育てているのは未来です

育てているのは未来です

桑原の蛇騒動


 それがなかなか見つからなくて困っていたところに、私たちの仲人をしてくださったクリスチャンの医師ご夫妻から、「家を建てるために買った桑原町の空き地(150坪)を貸してあげよう」といっていただきました。3年間の期限付きでしたが、早速、そこに20坪のプレハブを建てて保育所を移転しました。山越の子どももそのまま来てくれたので、その後、何年かは送迎をしました。園児の数は、新しく来てくれるようになった桑原周辺の子どもと、私の長女、そして1歳にならない次女を入れ全員で15名くらいだったと思います。

 プレハブは、地面に杭を打ち込みそれを土台に組み立ててありました。ベニヤ板の床下を風が通り抜け、冬の夜は外気と変わらない温度まで冷え込みましたが、その中で8畳をベニヤ板で仕切って親子4人が暮らしました。風呂は、山越のドラム缶風呂から少し進化して、住宅機器の販売をしている友人から安く分けてもらったホーローバスになっていましたが、相変わらず小さなガス瞬間湯沸かし器で給湯するので、準備時間や、どんどん冷めていく状況はかわっていませんでした。自宅部分には押入れがないので、使わない布団を部屋の隅に積んでいたら、その中に野ネズミが子どもを生んでいました。野ネズミも同居の桑原ひかり保育所時代です。

 そのころの忘れられないエピソードがあります。当時、あゆみ学園時代に知り合った保育士のMさんに手伝ってもらって3人で仕事をしていましたが、その人が山越に住んでいたので朝夕の子どもの送迎と一緒に家まで送り迎えをしていました。送迎のために買った車は、ホンダの中古軽自動車です。エアコンなどはよっぽどの高級車でなくてはついていない時代でしたから、夏は車内の温度が上がらないようにと園庭にドアを全開にして置いていました。
 夏の夕方、いつものように何人かの子を後部座席に乗せ、助手席に子どもを抱いたMさんを乗せて出発しました。桑原から15分くらい走って国道に出たとき、隣のMさんが「ギャー!!」と叫び声をあげました。車は、前後を他の車に挟まれる形で国道を走行中なので急停車することはできません。真っ青になったMさんを横目に見ながら、しばらく走ってから道端に車をとめました。そのとたん、子どもを抱いたMさんはドアを蹴破るように開けて外にとびだしました。「え?」とたずねると、無言でダッシュボードの下あたりを指差しています。なんとそこには一匹のシマヘビがブランと頭をぶら下げてこちらを見ていたのです。これでは、Mさんの絶叫も無理はありません。

 後部座席からは、子どもたちが「なに?」と不安気にのぞきこみます。当時、子ども番組でパクちゃんというヘビのキャラクタが人気でしたので、「パクちゃんが乗っとるみたい」と答えておいて、拾ってきた棒切れで外に出そうと試みました。しかし、つつかれたヘビは完全にダッシュボードの裏に入り込んで姿が見えなくなってしまいました。Mさんは乗ってくれないだろうし、私も運転中にヘビが出てくるは嫌なので、なんとかしなきゃ・・・とあせりました。そこでM先生に後を頼み、近くの薬屋に行ってスプレー殺虫剤を買ってきました。子どもたちを降ろしたあと、ヘビの潜んでいそうなあたりに殺虫スプレーの連続噴射!
しばらくすると、酔っ払ったようにヘビがダランと頭を出し、開いたドアからクネクネと外に出て行きました。あ~よかった。運転中にいきなり「ブラン!」は恐怖なので、その後は園の空き地に車を停める時にはドアを閉めるようになりました。

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