適度な昼寝が認知症リスクを激減させる!
仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。徹夜をすると、ボーッとしてうまく頭が回らない ― 。それは決して気のせいではないようだ。睡眠不足は脳の働きに大きな影響を与える。
「 睡眠不足の日が何日か続くと、明らかに記憶力や認知能力が衰える ことが分かっています」と、 RESM 新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック(横浜市港北区)の白濱龍太郎院長は話す。
しっかり眠っている人は記憶力が高い
特に記憶力をキープする上で睡眠は大切だ。
一夜漬けでテストを受ける場合、完全な徹夜(完徹)はいけないという話をよく聞く。
「 記憶してからいったん眠ることで記憶が定着するので、ずっと起きているよりも、間に睡眠を挟んだほうが覚えている率が高くなります 」と白濱院長。寝る間を惜しんで英単語を覚えても、忘れてしまえば意味がない。それより、少しでも眠ったほうがいい。
「記憶を司るのは脳の海馬という部分ですが、 睡眠時間が少ない子供はこの海馬の体積が小さくなっている 。成人を対象にした研究でも、しっかり睡眠時間を取っている人のほうが記憶力が高いというデータが出ています」(白濱院長)
米国で 120 人の高校生を対象に、「睡眠時間と成績の関係」を調べた研究もある。
それによると、 睡眠時間が 7 時間半くらいと長く、就寝する時刻が 10 時半ごろと早い生徒ほど成績が良かった (下グラフ参照)。デキる生徒は早くベッドに入り、たっぷりと眠っている。睡眠時間を削って勉強するのはつらいだけでなく、効率も悪いということになる。
睡眠時間が長く、就寝時刻が早い生徒ほど成績がいい
それは若者に限った話ではない。記憶力や判断力を高め、仕事のパフォーマンスを上げるためにも、しっかり睡眠を取ることは大切なのだ。
記憶力が落ちるだけではない。恐ろしいことに、「 慢性的な睡眠不足は将来の認知症にもつながる 」と白濱院長は警告する。
厚生労働省の推計によると、 2012 年の時点で認知症患者は約 462 万人いて、 65 歳以上の高齢者の 15 %を占める。 2025 年には 700 万人に達すると予想されている。
認知症には「脳血管性認知症」や「レビー小体型認知症」などもあるが、圧倒的に多いのは アルツハイマー病 だ。これは 「 β (ベータ)アミロイド」(アミロイドベータ)というたんぱく質が脳にたまって、脳の神経細胞を破壊することで起こる 。
今のところ、なぜ β アミロイドがたまるのかは分かっていない。そのため、アルツハイマー病の確実な治療法もないとされてきた。
しかし、予防する方法がまったくないわけではない。
「たまった β アミロイドは睡眠中に処理されます。年をとるとメラトニンというホルモンの分泌が減り、眠りが浅くなるため、 β アミロイドがたまりやすくなる。 日中に増えた β アミロイドを消すためには 6 時間半以上の睡眠が必要 です」(白濱院長)
それ以下しか眠らない日が続くと、たまった β アミロイドを処理しきれない。返せない借金のように、どんどん β アミロイドが増えていき、アルツハイマー病を発症する危険性が高まるというわけだ。
実際、「 睡眠時間が短い人はアルツハイマー病の発症率が高い ことが分かっている」と白濱院長。 2015 年には、脳内に β アミロイドが増えると睡眠の質が悪くなり、さらに β アミロイドがたまりやすくなる悪循環を引き起こすことを示唆する研究結果も発表されている (Nat Neurosci. 2015 Jul;18(7):1051-7) 。
睡眠不足でたまる脳内物質が記憶力減退の正体だった
適度な昼寝が認知症リスクを激減させる!
30 分程度の昼寝で発症リスクは 5 分の 1 に!
とはいえ、激務に追われるビジネスパーソンには「 6 時間半の睡眠」をコンスタントに取るのが難しい人も少なくないだろう。
そういう人は、わずかな空き時間を見つけて「昼寝」で補おう。この連載でも何度か取り上げたように、 10 分か 20 分の昼寝で脳の疲れは想像以上に取れる。
昼寝にはアルツハイマー病の予防効果があることも確認されている。国立精神・神経医療研究センターの調査によれば、 「 30 分程度の定期的な昼寝」の習慣はアルツハイマー病のリスクを 20 %にまで減らす という。
ただし、 1 時間以上の長い昼寝は逆効果 だ。
「アルツハイマー病の患者は 3 時間くらい昼寝している人が多い。たくさん眠ればそれだけ β アミロイドが減りそうな気もしますが、おそらく長時間の昼寝は夜の睡眠に悪影響を及ぼすのでしょう」と白濱院長は推測する。
基本は毎日 6 時間半以上眠ること。睡眠不足のときは短時間の昼寝で補う。バリバリ仕事をするとともに、将来のアルツハイマー病を防ぐためにも、しっかり睡眠を取ることを心がけてもらいたい。
白濱龍太郎(しらはま
りゅうたろう)さん
RESM
(リズム)新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長
筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院勤務を経て、 2013 年より現職。日本睡眠学会認定医。丸八真綿研究センター所長。著書に『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』(アスコム)、『図解 睡眠時無呼吸症候群を治す! 最新治療と正しい知識』(日東書院本社)など。
日経新聞より
コメント;
昨年の 10 月から更新していませんが、読者数はあまり減らずに推移しているので、閉鎖もしないで
今日まで来てしまいました。
年も改まって、もう 1 月下旬です。
自分のまとめたものを書きたいのですが、なかなか簡単にはできません。
本当に、作家は優れた才能の持ち主だと思います。
昨日、東京で開催された NOVARTIS NEURO SCIENSE FORUM に出席してきました。
神経内科で代表的な疾患であるアルツハイマー病 (AD) 、パーキンソン病 (PD) 、多発性硬化症 (MS) 、重症筋無力症 (MG) のテーマの研究会でした。
アルツハイマー病、パーキンソン病は、進行予防には運動・リハビリが大事で、睡眠の質も大切であることは
上記の内容からも理解されるかと思われます。新型コロナウイルス感染症まとめ(QA) Jul 29, 2020
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