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カテゴリ: 楽器
数日前、近所の楽器屋さんに行ったときの事だ。
リードを紙やすりで削って音を鳴らしやすくしようと思ったら、
丁度良く削る事が出来なくて擦れた音しか出なくなってしまったので、
新しく一箱購入する事にした。

店に入ると、奥のほうに一人のおじいさんがいた。
私が入ってきたのに気づいたおじいさんは、
「いらっしゃい」
と、穏やかな声で言った。

「クラリネットのリードください」

するとおじいさんは、
「留守番なもんで、よくわからないんだけど、リードはこれかな?」
と、レジ近くの引き出しに張られたラベルを見ながら、クラリネットの文字を探した。
「いろいろあるけど、全部同じ値段だね。何番がいいのかな?」
そう聞かれて私は、独り言のように呟いた。
「2番にしようか、3番にしようか迷ってるんですよね」
私は、何番を買おうか店に入ってからも決めかねていた。
「2番の方が薄いんですよ。でも、削ったりするから3番の方がいいかなとも思うんですよね」
私の言葉を聞いたおじいさんは、にこりと笑ってこう言ったのだ。
「若いんだから、3番で元気良く吹いちゃってください!」
おじいさんの励ますようなアドバイスに、私はすっかり気持ちが和んでしまった。

そう言って、私は3番を買う決心が付いたのだった。

レジを打とうとしたおじいさんに、難関が待ち受けていた。
おじいさんは、定価に税を加える打ち方がわからなかったのだ。
いろんなキーを打っては試しにレシートを出していたので、失敗したレシートが長くレジから垂れ下がった。
私はレシートは必要なかったので、税込み価格を引き出しのラベルで確かめて、

と言った。
おじいさんは、
「そう? ごめんなさいね。でも、これ(失敗レシート)持ってく? 今度、聞いておくからね。お宅、近いの? そう。だったら、また来てくださいね。コーヒーあったら入れるんだけど、ないから……」
と、愛想良く私に告げた。

スーパーの味気ない買い物に慣らされていた私は、こんな会話の出来るお店がたくさんあればいいのにな、と思いながら店を出た。
それから数十メートル歩いたところで、ふとリードの箱を見ると、そこに記された数字は「2」だった。
私は、「あちゃー」と思いながら再び店を訪れて、
「ごめんなさい、2番もらっちゃったから、3番に取り替えてください」
と、おじいさんに言った。
すると、おじいさんはすぐに引き出しから3番を取り出し、
「これが3番だね。はい。また来てくださいね。コーヒー、あったら入れるんだけど……なくて、ごめんなさいね」
と、再び言いながら、私を店の奥から見送ってくれた。

ほんの数分間の出来事だったのだが、楽しい気分になれたひとときだった。






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最終更新日  November 26, 2005 12:15:44 AM
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