦経験を積んでいないとばかりに、魔法を繰り出す。
その状況を対照的に、ポッかんと、ただ、見つめているばかりのいたずら三人組であった。
落ちていくアラナスに対して、最初に発動したのはサフィの風の魔法だ。
風の精霊の力を借りて、落ちていく落下速度を緩やかにした。
次は、アスカの水の魔法だ。
アラナスが地上に激突しないように、水の幕をを作る。
そして、最後に、マリクの土の魔法で仕上げに入る。
大地に優しく、まるでトランポリンのような、土のクッションを作り上げた。
四、死を望む生徒
中庭の方に落ちていったアラナスを助けようと行ってみる。サフィ・マリク・アスカの面々。
なんと、芝から50センチの所で、目を回りながら器用に浮いていた。
自殺未遂騒動から、呪縛が解けたように、今まで誰も出てこなかった生徒達が、中庭に集まってきた。
その中心で相対しているのが、サフィ・マリク・アスカの三人組と、とんでもない騒ぎを起こしたローレン・フォリア・ミシールのいたずら三人組であった。
そんな中で、冷静に対処したのが宮廷魔導師でもあるアスカであった。
魔導師の先生たちが、わらわらと集まってきた。
「どういうことだ」
「浮いていますね」
「確かに、浮いています」など、しきりに口を揃えて状況を分析をしようとしている。
「もしかしたら、三人の魔法が絡み合ったために、アラナス自身が自己防衛のために魔法を作り出しているかもしれない」と、ベテラン魔導師の話で、納得したようだった。
サフィの風の魔法。マリクの土の魔法。アスカの水の魔法。
それに、アラナスの手に持っている炎のペンダントから発せられる炎の魔法であった。
不思議は尽きないが、救助のために駆けつけてきた白魔導師の癒しの魔法が、
風・水・土・炎の精霊たちに阻まれて受け付けない状態になっていた。
ここは、魔法学園総長でもあるジーザス老の判断を仰ぐしかない。
あと、アラナスの父親であるロワイヤル卿への伝言も、早急に伝えなければいけない。
2章 特優生
一、登 場
アスカは、事務局に問いただした。けれど、ジーザス老は、今しがたウイン・リューガー殿がこられましたので、とるものとらずに慌てて、魔法馬車に乗り込み。すぐ帰るといって、何処かに出て行かれたようでございます。
そんなおり、おもむろに、魔法学園の出入り口付近から、移動魔法の予兆が現れた。
馬のいななきと共に、魔法馬車が校庭に戻ってきた。
今まで、ざわついていた生徒達は、水を打ったように沈黙を守り、ジーザス老とウイン・リューガーの二人を向かい入れた。
もう一人、まだ幼さが残る少年も後に続いて総長室へと、廊下を歩いていると、生徒達からのとまどいの雰囲気と緊張感が、ジーザス老とウインの心を揺さぶる。
何かあったようだな。思案顔のジーザス老。
まだ、浮いているアラナスを造作なく、魔法呪を裁ち切り、白魔導師に託すウイン。
事の発端を話すようにと、神妙な面もちで居るいたずら三人組と、サフィたちも一緒に促された。
ロワイヤル卿への魔法郵便を送るように、指示を出すジーザス老。
そして、関係者を引き連れて、総長室の方へ消えていった。
騒動とは裏腹に、心なしか微笑んでいるジーザス老と、緊張しっぱなしのサフィ達であった。
二、呼び出し
呼び鈴が鳴った。思わず窓を開ける執事。
だが、ガチャンと大きな音が屋敷内に響く。
なんだ。また、ガラスを割ったのか。何時になったら覚えるんだ。愚痴りながら、ロワイヤル卿がお出ましになる前に、そそくさと、手慣れた手つきで割れたガラスの破片を片付ける執事。
また、ガラスを割ってしまったのか、本当に、何時になったら、窓を開けている方から入ってくるんだ。
白いフクロウに小言を言う。アンディ・ロワイヤル卿だ。
執事から、白のフクロウが携えている手紙を受け取り読んでみる。
やや、間をおいて、何だか問題が生じたようだ。と、後からやってきた奥方に、厳しい表情で、ため息をつきながら手紙を渡す。
もう、これで、何回目の呼び出しだ。アラナスには、魔法の才能がないのではないか。幼い頃から魔法の資質があると、ジーザス老から聞いていたが、一向に芽を出さない。むしろ、追いつめられて、自信喪失しているようにすら、見受けられる。
偉大な父、稀代魔導師ジーザスを父に持つアンディ・ロワイヤル卿にとって、自分には、魔法資質が全くなく、仕方なく剣の道に進んだ。
けれど、息子には、周囲からジーザス二世の呼び名も与えられて、夫婦共々、嬉々として喜んだのは何時の頃だったか。周囲の進めもあり、魔法学園に入園したのだが・・・。
だが、もういい。あれから、いろいろな問題やいじめが生じ、辛く悲しい息子の姿を見るに付けて、うつむいている息子に向かって、心を鬼にし
て叱咤激励をしてきた。が、内心は心を痛めているロワイヤル卿でもあった。
意を決したように、魔法学園に行って来る。
馬車の用意をしておけと、執事に命令するロワイヤル卿であった。
一方、手紙をもらい受けた奥方はというと、手紙をじっくり何度でも読み返した。やがて、夫とは裏腹に、晴れ晴れした面もちで、侍女に妹に告げた。
今晩は、パーディーよ。
艶やかなドレスのお披露目をしないといけないわね。
輝くような目から、ハンカチで目頭を押さえた。
ロワイヤル卿とは、まったく正反対の対応をする奥方様の対応に苦慮する執事の姿があった。
三、意外な場所
鼻息も荒く意気込んで魔法学園『サンツェッペリン』に乗り込んできたが、以外に、静けさを保たれ、案内人に通された所は、ロワイヤル卿もまだ一度も足を踏み入れたことのない魔法記念館だった。
ある一室に通されてジーザ老を待つ間。
無念の思いが心中を駆け回る。父ジーザスに何から話そうかと思案をしていた。周囲からの期待されて来た分、この騒動はロワイヤル卿にとっても辛い選択のように感じられる。
魔法の資質がない事で、息子がいじめに遭っている。これからは、文官を目標に、勉学を学ばせるようにジーザス老に進言するつもりでやってき
たロワイヤル卿であった。
ほどなくして、ジーザス老がやってきた。
アラナスの事で、重要なお話があります。
何のことだい、言ってみなさい。と鷹揚に答えるジーザス老。
今回の問題が生じて、もう、これ以上、ここ魔法学園にアラナス置いてやることはできません。苦渋の決断をしました。
おや、言っている意味がわからない。
だから、アラナスには、魔法の資質がないと、はっきり申し上げているのじゃないです。すがりつくように話すロワイヤル卿。
何、おまえは、また、大事なことを読んでいなかったな。
何時になったら、そのそそっかしさは直るんだ。
怪訝な顔をするロワイヤル卿。
まったく、確かに、アラナスは自殺未遂を起こした。が、その騒動の中から、今まで顕在化していなかった魔法の力に目覚めたんだよ。
わかるか、これはおめでたいことなんだ。だから、アラナスを学園から出ていくような馬鹿なまねはしないでおくれ。
お茶をすするジーザス老であった。
それを静かに聞いていたロワイヤル卿は、見る見るうちに顔を硬直して、お父さん。その話は本当の話ですか。うむと、大きくうなずくジーザス老。
そうでしたか、とうとう、アラナスの内に秘めていた魔法力が解放されたんだ。それは良かった。本当に良かった・と、親ばかぶりを発揮する息子をしりめに、現金な奴だと、ジーザス老はそっとつぶやいていた。
四、二人の得優生
「おっ、いいもん持っているじゃないか」と、素早く首にかけているペンダントを取る。
「やめて、そのペンダントはママから誕生日にプレゼントされた大事なものなんだから、返してくれ」慌てて取り戻そうとするアラナス。
「ほう、精霊を封印が出来るの短剣型のペンダントなんだ」
よくこんな高価なものを、落ちこぼれのアラナスが持つものじゃない。
ローレン様が大事に扱ってあげるから、心配しないでいいぞ。
「返して!返してくれ!」と、声を荒げたとたん目を覚ましたアラナス。
おもわず、頭を上げた瞬間。「ガチ!」目から星が出てくるとはこのことである。おもわず額に手で覆うアラナス。
もう一人、隣でうずくまっているマリク。
思いっきりぶつかったよね。大丈夫と、目が笑っているサフィ。
おおイテと額を押さえながら、アラナスに「それにしても、災難だったな」と、話をかけるマリク。
目をしょぼしょぼしながら起きあがるアラナスは、ベットの周りを見渡しながら、アスカ以外は知らない顔で、引きつりながら、あなた達は誰と問いかける。ペンダントがない。
自殺しようと首を吊ったり、飛び降りたりしたのに、まだ生きているだ。とパニクっている様子を、もう一人、我らのウインが居た。
「はいはい」もう大丈夫かな。
炎のペンダントは、これここににあるよ。と、パニクっているアラナスに手果たすウイン。
ジーザス老が入ってきた。
そして、もう一人の主役。幼さが残る例の少年であった。
おもむろに、ジーザス老は宣言する。
特優生は、二人である。かつて、北の将軍の第二婦人サリス・サイファン嬢の忘れ形見である。ユリシス・サイファンである。
もう一人は、おまえ、アラナス・ロワイヤルに決定した。
これより、特優生の認証式を執り行うので、しばらく、この場で待機するようにと、にこやかに二人の特優生に、握手をするジーザス老であった。
まだ、ピンとこないアラナスは、アスカからの花束をもらってはにかんだ面もちで、ある一点を見つめていた。
入ってきたのは、そう父であるロワイヤル卿その人であった。
五、パーティー
認証式は、穏やかに始まり、父であるアンディ・ロワイヤル卿と、何故かその奥方と妹まで参加の華やいだ雰囲気のまま、平穏に終わりを告げた。
今までの境遇の違いと、炎の精霊持ちとなったアラナスへの羨望が、痛いほど視線を感じて、針の上のむしろに座る面もちで、晴れの認証式を迎えたのだった。
渋々顔のロワイヤル卿を先頭に。対照的に微笑んでる奥方と妹、そして、アラナス、ウインたちが先頭の魔導馬車に乗り込んだ。続いての魔導馬車には、サフィ・マリク・アスカ・ユリシスたちが乗り込んだ。
躊躇しているいたずら三人組のローレン・フォリア・ミシールは、顔を見合わせている。しかし、一切合切の事の発端を知らない執事は、ほぼ強引に魔導馬車の中に押し込んだ。
「何で、俺たちまでパーティー会場に連れて行かなくちゃ行けないんだ」愚痴るフォリア。
「そんなこと、知るか!」息巻くローレン。
「お偉い方達の心境には付いていけない」と、嘆くミシール。
ぼつりと、まあ、あの騒動で、『一ヶ月のトイレ掃除』だけに済んで良かったんじゃない。アスカがいたずら三人組に向かって言葉を投げかける。
それぞれが複雑な顔を作る。二台の魔法馬車は、夕闇に煙る王都の中心部へ進む。
夜には、場所をロワイヤル家の城で、華やかな立食パーティーが執り行われた。
主役のアラナス・ロワイヤルと、ユリシス・サイファンの両名であった。
周りに祖父ジーザス老も駆けつけてきた。
サフィ・マリク・アスカも招待を受けた。
当然、ウイン・リューガーもである。
不思議なとこに、問題の張本人でもあるローレン・フォリア・ミシールまでも、招待を受けていた。
まあ、当主であるロワイヤル卿の心の豊かさを見せびらしたかったのかもしれない。
食事の後に、ロワイヤル卿は、アラナスに、二人の護衛を引き合わした。
数日後、入らずの森にある。古き樫の木より、魔導師の杖をもらい受けて、はれて魔導師の照合をもらえる手はずになっている事を、ジーザス老は言った。
その為に、魔導師の杖を取りに行くパーティーが作られた。
メンバーは、魔法学園側から、主役のアラナスとユリシス。アスカ。二人の護衛。あとは、案内役をかって出たウインと、サフィ・マリク。
元ユニコーンのグランと、アトラスとローザ。イダテン。ワンダー卿までもが、メンバーに入りたいと言っていたが、魔法が主体になるために泣く泣く辞退することになった。
だか、次の冒険にはメンバーに入れるように、ウインに釘を差すことは忘れなかった。ローザであった。
3章 エルフの森
一、襲 撃
報告します。北の決壊が破られてしまい。今、魔物たちが北の砦に向かって進軍しています。
何、それはまことか、最近、魔族の動きが活発だと思っていたら、誰かに操られているようだな。まさか、北の黒魔導師かもしれないと、愚痴るラブカーナ部隊長であった。
どうします。このままだと、今の守備兵では、北の砦が持たなくなりますよ。
当然、援軍を送る手はずだ。ザーリン。
さて、どうしたものか。
ザリーン・マリアは、私ラブカーナに続け、後は、任せた。
東の砦から、報告が入っています。
何、本体は東か!
どうされます。ラブカーナ。
東は、スザンヌ・マーガリン・オータムに任せた。
まだ、敵の状況がつかめていない。
北だと、エルフの砦を制圧するだけだし、東には、水の神殿と古き樫の森がある。さて、敵は、どちらをメインに攻めてくるのだろうか。
とにかく、手はず通りに敵からエルフの森を守り抜くんだ。
分かったな。
皆それぞれに、志気を高めて、北の砦と、東のあずま屋に散っていった。
明日の幸せをつかみ取るために。
二、東のあずま屋
間に合った。まだ敵は、結界を破っていない。
ねえ、マーガリン。何か変なニオイしない。
そういや、イヤなニオイがあたりを立ち込めているよね。
今回の結界破りの件に、深く絡んでいる匂いがする。
東のあずま屋ふきんに、躍り込んできたスザンヌ・マーガリン・オータム達だ。
その瞬間。大音響と共に、結界が破られ、魔族が怒濤のごとく押し寄せてきた。ただ、呆然と見ているだけのスザンヌ達だった。
その一方、当のあずま屋から、移動魔法の気配がする。一体なんだ。
「戦いの最中で、よそ見をすることは、死を意味すると、ラブカーナからおそわなかったか。スザンヌ」意外な声が、近くで聞こえた。ウイン・リューガーだ。言うか言わぬか、ウインの大業が魔族に向かって炸裂した。
風の魔法「かまいたち」である。かなりの魔族が切れ味鋭いかまいたちの切り刻み血祭りになっていく。形勢逆転であった。
おお、とトキの声。
気がゆるんだのか、サフィも風の魔法を繰り出し、マリクも炎の魔法で魔族達をローフとビーフにした。アスカも飛び出した時、周りからアラナスとユリシス達へ魔族が切り込んできた。
棒立ちのアラナスとユリシスを守るように魔族たちをたたっ切る二人の護衛。ロワイヤル卿が推薦しただけの働きをする二人。
ウインも髪手裏剣を駆使して、魔物に放つ。エルフのスザンヌ・マーガリンも、正確に魔物達を射止めた。
だが、一瞬の隙をつかれて、アラナスたちに危機を防ぐために素早く行動した護衛たちは、魔族に倒されてしまった。
アラナスの絶対防御魔法が発動する瞬間の出来事であった。
加えて、アスカの地の魔法、ノーム・クラッシュが見事に決まり、アラナスの防御魔法以外の空間は瓦礫とかした。全く危ない地の魔法であった。
あった。オータムがイヤな臭いの香炉を矢で射抜いた。結界付近充満していたイヤな臭いが薄れるあたりから、魔物たちは徐々に引いていき、二人の犠牲を払ったが、東のあずま屋地域は守られた。
ただ、一人、呆然としているアスカの姿があった。
古典魔法の一つ。魔物を呼び寄せる事に使う。もっとも、シンプルでやっかいな黒魔法だ。イヤな戦いになるな。と、愚痴るウインだった。
三、犠 牲
瞬間移動から抜けて、体がふらついている時に、魔族からの攻撃があって、恐慌しているアラナスとユリシス。体を張った二人の護衛。
まだ息がある内に、アラナス様と、ユリシス様を、これからの旅で、守れ
なくて残念であるます。と言い残して逝った。
泣き崩れるアラナスとユリシス。
戦いは犠牲が付きもの、二人の死を無駄にせずに、逞しく生き抜いてくれないかと、諭すウイン。
ただ、うなずくアラナス。まだ泣いているユリシスを抱きかかえるようにしてはげます。
二人の死を肝に銘じて、大魔導師になってくれないか。自信をも手とは言わない。けれど、これから、いろいろな戦いがあるから、生き抜く為の手だてを考えていこうじゃないか。経験か力になるから。真摯に受け止めるアラナス達だった。ウイン、たまには、良いことを言うとちゃかすスザンヌ。
そして、砦の方が気になるとエルフの三人は、引き返していった。
二人の護衛を水葬にして、安らかな瞑俯の旅が迎えるようにと、ウイン達一同祈りを捧げ。エルフの森の長い一日を終えた。
東のあずま屋の戦いは、何だか中途半端のように考える。
朝靄がはれた頃、戻ってきたエルフの民。スザンヌ・マーガリン・オータム達であった。
北の砦の方は、ラブカーナが行った時点では、もうすでに、撤退を始めており、肩すかしを食らったようだと。言っていたわ。
あとは、考えられるのは、水の神殿と古き樫の森のどちらかかな。
ラブカーナは、古き樫の森を守ると言っていたから、私たち三人は、水の神殿に行くから、ご一緒しない。
まあ、今回の旅は、魔導師の杖を譲り受ける事が、最大の目標なので、護衛二人を欠いた状態では、何時敵が襲ってきても、守りで手薄になるから、人数が多いに越したことがない。
エルフ側とウイン側で、共同戦線を張って行くことが決まり、お互いに、つかの間の一息を付いていた。
4章、水の神殿
その一
なんか変だわね。やけに、森が静かすぎるわ。スザンヌが答える。
この分だと、敵さんの本命は水の神殿あたりかもしれない。陽気に答えるマーガリン。
では、水路にして正解だったわね。オータムが答える。
敵は、水の精霊玉かもしれない。
サフィの持っている水の精霊玉じゃないのかな。と疑問を述べるマリク。
いやいや、もしかしたら、本当の『水の精玉』じゃないかもしれない。
改まって、スザンヌは、ウインに、時につかぬ事を訊きます。
「ウイン殿は、今回の戦いで魔法をどれだけ使いました」
「精霊玉一つと、昨日の風の魔法かまいたちだけだよ。まあ、一晩眠りについたから、今日は、3つの魔法は使えるからね。心配しないでほしい」
そうでしたか、それは心強いお言葉ばですね。と微笑み返すスザンヌであった。ラブカーナからの助言かな。
なるべくなら、大業の魔法は極力控えたいものだな。
このまま、歳を取りたいのでね。
そうそう、アスカ、今度は、味方に向かって、ノーム・クラッシュは極力しないようにしよう。あの時は、アラナスの絶対防御魔法が発動していたから、事なきをおえたが、あれは、使い道を誤れば、大変なことになるからね。
神妙な面もちで、うなずくアスカであった。かなり気にしていたようだ。
その二
ようやく到着した水の神殿だ。なにやら異様な気配が漂う。
最初の手はず通りに、アラナスとユリシスは、後方支援で、アスカは二人の坊やを任せたわよ。
ウインは思いっきりここ一番の時に大業の魔法を使ってください。
サフィは、ウインの護衛に回って、マリクは魔導の剣で暴れてください。
私たち三人は、弓と剣でマリクのじゃまにならない程度に戦うからね。
水の神殿に佇むウイン一行。周りには、ダークマーマリンたちがうごめく。
この状況だと、作戦も減ったくれもないな。
そんな中で、二人のダークマーマリンもどきが進み出てきた。
どこか出会った気がする魔族の出現に、アラナスは顔色を変える。
昨日、戦死した二人の護衛だ。と叫ぶ。
水葬にした護衛達を魔族に変えた黒魔導師の存在が明らかになった。
二人とも達人だったために、手厳しい戦いになる。マリクは右ね。スザンヌとマーガリンは左をお相手してと、オータムが指示を出した。
ウインとサフィは、水の神殿をお願い。
心得たとばかりに、素早く動くマリクたち。
オータムは黒魔導師を探してと、スザンヌは告げてマーガリンと共に、ダーク・マーマリンもどきに、戦いを挑む。一進一退の攻防であった。
だが、相手は魔族。こちらは、生身の人間。徐々に体力が消耗してくる中で、頑張るマリクとスザンヌとマーガリンたち。
そんな中で、冷静に大きな魔法の詠唱を唱えていたウイン。
「風よ。水よ。炎よ。土よ。精霊達よ。我に力を与えよ。
天にいずる光の精霊よ。今、我のに力を与えよ。
光の精霊よ。黒に染まったもの達に命の息吹をえんと欲する」
一瞬、暗闇に囲まれた水の神殿の前の広場。無数の光のシャワーとなって、水の神殿を覆い尽くした。
果敢に戦っていたダーク・マーマリンもどきたちも戦いどころの話じゃない。そんな中で、うごめく黒い影。集中して、黒魔導師の気配をおっていたオータムの矢は、見事に黒魔導師の印を貫いた。
その三
このスキに乗じて、水の神殿の中に進むサフィとマリク。
水の精霊を助けるために、危険をかいりみず進む二人とユリシスも神殿の中に入る。
真っ暗な中、ほのかな明かりを照らすユリシス。
「敵は来ないね」
「たぶん、大方のダークマーマリン達は、ウインの光のシャワーに当てられて、水の神殿を守護をする使命を気が付いているのじゃないか」
「それにしても、サフィはね迷わずに、神殿の奥にいけるね」
「だって、この前一度ここを訪れているから、それなりに分かるよ」
ややあって、水のの神殿の玉座の間に入った三人。
水の精霊の気配がすれ度、分からないと嘆く、サフィとマリク。
それに対して、地道に探っているユリシス。
ややあって、ここだ。と指を指す。
破壊はお手の物と魔法の剣を抜き、ユリシスが示したところを、切り裂くマリク。
どこからともなく聞こえる声の主。ありがとうといっているようだと、話すユリシス。おや、精霊と言葉が交わせるのかと訪ねるサフィ。
うなずく、ユリシス。
程なく、力が蘇った水の精霊が、3人の前に姿を現した。
本当に、ありがとう。
危うく、消滅する所だったと話す。水の精霊。
感謝の気持ちとして、受け取ってほしい。『水の雫』をサフィに与えた。
これで、サフィは『風の宝玉』と『水の雫』の二つをいただいた事になる。
これも、ユリシスの精霊を見つける力があってこその話。
それぞれに、適材適所。お互いの役割分担がわかっていることが、問題解決の糸口になったことになるよね。と、言葉を紡ぐサフィだった。
ウインに、報告しなきゃと、出口に向かう三人であった。
5章、古き樫の森
一、護衛たちの居場所
任務完了と高らかに告げるスザンヌ。
いったん、エルフの長老に、話をするために戻る。
ウイン達一行が求めてきた樫の小枝だ。
何故か、死んだはずの二人の護衛が蘇生していて、どのようにするかとをエルフの長老に問うこともあり、ウインたちから離れるスザンヌ達であった。
というのも、ダーク・マーマリンに変えられていたことから、両手・両足に
水かきのようなものが残り、人間社会では、生活することは無理とウインに告げらて、どとうに迷う二人。
何処に住まうかを話し合った経緯から、東のあずま屋で住み、迷い込む人間を保護したり、新たな敵の守備隊に編入することと、話し合いを重ねてスザンヌ達から、エルフの長老に進言することとなった。
あと、樫の小枝アつもよろしくと、付け加えるウイン。
笑顔で答えるスザンヌたち。
なついで居た二人の坊やたちは、それなりにすがすがしい目をしながら、手を振ってしばしの別れを惜しむ。
この戦いで、生きる事、自信、信頼と、色々な事を学んだように感じる。
難関の樫の小枝が手に入りそうなので、心も軽やかに感じている。ウイ
ン達だった。
二、古き樫にて
立ちはだかるラブカーナ。私の目は節穴じゃなくてよ。
矢継ぎ早に、ウイン達に向かって、容赦なく矢を射る。まるで鬼神のようだ。
その姿に感動するマリクやサフィ。
ウインの頭の上をかすめるように通り過ぎた矢は、背後に居た黒魔導師に刺さった。
ようやく、危険が去ったのか、ややあって、微笑みを送るラブカーナ。
いやいや、手痛いしっぺ返しを食らったと、神妙な面もちで返すウイン。
二人に何かあったのか。感じとるサフィとアスカたち。
スザンヌから聞いていてよ。護衛としてはすぐれていても、エルフの森に住むには、まだまだ、修行が足りないね。
手厳しい注文を付けるラブカーナだ。
緊張しまくりのスザンヌ達3人のエルフ。
振り向いて、お久しぶりじゃない。ウインとサフィ。と、砕けた表情で話をするエルフの戦士。
「ラブカーナさんは、いつ見ても凛々しく、男勝りでいて、愛らしい仕草にうっとりします」と、賞賛の意を話すサフィ。
優雅に、エルフ族の儀礼の挨拶をし、ウインに向かって、厳かに、「ようこそ、エルフ一族の聖地に踏み入れることを、エルフの皆の元に誓い、古き樫の森に入ることを許します。エルフ一族、長老代理。ラブカーナはここに宣言する」
うやうやしく、一礼をして、応えるウインとその他の一同であった。
颯爽と自らウイン達の案内をするラブカーナ。
後をしおらしく続くウインとその一行。
ややあって、一本の古びた樫の木の前にたった一同。
一礼をして、樫の木の小枝を素早く切り落とすウイン。
そして、譲り受ける4人を前にして、古文書を読み上げるラブカーナ。
まず一本は、アラナス・ロライヤル。
続きて、ユリシス・サイファン。
続いて、アスカ・オンワード。
最後の一本は、マリク・グランドール。
三人のエルフの民の見つめる中、魔導師の杖の贈呈式は終わった。
あとは、樫の小枝が、本当の実力を持った魔導師がどうかの試練が待っているからね。気を付けて対処するようにと、お言葉をいただいた4人であった。
三、試 練
おや、またか、ただで単に貰えるんじゃなかったんだと、マリクは言う。
試練と言ったって、どんなことをするのだろうか?
見当が付かない。と不安げなアラナスとユリシスたち。
やって見なければ始まらないと、言うアスカ。
サフィのように、杖の頭に輝くようなものがあるといいな。と思いを口にするアラナス。
あら、アラナスには、もうすでに、炎のペンダントがあるじゃないかと、指さすサフィ。
ああそうかと、炎のペンダントを杖の頭に差し込むと、どうしたことか、スムーズに炎のペンダントが杖に刺さっていった。
側にいたラブカーナが、あら早くも試練が終わったようね。
おめでとう。アラナス・ロワイヤル。
そして、祝福のキスをラブカーナからもらい。赤面するアラナスであった。
ええ、そんな簡単なことで、試練は終了するのかと、マリクは聞き返す。
そういや、水の精霊から『水の雫』を貰ったから、「水の宝玉」を、アスカにあげるは、あなた、確か水の魔法が得意だったわね。
ありがとうと言ってなにげに受け取るアスカ。
そのまま、杖の上に置いてみると、見事に融合した。
二人目のの魔導師の誕生だ。ええ、びっくりのアスカだった。
そんなに早く試練が終わるのかと、焦るマリクとユリシス。
まあ、気長に待っていたら、そのうちに試練が見つかるかもしれないわよ。
気休めはよしてくれとマリクはふくれる。
ああ、そういや、この前の北の出城での戦いで、赤い玉のようなものを拾ったから、ユリシスにあげるわ。とアスカが言う。
もしやと思い。杖の上に乗せてみると、これまた同じく、うまく融合して、杖の上に落ち着いた。何だろう、暖かな気持ちに包まれているようだ。
落ちてたところは、あなたのお母さんが亡くなった部屋で見つかったものよ。
もしかしたら、お母さんからの贈り物かもしれないわね。もしくは、形見かな。
大切にしてあげてね。アスカはユリシスに言った。
残るはマリク一人だけである。
焦るマリク。俺にあるものと言えば、この魔法の剣だけ、まさか、魔法の剣が、杖に融合するはずがない。
だめ元でやってみたらどうと、ラブカーナから進められて、魔法の剣に近づけていくと、どうでしょう。剣の柄の部分が融合して、剣と杖の合作になってしまった。デタラメだと叫ぶ。マリクであった。
そり光景を間近で見ているウインであり、和む一時でもあった。
日が陰りそうになり『古き樫の森』を後にするウイン達一行。
手を振るラブカーナやスザンヌ達。
一路、東のあずま屋に向かうウイン達であった。
四、それぞれの朝
護衛だった二人を東のあずま屋に残して、再び王都にたち戻ったウイン達。
いろいろな事があり、よく無事に帰ってきたと安堵するサフィ。
早速、アスカとラアナス・ユリシスは、魔法学園へ。シーザス老にこの度の一見を報告に帰っていった。
サフィは、帰って早々に、ばったり、ローザに会い。後日、語り尽くせない一連の魔族達に対しての戦いやダーク・マーマリンもどきとなった護
衛達との格闘などを、留守を預かってもらったアトラスとローザたちに話す約束をしてしまったサフィであった。
朝、爽快に目覚めたマリク。
やっぱり、ベットが良いやと、少し寝坊のマリクに『何時まで寝ているの』と、手厳しい声が耳の近くで鳴り響いた。何事が起きたんだ。
起きあがるマリク。目と目が合う。あれ、ここは何処、エルフの森じゃないはずだぞ。
でも、仁王立ちをしている姿は、エルフの戦士。ラブカーナその人じゃないか。
居間に来てみると、サフィもびっくり顔で合図する二人。
何をこそこそしているのと、くだんのラブカーナ。
えっ、あれ、どうしてここにいるの。疑問をぶつけてみる二人。
あれ、ウインから聞いていなかった。
横に首を振る二人。
まったく、ウインはと・・・・のラブカーナであった。
今回の騒動で、何かが狂っているようだから、エルフの長老からのお達しがあり、世界を調査するための拠点として、しばらく、ここに居候する事になったのよ。
そんなことで、よろしく。サフィとマリク。
そういや、もうじきアスカも来るわね。
あとは、アラナスとユリシスにも会いたいわ。
威勢良くドアが開かれた先には、アスカのびっくりする顔と声が部屋中にこだまする。はてさて、先が思いやれる一コマであった。
グラン、お久ぷり、元気していた。つづく
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