糖尿病ニュース!






 ◆発症確率を算出 治療へ自覚促す

 東京都内に住むAさん(38)は、糖尿病と診断されて3年目。何度、指導されて
も食事制限が守れず、じりじりと血糖値は悪化していた。業を煮やした担当医が、新
しく開発された「糖尿病リスク・シミュレーション・ソフト」に、Aさんの検査デー
タを入力、「このままでは、網膜症になる確率は25%、人工透析が必要になる確率
は30%、心臓病も27%」と警告した。将来のリスクを数値で示されると、Aさん
も糖尿病の怖さを実感した。



 糖尿病が進行すると、失明につながる網膜症、人工透析が必要になる腎症、手足の
切断に至ることもある神経障害などの合併症が起きやすい。しかし、初期には自覚症
状がないだけに、なかなか治療に取り組めない。

 そこで登場したのが、このソフトだ。血糖値や血圧などのデータを入力するだけ
で、将来、合併症になる危険度を判定する。国内の疫学研究や欧米の大規模調査を踏
まえ、東京慈恵医大や慶応大などの医師チームが、武田薬品工業(本社・大阪市)と
共同で作成した。

 年齢、性別のほか、血糖値や、過去1、2か月間の血糖値を表すHbA1c(糖化
ヘモグロビン)、コレステロール値、喫煙習慣の有無など10項目を入力。従来通り
の生活を続けたと仮定し、10年―30年後に、失明や神経障害、心臓病などの合併
症が起きる確率を表示する。

 Aさんの場合、HbA1cが7%(治療目標値5・8%未満)、最大血圧140、
コレステロール200で、喫煙していた。このデータを入力、はじき出されたのが冒
頭の数値。予想以上に合併症の恐れが高いことを知り、少しずつだが運動も始め、
「物足りなかった食事を我慢するのにも慣れてきた」という。

 「患者さんに、自分自身のリスクを理解してもらう意義は大きい」と、開発にあ
たった慶応大病院医師の池田俊也さんは説明する。

 これまでは診察の際、合併症で組織が死ぬ壊疽(えそ)を起こした足の写真を見せ
たりして警告してきたが、「特に重症のケースを見せているのだろう」「自分はこう
ならない」などと、食事制限や運動を怠る患者も少なくなかった。

 このソフトを使えば、治療や禁煙などの努力で、検査データをどこまで改善すれ
ば、リスクがどれだけ下がるかも計算できる。患者が治療目標を決めるのにも役立
つ。

 今後は「いま治療すれば、最終的に透析などに頼らず、どれだけ医療費が安くつく
か」などの計算機能も組み込む予定。ただし、「ソフトの使用は必ず医師の指導のも
とで」としている。

 2002年の厚生労働省の調査によると、糖尿病の患者は740万人と推定される
が、実際に治療を受けているのは、その3分の1程度という。「予備軍」を含める
と、要注意の人は約1620万人にのぼるとされる。

 池田さんは「合併症のリスクを実際に目で見て理解してもらうのは効果的。将来は
遺伝子データなども加え、さらに精密なソフトを開発していきたい」と話す。

 ソフトは今夏から全国の医療機関に配布を始めた。どの施設でも使っているわけで
はないので、治療中の人は主治医に尋ねてはどうだろう。(科学部 本間 雅江)

降圧できないときの次の一手

4.腎機能進展例でも安心して処方できるCa拮抗薬


 糖尿病性腎症(図3)に対する第一選択薬は原則としてRA系抑制薬だが、3B
期(顕性腎症後期)や4期(腎不全)に対しRA系抑制薬を開始すべきかについてはコ
ンセンサスがない。RA系抑制薬の腎保護作用を重視し、3B期以降でもRA系抑制薬を開
始すべきとする見解もあるが、その一方で、そのような症例ではRA系抑制薬開始によ
り急激な腎機能低下の危険性があるのも事実である。

病期 臨床的特徴 病理的特徴
(糸球体病変) 備考
(主な治療法)
蛋白尿
(アルブミン) GFR(Ccr)
第1期
(腎症前期) 正常 正常
時に高値 びまん性病変:無い~
軽度 血糖コントロール
第2期
(早期腎症) 微量アルブミン尿 正常
時に高値 びまん性病変:軽度~
中程度
結節性病変:時に存在 厳格な血糖コントロール
降圧治療
第3期A
(顕性腎症
前期) 持続性蛋白尿 ほぼ正常 びまん性病変:中程度
結節性病変:多くは存在 厳格な血糖コントロール
降圧治療・蛋白制限食
第3期B
(顕性腎症
後期) 持続性蛋白尿 低下 びまん性病変:高度
結節性病変:多くは存在 厳格な降圧治療
蛋白制限食
第4期
(腎不全) 持続性蛋白尿
(血清クレアチニン
上昇) 著明低下 荒廃糸球体 厳格な降圧治療
低蛋白食・透析療法導入
第5期
(透析療法) 透析療法中   移植

厚生省:平成3年度糖尿病調査研究報告書
図3 糖尿病性腎症の病期分類

 このような症例にRA系抑制薬を処方するのであれば、半量以下より開始し、
電解質やクレアチニンを注意深く観察する必要がある。また、このような症例に血圧
コントロール目的で薬剤を処方するのであれば、Ca拮抗薬から開始しRA系抑制薬を追
加するという考え方も成り立つであろう。
ベニジピンのように腎機能に悪影響を及ぼすことなく高い降圧効果が得られ
る、Ca拮抗薬も選択肢の一つと言えよう(図4)。


図4 腎性高血圧症におけるベニジピンの腎機能に及ぼす影響

 ただし1期よりRA系抑制薬を服用していた症例が3B期に至ったからといっ
て、機械的にRA系抑制薬を中止する必要はないし、中止すべきではない。



5.まとめ


 最近、欧米において立て続けに高血圧ガイドラインが発表された。米国の
JNC7においては目標血圧値に到達するために2種類以上の薬剤を併用する必要がある
としており、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬を推奨し
ている。また、欧州で発表されたESH-ESCガイドラインでは、大部分の患者において2
剤以上の薬剤の併用が必要であることを示しており、最も妥当な併用療法を提示して
いる。糖尿病を合併した高血圧例においては、RA系抑制薬とCa拮抗薬の併用が最も妥
当と考えられる(図5)。


図5 糖尿病を合併した高血圧例における併用療法

糖尿病とアルツハイマーとの関連を取り上げました
が、
> アメリカで新しい論文が出ました。それによると、それ程はっきりしているわけ

> はないが、やはり関連があるのではないかということです。
> 55歳以上のローマンカトリック教会の修道女や司祭など824人を平均6年間追跡調

> したところ、151人がアルツハイマーになり、内31人に糖尿病がありました。
> 統計的には糖尿病はアルツハイマーのリスクを65%増やすそうですが、今回の研

> では脳卒中後の痴呆も『アルツハイマー』に含んでいるので、文字通りの『アル

> ハイマー』ではないようです。
> ところで『ボケ』や『痴呆』のネーミングを替えようという動きがあるそうで
す。
> 有吉佐和子の『恍惚』もいいけど、ちょっと文学的かな?
>
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> ■Close Up!/糖尿病と寿命
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> 糖尿病があるとやはり寿命が短くなるようです。合掌。
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>
> ■コラム
>
> 糖尿病の男女差の投票ありがとうございました。日本では国民健康保険組合の分

> によると、やはり男性の方が多いのです。
> アメリカでは、CDC(疾病予防センター)によると女性の方が長寿なので患者数

> 女性が多いのですが、20歳以上の成人が糖尿病にかかっている『罹病率』は男女

> 8.2%で、全くの同率です。イヌ(犬)ではメスの方が多いのですが、説明がつく

> うな、つかないような不思議な現象です。
>
>
 以上をまとめると、

1) 糖尿病例では微量アルブミン尿測定を行い、早期腎障害を見逃さな
い。微量アルブミン尿を呈する症例、特に網膜症を合併している例では、一度、腎臓
専門医を受診させる。
  2) 腎障害を認めない場合は、Ca拮抗薬も第一選択薬となりうる。
  3) 糖尿病性腎症例に対しては腎保護の観点からRA系抑制薬を用い
るが、降圧も重要であるためCa拮抗薬を併用して確実に降圧する。




降圧できないときの次の一手

■ Vol.2 糖尿病を合併した高血圧症 ■


解 説 :富野 康日己 先生

      順天堂大学医学部腎臓内科 教授



 高血圧、糖尿病ともに心血管系疾患のリスクを高める疾患であり、治
療の主目的は細小血管障害と大血管障害の予防にある。そこで前回に引き続き、順天
堂大学 富野康日己教授に、糖尿病を合併した高血圧症の診断・治療のポイントを
伺った。



1.糖尿病性腎症早期発見のために


 糖尿病性合併症の多くは血管病変と性格付けられ、病変をきたす血管のサイ
ズにより「大血管症」、「細小血管症」に分けられる。
 糖尿病性腎症は細小血管症の1つであり、現在、日本における透析導入の最
大原因である。第3期以降の糖尿病性腎症は不可逆性と考えられるため、早期発見に
よる早期治療が、透析導入減少の観点からも重要と考えられる。

 糖尿病性腎症の早期発見に微量アルブミン尿が有用であることが、近年明ら
かになっている。したがって高血圧合併の有無を問わず、血糖コントロール不良例で
は尿中微量アルブミン検査を行い、早期腎障害を探索すべきである。また、糖尿病性
腎症の80~85%は同じ細小血管症である網膜症を発症している。したがって糖尿病性
網膜症所見が得られた例では、必ず尿中微量アルブミンを調べ、アルブミン尿陽性
(随時尿を用いる場合、尿クレアチニン濃度を同時に測定し、30~300mg/gCr)であ
ればその時点で一度、腎臓専門医を受診させていただきたい。



2.アルブミン尿を認めないならCa拮抗薬から開始


 糖尿病を合併する高血圧患者に関しては、Ca拮抗薬を基礎薬として用いた
HOT研究や、血圧をより低く下げたほうが、大血管障害および細小血管障害のリスク
をより著明に減少させるというUKPDSの成績(図1)などからも目標血圧値が
130/85mmHgと低く設定されている。
 腎障害を合併しないならば、血糖コントロールと並んで降圧そのものが重要
となるため、Ca拮抗薬が第一選択となり得る。また、Ca拮抗薬が糖尿病合併例の心血
管疾患の発症率を減少させることは、Syst-EurやINSIGHT、最近ではALLHATでも示さ
れている。ALLHATのサブ解析によると、Ca拮抗薬の冠動脈疾患、心血管疾患や全死亡
は糖尿病合併例においても利尿薬と同等に有用であることが証明されている。


図1 糖尿病に対して血圧は低ければ低いほど良い



3.RA系抑制薬で治療を開始しCa拮抗薬を追加


 一方、尿中アルブミンあるいは尿蛋白陽性例に対する治療は、アルブミン・
蛋白の減少を目標とする。糖尿病例の微量アルブミン尿が認められる場合、正常血圧
であっても原則としてレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬で治療を開始し降圧
を図る。
 しかしながら、前述のとおり、糖尿病を合併する高血圧症の降圧目標は
130/85mmHgであり、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)単剤でここ
まで降圧するのは困難な場合が多い。尿蛋白1g/日以上では125/75mmHgまで降圧する
必要があるのでなおさらである。RENAALやAASKの成績は、RA系抑制薬が腎保護に重要
であることを示したが、これらの試験においてもCa拮抗薬は多くの症例で併用されて
おり、RENAALでは約80%にCa拮抗薬が併用されている(図2)。


図2 RENALL:2型糖尿病腎症におけるARBの効果と併用薬

 さらに、糖尿病患者では背景にインスリン抵抗性を有する例が多く、また長
期罹患例では動脈硬化が進展しているため、高血圧を呈するのが一般的である。わが
国の糖尿病患者で降圧目標に達しているのはおそらく30%程度だろう。
 したがって、RA系抑制薬を開始後2~3ヶ月経過しても血圧が目標値まで低下
しない場合にはCa拮抗薬を追加して、確実に降圧目標を達成する。糖尿病を合併する
高血圧治療におけるCa拮抗薬は事実上の標準治療と考えて良いだろう。2002年に米国
糖尿病協会(ADA)が出したステートメントではCa拮抗薬を第一選択薬としないよう
明記してあったが、2003年の同ステートメントからはそのような表現は消えたのが何
よりの証である

抗酸化物質が豊富な食事により糖尿病が予防される可能性
[英語原文へ]

提供:WebMD

特にビタミンEなどの抗酸化物質を多く含む食品を摂取するとリス
クが低下する可能性

Jennifer Warner
WebMD Medical News

Reviewed by Brunilda Nazario, MD



【2月20日】抗酸化物質が豊富な果物および野菜を多く取り入れた
色彩豊かな食事を摂取することが糖尿病予防の一助となる可能性がある。
最高レベルのビタミンEを含む食事を摂取していた人では、抗酸
化物質の摂取量が最低レベルであった人に比べて、2型糖尿病になる可能性が30%低い
ことが新規研究で示された。

また、色彩豊かな果物や野菜に含まれる抗酸化物質の一種である
カロテノイドを多く摂取した人でも2型糖尿病の発現リスクが低いことが明らかに
なった。

一方で、最もポピュラーな抗酸化物質のひとつであるビタミンC
は、糖尿病に対する保護効果を発揮しないものと思われることが本研究で示された。

抗酸化物質は全粒の穀物、果物および野菜に含まれている。これ
らの物質を多く含む食事の摂取は、体内の細胞に傷害を引き起こす不安定分子である
フリーラジカルと対抗することによって、糖尿病のような慢性疾患の予防といった健
康に対するさまざまな効果を発揮することが以前の研究によって示唆されている。

2型糖尿病リスクに対する抗酸化物質の保護作用

本研究は『Diabetes Care』2月号に掲載されている。研究者ら
は、本研究開始時に糖尿病でなかった年齢40-69歳の男女4,000例以上の食事につい
て、抗酸化物質の含有量を検討した。特にビタミンE、ビタミンC、カロテノイド、お
よびトコフェロールといった他のビタミンE誘導体の摂取量について追跡調査した。

23年間の追跡調査を実施した結果、ビタミンEおよびカロテノイ
ドの摂取量が多い人ほど、抗酸化物質の摂取レベルが低い人に比べて、2型糖尿病の
リスクが低いことが示された。しかし、このような効果はビタミンC摂取に関連して
認められなかった。

「この研究は、抗酸化物質の摂取により2型糖尿病の発現リスク
が低下するという仮説にさらに重みを加えるものである」と研究者であるNational
Public Health Institute(フィンランド、ヘルシンキ)のJukka Montonenらは記し
ている。「数少ないプロスペクティブ(前向き)研究の中で、これらの研究結果は有
望に思われる。確実な結論を得るためには、大規模な前向き研究および介入試験をさ
らに多く実施する必要がある」

この研究では、追跡調査期間23年間に糖尿病が発現した人は、年
齢が高く、より肥満傾向にあり、高血圧である可能性が高かった。





Montonen, J. Diabetes Care, February 2004; vol 27: pp
362-366.


(C) 2004 WebMD Inc. All rights reserved.



血糖値、指を乗せて測定 世界初、日立が開発


記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2月24日】


 日立製作所は二十三日、糖尿病患者が血糖値を測る際に、血液の採取
を必要としない測定装置を、世界で初めて開発したと発表した。機器に指を乗せるだ
けで血糖値が判明する仕組みで、痛みが伴わず手間もかからないため、患者の負担が
大幅に軽減される。

 年内に薬事法に基づく申請を行い、二〇〇五年に病院への販売を開始
する予定。医師が許可した患者が自宅で使えるようになる。

 現在、糖尿病患者が自宅で測定する場合は、指先などから血液を採取
しているが、新開発の装置は特殊なセンサーを利用し、指先の温度や光の特性を正確
に測定する。

 体内の代謝反応によって生まれる熱エネルギーを分析して、血糖値を
算出。装置に指を十秒間置き、二分経過後にまた十秒間置く。二分後に血糖値が表示
される。



健康な女性における鉄貯蔵は糖尿病のリスクにつながる
[英語原文へ]

提供:Medscape

枝分かれ症例対照試験において、既知の糖尿病リスク因子を持た
ない女性は血中の鉄貯蔵量の増加に伴い2型糖尿病のリスクが上昇

Laurie Barclay, MD
Medscape Medical News

Reviewed by Gary D. Vogin, MD



【2月10日】既知の糖尿病リスク因子を持たない健康女性において
血中の鉄貯蔵量の上昇は2型糖尿病のリスク上昇を伴うという枝分かれ症例対照試験
の結果が『Journal of the American Medical Association』2月11日号に発表され
た。
「過剰な鉄貯蔵はへモクロマトーシス患者に2型糖尿病を引き起
こしうる」とハーバード大学公衆衛生学部(マサチューセッツ州ボストン)Rui
Jiang, MD, DrPHらは記している。「しかし、鉄貯蔵量の中程度の上昇が健康な人に
おける2型糖尿病発症のリスクを予測するかどうかは明らかではない」

鉄過剰はまずインスリン抵抗性を惹起し、次いでインスリン分泌
の低下をもたらす可能性があるため、著者らはNurses' Health Studyに登録した健康
な中年女性において鉄貯蔵量を反映するバイオマーカーとその後の2型糖尿病発症と
の関係を検討した。

糖尿病、心血管疾患、および癌の診断を受けておらず、1989年か
ら1990年に血液検体が得られた女性32,826例のうち698例が10年間の追跡調査期間中
に糖尿病を発症した。肥満指数(BMI)の十分位最高階級の症例の年齢、人種、空腹
状況、BMI値に基づき、糖尿病のない対照者716例をマッチングさせた。

後に糖尿病を発症した女性は対照群と比べると、体重が重く、糖
尿病の家族歴を有する可能性が高く、運動量とアルコール消費量が少ない傾向がある
とともに、ベースライン時のC反応性蛋白質(CRP)、空腹時インスリン、およびヘモ
グロビンAlcの血漿中濃度が高かった。また、症例群は対照群より、ベースライン時
におけるヘム鉄、トランス型脂肪、赤身肉・加工肉、および総カロリーの食事による
摂取量も多く、穀物繊維、マグネシウムの摂取量は少なかった。

また、症例群は対照群より、ベースライン時の平均フェリチン濃
度が有意に高く(109ng/mL対71.5ng/mL、p<0.001)、フェリチンに対するトランス
フェリン受容体の比の平均値が有意に低かった(102対141、p=0.01)。2型糖尿病の
偶発的発症のリスク比はトランスフェリン受容体/フェリチン比の五分位の階級が上
がるにつれて低下した(傾向についてはp=0.01)。CRP、BMI、閉経の有無、および
アルコール消費量について補正しても、これらの関連性に有意な変化は認められな
かった。

研究の問題点として、炎症または肥満により交絡が混入した可能
性、ならびに対照群に未診断の糖尿病が存在した可能性がある。

「[これらの知見は] 2型糖尿病の予防に重要な意味を持っている
と思われる」と同著者らは記している。「健康者集団におけるフェリチン濃度上昇お
よびトランスフェリン受容体/フェリチン比の低下は、さらに評価と介入(生活習慣
または治療)が必要な2型糖尿病の高リスク群の同定の一助となる可能性がある」

この研究は米国立衛生研究所の援助を受けた。共同著者の1名は
米国糖尿病協会(ADA)からCareer Development Award(キャリア開発賞金)を受け
ている。





JAMA. 2004;291:711-717


Medscape Medical News 2004. (C) 2004 Medscape



1型糖尿病患者において経口避妊薬が腎障害を引き起こす可能性
[英語原文へ]

提供:Medscape

OCがレニン-アンギオテンシン系を活性化し、腎臓にストレスを与
え、蛋白尿を引き起こす可能性

Peggy Peck
Medscape Medical News

Reviewed by Gary D. Vogin, MD



【ニューヨーク 5月21日】経口避妊薬(OC)を使用する1型糖尿
病女性では腎疾患リスクが高いことを示唆する新規知見が、米国高血圧学会第19回年
次科学会議で報告された。
「[OC]を服用していない糖尿病女性における蛋白尿の発現リスク
は約2%であるが、経口避妊薬を服用している場合のリスクは18%に近い」とブリガム
女性病院(マサチューセッツ州ボストン)の医学フェロー研究員Sofia Ahmed, MDは
述べている。

一方では、本データはOCの使用が腎障害発現のリスク因子である
ことを示しているようにみえるが、ピルの使用中止を女性に求めているわけではない
と、Ahmed博士は注意を促している。「糖尿病女性の妊娠にはリスクがある」とAhmed
博士は述べている。「医師および患者は、腎症のリスクと妊娠のリスクを比較検討す
る必要がある。糖尿病患者における[OCの]使用に関しては、なお研究を要する」。

Ahmed博士らはデンマークにおいて、1型糖尿病と診断された女性
114例を同定し、1984年から2000年のカルテを再検討した。本研究の女性81例にはOC
の使用歴がなく、33例にはOC使用歴があった。Ahmed博士は、平均すると8.4年間にわ
たりOCが使用されていたと述べている。

健常女性を対象とした以前の試験において、比較的新規の第三世
代避妊薬を含むOCの使用によりレニン-アンギオテンシン系が活性化され、結果とし
て腎臓にストレスが与えられる可能性が示されたことをAhmed博士は強調している。
デンマークの女性が使用するOCにおけるエストロゲン含有量は他のすべてのピルと同
程度であるが、Ahmed博士は、ピルのプロゲスチン成分については違いがみられたと
述べている。

「すべてのプロゲスチンが等しく作られているわけではない」
と、Ahmed博士がデータを発表したセッションの共同司会者であり、ミシシッピー大
学(ジャクソン)内科教授のCelso Gomez-Sanchez, MDは述べている。Gomez-Sanchez
博士は、OCにおけるプロゲスチンの種類と組成が本研究結果において非常に重要な役
割を果たしている可能性を示唆している。





参考文献
ASH 19th Annual Scientific Meeting: OR26. Presented May
20, 2004.


Medscape Medical News 2004. (C) 2004 Medscape






「糖尿病の患者に朗報」 膵島細胞移植で京大病院長


記事:共同通信社
提供:共同通信社

【5月24日】


 京都大病院で4月に膵島(すいとう)細胞移植を国内で初めて受けた
近畿の30代女性が退院し、田中紘一(たなか・こういち)院長が21日夕、同病院で記
者会見し「本人の体調も良く、ほっとしている。この治療法が1歩2歩と進めば糖尿病
の患者に大きな朗報になる」と述べた。

 20年近くインスリンの投与を受けてきた女性は、退院に「大変ハッ
ピーです」と話しており、経過を見ながら再手術を受けるかどうか意思を確認してい
くという。

 また京大病院で最近半年に約50人の患者から移植治療の相談を受けた
と紹介。生体膵島移植を「確実に前に進めたい」話した。




貯蔵鉄量多い女性で

2型糖尿病リスク増大

フェリチン関連項目を測定

〔ニューヨーク〕 ハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)のRui Jiang博士
とFrank B. Hu博士らは「既知の糖尿病危険因子を有していない健常女性では,貯蔵
鉄量が多いと 2 型糖尿病のリスクが増大する」との研究をJAMA(2004; 291:
711-717)に発表した。この研究では,貯蔵鉄量の相対量を評価するために,フェリ
チン濃度の上昇と,フェリチンに対するトランスフェリン受容体の比率の低下を利用
した。

鑑別と予防に有用

Jiang博士は「今回の所見は,健常者集団でフェリチン濃度の上昇とフェリチ
ンに対する比率でのトランスフェリン受容体濃度の低下を検査することが 2 型糖尿
病のリスクの高い集団を鑑別するのに役立つ可能性がある。また,こうした高リスク
集団ではその後の評価やインターベンション(ライフスタイルの変更または治療)に
より恩恵を受けられる可能性があることから,2 型糖尿病の予防で重要な意味を持っ
ていると思われる」と述べている。

同博士らは1989~90年の女性看護師保健研究で血液検体を提供した 3 万2,826
例のデータを使用した。試験開始時に糖尿病,心血管疾患,癌の診断を受けていな
かった女性のうち,698例が10年間に及ぶフォローアップ期間中に糖尿病を発症し
た。糖尿病群と年齢,人種,空腹時の状態が適合する716例の女性を対照群としてラ
ンダム化選択した。さらに,糖尿病患者でのbody mass index(BMI)が上位10分の 1
の女性のBMIを,対照群のBMIと一致させた。

糖尿病患者では,フェリチンの平均濃度は対照群に比べて有意に高く(109.0
対71.5ng/mL),フェリチンに対するトランスフェリン受容体の平均比率は有意に低
かった(102対141)。

適合要因により階層化し,BMIと他の糖尿病危険因子について調整した条件付
きロジスティック回帰では,2 型糖尿病発症率の多変量相対リスクはフェリチン増加
の五分位数ごとに1.00,1.09,1.26,1.30,2.68であった。フェリチンに対するトラ
ンスフェリン受容体の比率の上昇での相対リスクは,それぞれ2.44,1.00,1.13,
0.99,1.00であった。

同博士らは,炎症マーカーであるC反応性蛋白質(CRP)についても結果の調整
を行ったが,この調整では結果が明確に変化することはなかった。さらに,この関連
性は,BMI,閉経状況,アルコール摂取量,CRPなどのレベルにより定義した階層内で
も維持された。糖尿病群420例と対照群515例についてはウエスト周囲径測定が行わ
れ,多変量条件付きロジスティック回帰でウエスト周囲径値についての調整も行った
が,結果に明確な変化は生じなかった。

HbA1c濃度が6.5%を上回る女性を対照群から除外した後に多変量解析を行った
ところ,フェリチンについての五分位数最高群を最低群と比較した場合の相対リスク
は2.63,フェリチンに対するトランスフェリンの割合についての五分位数最低群を最
高群と比較した場合の相対リスクは2.43であった。

同博士らは,フェリチン濃度は貯蔵鉄量についての完全な特異的マーカーでは
なく,他の機序を反映している可能性もあるという事実の取り扱いや,炎症による潜
在的な交絡を最小限にするための方法について考察している。

臨床的エビデンスとも一致

Jiang博士らは,貯蔵鉄量と糖尿病発症との関連性についてこれまでに唯一発
表されている前向き研究として,クオピオ大学(フィンランド・クオピオ)公衆衛生
・一般診療部疫学のJukka T. Salonen教授らによるフィンランド男性の研究(BMJ
1998; 317: 727-730)を挙げた。同研究は,フォローアップ中に糖尿病を発症した41
例と対照群82例を検討したもので,この小規模試験の結果と今回の研究結果は一致す
るという。

Jiang博士らは「ヘモクロマトーシス患者では過剰な貯蔵鉄が 2 型糖尿病を引
き起こす可能性があることは既に知られていた。鉄吸収の調節の遺伝的異常により引
き起こされるこのヘモクロマトーシス患者では,過剰な鉄の蓄積により,患者の53~
82%が糖尿病を発症している。このことから,過剰な貯蔵鉄は 2 型糖尿病の発症と
強い相関関係があるという臨床的エビデンスが得られている」と指摘している。

また,同博士は「過剰な貯蔵鉄が 2 型糖尿病発症の直接的な原因となってい
る可能性があるという臨床的エビデンスは,遺伝性ヘモクロマトーシス患者や輸液に
より鉄過負荷となった患者では鉄減少療法により耐糖能が改善し,続発性糖尿病の発
症率が低下することがあるという所見からも,さらに裏づけられている」と報告して
いる。

同博士らは貯蔵鉄量と糖尿病発症との関連性の考察で「 2 型糖尿病の主要機
序はインスリン抵抗性だが,β細胞の機能不全もあり,これらはいずれも貯蔵鉄量の
増加により直接的な影響を受けるものである。過剰な鉄は通常,肝臓,筋肉,膵臓に
貯蔵されて,臓器特異的な酸化的損傷を引き起こし,これがインスリン抵抗性と最終
的にβ細胞の障害を引き起こしている可能性がある」と述べている。

さらに,同博士らは「ヒドロキシルラジカルは強力な酸化促進物質で,細胞膜
脂質,蛋白質,核酸を攻撃するが,鉄はヒドロキシルラジカル形成時の触媒である。
鉄により触媒されるヒドロキシルラジカルの形成は,最初はインスリン抵抗性に,そ
の後はインスリン分泌量の減少に寄与することで,2 型糖尿病を発症させるという仮
説が立てられている」と指摘している。

10年間のフォローアップ期間中に最終的に糖尿病を発症した被験者では,貯蔵
鉄量が多いだけでなく,体重が重く,糖尿病の家族歴を有していることが多く,運動
やアルコール摂取が少なく,研究開始時のCRP,空腹時インスリン,HbA1cの血漿濃度
が高かった。さらに,糖尿病女性では研究開始時にヘム鉄,トランス脂肪酸,赤身の
肉,加工肉,総カロリーの平均摂取量が多く,穀物繊維やマグネシウムの摂取量が少
ない傾向があった。

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ビタミンD欠乏はβ細胞の機能低下に関連
[英語原文へ]

提供:Medscape

ビタミンD値はインスリン感受性と正の相関関係にあり、インスリ
ン反応と負の相関関係にある

Yael Waknine
Medscape Medical News

Reviewed by Gary D. Vogin, MD



【5月11日】ビタミンD欠乏はβ細胞の機能低下に関連していると
いう研究結果が、『American Journal of Clinical Nutrition』5月号に掲載され
た。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部のKen C. Chiu, MDら
によれば、血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]濃度で評価したビタミンD低下状
態は耐糖能異常のリスク因子として長い間疑われているという。「ビタミンDは、イ
ンスリン感受性とβ細胞機能の両方またはその一方に影響を及ぼすことによって、2
型糖尿病の成因に一役買っている可能性がある」と、同博士らは記している。

経口糖負荷試験後、耐糖能正常の健常者126例を試験に組み入
れ、3時間のグルコースクランプ法によりインスリン感受性およびβ細胞の機能を評
価した。一夜絶食後、体表面積に基づき(11.4g/m2)50%ブドウ糖液をボーラス投与
した。15分後に30%ブドウ糖液の持続注入を開始し、血糖値を180mg/dLに維持した。

第1段階のインスリン反応(1st IR)は、グルコースクランプ法
で評価した2.5、5.0、7.5、10分後の血漿インスリン濃度の合計と定義した。第2段階
のインスリン反応(2nd IR)は最後の1時間の血漿インスリン濃度の平均値と定義し
た。インスリン感受性の指標(ISI)は最後の1時間のブドウ糖注入率の平均値を2nd
IRで割って算出した。

25(OH)D濃度はISIと正の相関関係(p<0.0001)、1st IRと負の
相関関係(p=0.0045)、2nd IRと負の相関関係(p<0.0001)にあった。重回帰分析
では、25(OH)D濃度とISIの間にだけ独立した相関関係が認められた(p=
0.0007)。ISIは1st IRおよび2nd IRと負の相関関係にあった(いずれもp
<0.0001)。

著者らによれば、これらの結果は、25(OH)D低値によってβ細胞
の機能に何らかの影響が及ぼされ、血糖値を低下させる適切な代償性インスリン反応
が妨げられるということを示しているという。

さらに、経口糖負荷試験中の25(OH)D濃度は、独立して空腹時血
糖値(p=0.0258)および負荷後60分(p=0.0011)、90分(p=0.0011)、120分(p
=0.0007)血糖値と負の相関関係を示した。

Adult Treatment Panel IIIで定義された代謝異常を二つ以上有
する被験者を代謝症候群のリスク群に類別した。ビタミンD欠乏(20ng/mL未満)被験
者の代謝症候群のリスク(30%)は、欠乏していない被験者のリスク(11%)よりも高
かった。

「ビタミンD欠乏は2型糖尿病および代謝症候群のリスク因子であ
る」と、著者らは記している。「この研究結果から、25(OH)Dを10ng/mLから30ng/mL
に増加させることによってインスリン感受性が60%改善するということが推定され
る」。

「インスリン抵抗性の改善によってβ細胞に対する負担が取り除
かれ、耐糖能異常が改善する可能性がある」と、同博士らは付け加え、基礎をなす機
序を調べるためにさらに研究を行う必要がる、と指摘している。

この研究は、米公衆衛生局(PHS)および米国糖尿病・消化器疾
患・腎疾患研究所(NIDDK)の助成を受けた。





参考文献
Am J Clin Nutr. 2004;79:820-825


Medscape Medical News 2004. (C) 2004 Medscape





2004年5月6日号 / Vol.37 NO.19 / P.24
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2型糖尿病患者で聴力損失と認知能低下

〔米フロリダ州デイトナビーチ〕 米復員軍人局・国立リハビリテー
ション研究センター(NCRAR)のNancy Vaughan博士とStephen Fausti博士は,60歳未
満の糖尿病患者は同年齢で糖尿病ではない人と比較して聴力損失が大きいことがわ
かった,と耳鼻咽喉科研究学会で報告した。

中枢機能への影響大きい

報告によると,60歳以上の糖尿病群と非糖尿病群では聴力の損失差は小
さかったという。Vaughan博士は「高齢になると老年性難聴により糖尿病に直接関連
した問題が覆い隠されるからではないか」と推測している。

同博士らは 5 年間の疫学研究から得られたこれらの予備的結果を発表
した。対象は25~85歳の復員軍人694例で,このうち342例は糖尿病に 5 年以上罹患
しており,352例は糖尿病ではなかった。全例に耳音響放射テストと聴性脳幹反応検
査を含む一連の検査を行った。

有意な知見として,60歳未満の糖尿病患者における聴力損失の増加以外
に,耳音響放射テストからは蝸牛増幅システムの影響の欠落が,また聴性脳幹反応検
査からは中枢の聴覚処理の遅延が明らかになった。

研究チームは,糖尿病の影響は中枢の聴覚処理機能のほうが末梢機能
(例:聴力損失)よりも大きいと結論している。このことから,糖尿病の初期段階で
変化を明らかにするためには,聴性脳幹反応検査と純音聴力検査が適当であることが
示された。

同博士は「聴力は耳だけでなく,蝸牛が受け取る音声の処理に関与する
高等な聴覚・認知中枢においても発生するため,処理能力の変化の早期特定は口頭コ
ミュニケーションにとって重要であると考えられる」と結論。さらに,「60歳未満の
糖尿病患者において聴力損失が悪化するという知見は,聴覚系の急速な老化と一貫性
がある」と付け加えた。

未治療女性でも認知機能低下

一方,縦断的Nurses' Health Studyに参加している70~81歳の女性 1
万8,999例を対象にした別の糖尿病研究において,認知機能が 2 年間にわたり調査さ
れ,その詳細がBMJ(2004; 328: 548)に発表された。

筆頭研究者でハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)疫学の
Giancarlo Logroscino准教授らは「研究当初は 2 型糖尿病の女性の成績が悪く,糖
尿病に15年以上罹患している女性では認知機能低下の確率が50%高くなっていること
がわかった」と述べている。

さらに,薬物治療を受けていない女性は,認知機能低下の確率が最大に
なっていることがわかった。経口血糖降下薬を服用している女性は,非糖尿病女性と
同等の成績を示した。同准教授は「この知見から,2 型糖尿病の予防とコントロール
は,健康に非常に重要な影響を与えることが示唆される」と結論している。

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ことばのカルテ(5)

グリケーション

過去 1 ~ 2 か月の平均血糖値の指標として用いられるヘモグロビンA1c
(HbA1c)は,ヘモグロビンにグルコースが結合したものである。ヘモグロビンが赤
血球の寿命120日の期間中に高血糖の状態にさらされると,β鎖N末端バリンのアミノ
基とグルコースのカルボニル基が反応し,両者が安定に結合した形であるHbA1cとな
る。この反応をグリケーション(糖化反応),あるいは発見者L. C. Maillardの名に
ちなんでMaillard(メイラード,マイヤー)反応と呼んでいる。

この反応が最初に見出されたのは実は食品中である。食品中の蛋白質と還元糖
の間でアミノ‐カルボニル反応が起こり,さらにアマドリ転換を経て安定なアマドリ
化合物を形成したのち,さまざまな反応を経て最終的に蛋白質の重合や溶解性の低下
が起こる。食品を長期間にわたって貯蔵した際に見られる,色が褐色に変化する現象
(褐変反応,browning)や,コーヒー,しょう油の茶色の一部もこの反応によるもの
である。その後,このグリケーションが生体内でも起こっていることが報告され,に
わかに病態生化学,特に糖尿病合併症の研究や加齢研究の分野で注目されるように
なった。生体内におけるグリケーションでは,最終的な産物を総称してAGEs
(advanced glycation endproducts)と呼ぶ。

生体内で蛋白質のグリケーションが進行する条件としては,血中の蛋白質のよ
うに還元糖と接触しやすい環境にあるか,あるいは長期間にわたって還元糖と接触す
ることが挙げられる。血中の蛋白質では,冒頭に紹介したHbA1cのほか,血清アルブ
ミンや赤血球中のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などもグリケーションを受
けやすい。

これらの蛋白質は代謝回転が比較的速いため糖化修飾の蓄積はあまり起こらな
いが,眼のレンズクリスタリンは代謝回転されないため,グリケーションを受けると
糖尿病性の白内障へと進行する。また,グリケーションの途中で酸化ストレスやカル
ボニルストレスが産生されるため,これらも糖尿病合併症の一因になっていることが
示唆されている。さらに,加齢に伴い糖化蛋白質が蓄積することによって,老人性白
内障のような病態を引き起こすと考えられている。

このように,非酵素的反応であるグリケーションは,ユニークな翻訳後修飾を
することで注目されている。

〈文献〉

1. 繁田幸男,谷口直之編: 蛋白の糖化. 医学書院, 1997.

2. Monnier VM. Intervention against the Maillard reaction in vivo.
Arch Biochem Biophys 2003; 419: 1-15.

(大阪大学大学院医学系研究科生化学・高橋素子)

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C型肝炎が糖尿病誘発、東大チームが実証


 C型肝炎になると糖尿病を誘発しやすいことを東大医学部の小池和彦教授
(感染制御学)らが8日までに、動物実験で明らかにした。
 ウイルス感染で起きるC型肝炎と、肥満や過食が引き金になる2型糖尿病の
関連性は疫学調査で報告されているが、因果関係を生体で確かめたのは世界で初めて
という。

 人でも同じ現象が起きていると考えられ、同教授は「C型肝炎患者は肥満、
食事などに特に注意を」と指摘している。

 2型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンがうまく作用せず発症する。

 同教授らは、C型肝炎ウイルスが作るタンパク質が肝臓でできるように遺伝
子を導入したマウスを作製。インスリンを注射して一時間後に調べると、正常なマウ
スの血糖値は注射前の30%に下がったが、遺伝子を導入したマウスは48%にしか低下
しなかった。

 遺伝子導入マウスは高カロリー食を与えると肥満になり糖尿病を発症した
が、正常なマウスは高カロリー食でも発症しなかった。

〔共同〕

膵島移植の10代女性が退院


記事:共同通信社
提供:共同通信社

【5月12日】


 心停止した人の膵臓(すいぞう)からインスリンを分泌する膵島細胞
を取り出し、肝臓に注入する移植手術を千葉東病院(千葉市中央区)で受けた糖尿病
患者の10代女性(東京都在住)が12日、退院した。

 移植手術は国内2例目で、4月24日に実施。手術翌日には食事や歩行が
できるなど経過は良好で、移植した膵島細胞は正常に機能しているという。今後は2
週間に1回程度の通院で経過を観察する。

 女性は重い糖尿病で、13年前からインスリン注射の治療を受けてい
た。女性は病院を通じ「低血糖発作がなくなったのがうれしい。これからの人生に希
望が見えた」とコメントした。

腎移植直後の糖尿病発症で

短期的予後が不良に

〔米ペンシルベニア州ユニバーシティーパーク〕 ペンシルベニア州立大学ミ
ルトン・S・ハーシー医療センター(同州ハーシー)内科のRobert A. Gabbay准教授
らは「腎移植直後に糖尿病(DM)を発症した患者は,移植前からDMを有していた患者
に比べて短期的予後が悪い」とする研究結果を,Transplantation Proceedings
(2003; 35: 2916-2918)に発表した。

移植後のDMでは感染率も高い

ペンシルベニア州立糖尿病センター副所長でもあるGabbay准教授は「DM患者は
その合併症のため,さまざまな医療行為が制限されることが多い。それにもかかわら
ず,移植前からの長期DM患者のほうが,移植後にDMを発症した患者よりも予後がよい
のは驚くべき結果だ。全体的に見て,移植後にDMを発症した患者は拒絶反応,感染,
再入院の可能性が非常に高くなる」としている。

同准教授らは,1999年 1 月~2000年12月にミルトン・S・ハーシー医療セン
ターで腎移植を受けた患者181例の移植前と移植後のデータを検討した。患者は,(1)
腎移植前からのDM患者(88例)(2)移植後DMを発症した患者(21例)(3)移植前も移植
後もDMでない患者(72例)-の 3 群に分けられた。

腎移植前にDMのなかった患者の23%は腎移植後 6 か月以内にDMを発症した。
これらの患者の約57%には感染症が見られたが,移植前からのDM患者では35%,移植
前も移植後もDMにならなかった患者では21%にしか感染症は起こらなかった。また移
植後にDMとなった患者群では,他の 2 群に比べ反復感染する傾向も見られた。

移植後の血糖管理がかぎ

Gabbay准教授は「最近DMを発症した患者では,DMによる合併症をまだ発症しな
いことが期待されるが,今回の調査では,このような患者の腎移植後の予後は不良で
あることが判明した。以前に行われた長期試験は症例数が少ないものの,拒絶反応予
防のために行われる薬物療法によりDMとなることが示された。十分なデータとは言え
ないが,他の研究でも心血管疾患や感染の増加を主因とする死亡や長期入院の発生率
は,移植後のDM発症で高くなることが示唆された」と述べている。

同准教授は「今回の研究は移植後 6 か月に焦点を当てているが,その理由は
移植後の患者では短期間のうちに再入院する大きな問題があるからだ。不良なアウト
カムの発端が早期に始まるのであれば,より早期に治療を開始することで長期的予後
を改善できる。長期的予後の調査にはDMによる他の合併症も含まれるが,短期的なア
ウトカムに焦点を当てた場合,DMによる慢性的合併症の影響を排除でき,グルコース
濃度に的を絞ることができる」としている。

また,「あらゆるDM患者にとり健康状態を維持するには,インスリンを用いた
厳格な血糖コントロールが重要である。腎移植後にDMを発症する患者の予後が悪いと
いうことは,グルコース濃度に関して何かすべきことがあるに違いない。そこで,わ
れわれは次の研究を計画している。早期に治療を開始することにより,患者の長期予
後を改善できればと願っている」と述べている。

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