『とんとこひ・セクスアリテ』
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何のその百万石も笹の露 稲の穂や天智天皇袖の上 天皇の袖に一房稲穂哉 天皇のたてしけぶりや五月雨 我菊や形りにも振にも構はずに 我形りをうさんと見てや鹿の鳴 僧正が野糞遊ばす日傘哉 僧正の頭の上や蠅つるむ ざんぶりと一雨浴びて蝉の声 地車におつぴしがれし菫哉 福 ものさばり出たり桃の花 草蔭にぶつくさぬかす蛙哉 五月雨におつぴしげたる住居哉 散る花を屁とも思はぬ御 哉 盛任がしやつ面たたくあられ哉 おれよりもはるか上手ぞ放屁虫 露ちるやむさい此世に用なしと 虫の屁を指して笑ひ仏かな べら坊に日の永い哉あつい哉 ながの日をくふやくハずや池の亀 菜もゆだる湯の桶口や春の雨 あばら骨なでじとすれど夜寒哉 初雪やこきつかはるる立仏 どさどさと木曽茶煎りけり秋の雨 我宿の貧乏神も御供せよ 行年や何をいぢむぢゆふ千鳥 乞食袋首にかけて小風呂敷背 下々も下々下々の下国の涼しさよ 穢太町に見おとされたる幟哉(享和三年、小林一茶四十一歳) 穢多町も夜よはうつくしき砧きぬた哉(文化元年、四十二歳) エタ寺の桜まじまじ咲きにけり(文化七年、四十八歳) 涼しさに夜よはエタ村でなかりけり 隠坊花の表に立りけり(文化七年、四十八歳) ヱタ村や山時鳥ほととぎす(文化八年、四十九歳) 隠坊のむつきほしたり蓮の花(文化十一年、五十二歳) 隠坊が門をそよそよ青柳ぞ(文化十三年、五十四歳) くわうくわうと穢多が家尻の清水哉(文化十三年、五十四歳) 番丁やもやひ番屋の小夜時雨(文化十三年、五十四歳) 思ふさま蚊に騒がせる番屋哉(文政三年、五十八歳) 穢多らが家の尻より蓮の花(文政五年、六十歳) 霜がれや番屋に蚤うせ薬(文政五年、六十歳) 大江戸や辻の番太も夷講(文政六年、六十一歳) 正月や店を飾れる番太良(文政六年、六十一歳) 朝々の朝茶のために花植えて 今や非人の鶯のなく(文政八年、六十三歳) 現在ですら、この国ではマスコミはじめ、「菊の御紋、鶴の羽根、部落と、この三つはタブーになっていますから--- ---」という時代であるのに、徳川封建期に、穢多・非人の俳句を作ったばかりでなく、その文章まで書きつけている一茶、というこの人間の、その人間性をわれわれは見過してはならない、と思うこと切である。 『百舌ばっつけの青春---乞食首領一茶と私---』(酒井真右/著 昭四八)より
June 15, 2008
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