●好きを満たそう●

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1~30題


■描写力がつくかもしれない30のお題
提供元: http://sorachi.lolipop.jp/odai/home/byousya.htm


<人物描写>
01. 制服を着た女子高生

バスを待つ人の列に彼女はいた。
天然色らしい栗毛の髪は、まっすぐに背中へと垂れ、細い腰の辺りでとまっている。女子にしては上背があるので重くは感じない、むしろ姿勢がよく凛とした佇まいの彼女には似合っていて、少女らしからぬ大人びた印象を与える。
初夏を思わせる半袖シャツの衿元には、赤いリボンが結ばれ白い腕に映えていた。
胸の校章が表すのはS高校の生徒という証。ひだのついた赤と黒のチェックのスカートにレースがぐるりと施されているのがS高校の制服の特徴だった。
顔を動かした彼女の涼やかな目線の先には到着したばかりのバスがある。


02. ロマンス・グレー(中年男性の白髪まじりの頭髪のこと)のおじさん

その人は特有の憂いを目もとに刻み込んでいた。
壮年期をすぎても身辺の落ち着きがなく、気苦労が絶えないせいか髪は早いうちから銀糸となり、これも生きた証と染めずにそのまま後ろへと撫でつけてある。
身体は若い頃、競泳をやって鍛えてあったせいか健常で、未だに胸板は程よい厚みを持ち、肩甲骨のしなやかさは背広の上からでも見て取れるほどだった。肩幅も広く、腕にかけてのラインはしっかりしていて、若年層と比べてもまったく引けを取らない。
窓際で古い友人の手紙を開きつつ、顎に手を添え剃った髭の跡を指でなぞる。
「君を遠い国に残してきてしまったのは過ちだったか」
彼は心の中で呟いた。


03. 西洋人形のような少女

彼女はじっと動かない、硝子玉のような碧玉の眸で虚をみつめ、木の椅子に腰を掛けている。髪はブロンドの縦巻カール、中世風の黒いレースのドレスを着せられ、朱唇は一日中、言葉をつむぐことなく閉ざされていた。
何よりも目を引くのは、さめざめとした肌の白さである。血の気を思わせず青白く発光しているようにさえ見え、その白さに比例して朱唇はより鮮やかに映った。細い指先はそっと膝の上に置かれ、掴めば儚く崩れてしまいそうだった。
四角い部屋には椅子以外には何も見当たらない、小さな窓に小鳥が止まる、影をつくる彼女の濃い睫がふるふると震えた。


04. 元気な小学生の少年

じゃれついていくる悪戯な手を仕方のないものと思った。
指先も脳もまだ未成熟で加減の有無を知らない。歩けもしなかった幼子のときよりも、随分と利口さは身についてきたが、遊びたい盛りは変わらないらしい。
戯れと云えど、足蹴りにされれば短パンから伸びた細い下肢に噛みついてやりたくなる。だが、黒髪の下の幼い笑顔を見て威嚇するだけに留めておく。剥きだして見せる白い歯は、この前一本抜けてアホ面を晒している、下の毛も生えていない小童だと思い勘弁してやった。
懲りずに玩具の長剣を取り出してきた少年を、箪笥に登ってさらりと交わしてみせた。


05. 頑固ジジィ

また今日も口を聞いてはくれない。
皺の増えた口元を真一文字に結んで、机に向かい手紙のようなものをしたためている。老眼がひどくなり姿勢はかなりの猫背で、顔と机の距離は10センチほどしかない。立っているときでさえ腰が曲がって小さく見えるのに、更に身を縮めた姿は朱儒のようにも見えた。それも躰が細く皺くれだった嫌味ったらしい朱儒だ。
声をかけても返事はなく、ただ荒々しいペンの運びが速くなる一方だった。大正生まれの江戸の男に聞く耳はないらしい。話は一行に通じず、云うことも無視される。
再度呼びかけると、今おまえの悪事を手紙に書き示している所だ、という返事があった。「先生に、わしの正義を認めてもらうのじゃ」と鼻を鳴らす。
拳を抑えながら頑固ジジイと呟いた。


06. 和服の上品な老婦人

呼び鈴が鳴り玄関へ向かうと、開け放たれた戸口の前に老齢の婦人が立っていた。
白髪を結い上げ、桜色の着物を身に纏っている。綸子の着物は藤の花があしらわれているもので、あざみ色の帯留をしてあった。
目に映える淡い桜色は若干、年齢にそぐわない幼い色合いのものだったが、頬の肉付きがよい丸顔のその人には似合っていた。黒目がちな瞳も大きく、一目で若い頃にはかなりの男どもを振り向かせていたことを思わせた。緩やかに微笑まれると、清楚な雰囲気に緊張させられる。声まで鈴が鳴るように上品だった。


07. 教師(何の教師でも構いません)

僕は壇上にいるその人を眺める。
真夏だというのに紺色のスーツをびしりと着こなし、乱れた感じを微塵も見せない。縁なし眼鏡の下の眸は、いつも涼やかで冷静である。歳も若く、受け持ちである高二の生徒たちと対して変わらないのに、頑ななほど生真面目で浮ついた部分がないせいか、随分と落ち着いてみえた。
運動はしていなさそうなのに躰は細く締まり、背筋に棒が差し入れられてるのではないかと思うほど姿勢もよかった。上背もあり、普段笑うところを見せないため周囲には威圧的に取られることが多い。
この人が黒板にチョークを走らせるときにみせる、無防備な後ろ姿が何より好きだった。額に薄っすらと浮かんだ汗が昨夜の情事を思いださせる。
一人にやついていたところ、厳しい声が飛んできた。


08. 自分の母親

溜め息の数がやたらと多い。家事の手をとめて何度目か解からない溜め息をつく。
50歳を過ぎて煙草をやめてから太り始め、体形が更におばさんへと近づいた。背が高いので横の太さは多少、人の視覚を欺ける。ぽっちりよりも、がっしりとした体付きなので尚更だろう。髪は短くカットし、女だが男性的な要素も多い。
顔立ちは割と彫り深く、どうにもならない皺が刻まれている。
名前を妙子というので周囲からは、耐え凌ぐ人、と揶揄される。他人には笑って元気な振りをみせ、帰って溜め息をつくのは救いの求めか、何なのか。


09. 自分の父親

今は傍にいない父親の記憶と云えば、太く垂れ下がった眉と同じく垂れ下がった目の、私と似た顔、それと強烈な煙草の匂いだ。トラックの運転手という常に密閉状態に置かれた職業ゆえ、四六時中煙草を口にしていないと気がすまないヘビースモーカーの父のものは、全て煙草の匂いが移ることとなる。健康状態も当然の如くすこぶる悪く、優柔不断で気の小さい性格も手伝ってストレスも加わりやすい。
元々、背は低いが久し振りに逢う父は、やたらと小さく見えた。私が成長したせいか、それでもやはり父の通った後には煙草の匂いが残っている。


10. 自分自身

雪の国で育った彼女の肌は、奥深い山の中に降る粉雪のように白い。日の光をあまり知らないせいもあるが、生まれつきといっても過言ではなかった。事実、衣服の下の隠された肌も抜けるような白さを持っている。
躰つきは華奢で、腕などは特に折れてしまいそうな脆さがあるが、実際はしなやかで驚くべき柔らかさがあった。白魚の手は空中で泳いでいるようにも見えた。
髪は黒く滑らかなねこっ毛で肩ほどの長さがある。
大人になれなかった少女、それが彼女の印象である。
一見しただけでは年齢は解らない。黒い眸はいつも外界を見据えるよう、不安に揺らいでいる。見えないものまで見透かしているようでもあり、人の不安を同調させた。


<風景描写>
11. パソコンの周り

灰色の業務デスクに置かれたパソコンの周りには、CD-ROMや書類などがそれぞれ収納ケースに入れられ、すっきりと纏まっていた。左右に並ぶ机より整理されている、というよりシンプルだった。キャラクターグッズでいっぱいになった右隣の机と比べ、とかく飾り立てるものはない。この机の持ち主が男か女か、性別の識別さえも解らなかった。
このパソコンの所有者を割り出せるものといえば、数冊の本と肝心のパソコンの中身か。今流行の占いに凝っているのか、本はすべて占星術などの専門書だった。本の傍にある卓上カレンダーはきちんと今月の日付になっている。引出しはロックされていて開かなかった。


12. 男子高校生の部屋

キレイ好きを自負する僕は親友の部屋へ足を踏み入れるなり、あまりの散らかりように眉をしかめた。洗濯物や雑誌などが散乱していて、勉強をやるスペースどころか人の座れるスペースがない。
散らかっているのは床だけではない、山積みのCDが壁を隠していたり、衣装ラックも勉強机も物で姿を覆われている。僕には解らない外国バンドのポスターが貼られているが、まったく意味をなしていない。
何より腹立たしいのは、カップ麺などの容器がゴミ箱に入れられず、そのまま放置されていることだ。これでも他の奴のうちよりはマシだというから驚きだった。一体どんな奴と付き合っているのか僕には思いも及ばない。
男だからという言葉で許すつもりはなかった。
「勉強中止、片付けよう」


13. 台所

奥に入ったところはキッチンスペースとなっていた。黒を基調としたモダンな風合いなキッチンで、カウンター付きの対面型となっており作る人と食べる人が顔合わせできるようになっている。
住んでいる人の数には少し大き過ぎる冷蔵庫が調理台の横に置かれていた。家族の中に料理好きな人がいるのだろう、ハーブなどを含めた調味瓶が綺麗に並べられている。


14. 雨上がりの晴れの空

頬に受ける風にはまだ湿り気があり、肌をじっとりと濡らす。長い間、空を蓋っていた雲は急速に押し流されていき、澄んだ青さが所々に現れていた。道路には雨の気配が残っていて、窪んだ溝地に水がたまっていくつもの池を作っている。
光の矢を放ちながら太陽が顔をだし、嬉しそうに鳴いていた蛙の代わりに鳥がさえずる。木々の緑が濃くなり心までもが幾分明るくなった。


15. 新月の夜

表は闇に包まれ、ひっそりとした静けさの中にいた。
月は影に隠されてなかなか姿を見せない、雲が邪魔をしているのかと思えば、月は恥ずかしそうに身を細めて薄っすらとした明かりを放っていた。それは初夜を迎えた新妻の紗衣に潜んだ清々しい肌のようで、手を伸ばしたい衝動と守り慈しみたい情操の狭間を揺れ動かせる。
闇はいつもより深くなり、星が輝きを増していた。まだ眠りにはつかず、起きて新月の様子を眺める。何かが起こりそうな予感に心を高ぶらせた。


16. にわか雨(あるいは狐の嫁入り)

空は晴れているのに、不意に風が重く湿り気を含み雨を呼んだ。瞼に受けた冷たい一滴は、徐々に数を増やしていき大きな雨となる。
急いで軒下へと隠れ、妙に静かな時の中で雨が過ぎ去るのを待った。光が反射して雨が途切れ途切れの糸のように見える。どこから降るのだろうと見上げた空には、白い綿毛の雲が素知らぬ顔をして浮かんでいた。
次第に雨はあがり、何事もなかったかのように太陽は輝きを放つ。熱は即座に地面を乾かし、僕は軒下から出た。


17. 学校の屋上から眺める景色

学校の屋上の端っこで、覆うもののない青い空を見渡してから、住宅街のほうへ目を向ける。転落防止用のフェンスが邪魔だった、網を通してでなければ景色を展望することができない。
そっとフェンスまで近寄って網目を覗いてみた。灰色の枠で囲われた家が窮屈そうに寄り添っている。病院や工業など施設が存在感を大きく示し、色彩は豊かであるのに全体的にみると単調だった。緑はすべて整備された土地にあり、本当の自然がここにはないことが解る。しかし、これが自分が住んでいる街の姿だ。


18. 地面から見上げる高層ビル

久し振りに街を歩き、ふと足を止める。
いつの間に建ったのかまたビルが増えていた。各企業などが入居する高層ビルか、見上げてみたが最上階がどこにあって、この建物が何階建てであるかも解らない。四角い窓が同じ顔をして並び、ただ上まで続いている。灰色の無機質な壁が光を反射して銀色に輝く、人の目を突き刺し視界を奪い何をしたいのか。窓に人が張り付いて自分を見下ろしていそうで、すぐにその場を離れた。


19. 駅

都会の駅は人の移り変わりが激しい。平たい椅子の並ぶ待合室の正面には、改札口が一様に扉を閉めて待ち、老若男女が出たり入ったりする。通路は四方へと伸び、人の行き先は様々に及ぶため、出入り口は人の群れで複雑に入り組む。
トイレ、キヨスク、ファーストフード店、駅内にあるものを数えるだけで日が暮れる。改札口から出てきたスーツ姿の冴えない青年が何処へ向かうのか想像してみた。だけど、やはり解らない。


20. 自分の一番好きな風景

橋を渡ってすぐ横に、川へと降りる石段がある。幅7~8メートルくらいの浅い川には毎年白鳥が飛来してきて、その羽を休める。周囲は田んぼに挟まれており、川に沿う形で道路が走ってはいるが、車の通りは少なく静かだ。
水際まで近づいて乾いた土の上に腰を下ろす。土手に遮られて家並みは見えない、故に外界の様々な事情から逃れられた。ただ、広がる空と黒い川面を眺める。悩みなど川の水に流されていくようだった。


<心情描写>
21. 喜

思いがけない吉報に心が弾む。本当なのだろうかと、何度も自身に訊ねかけ真実を確かめた。間違いないと実感したその後、もう一度歓喜した。何年も願いつづけてきた夢が叶えられたとき、人は驚きから頭が真っ白となり、やけの心臓の鼓動だけが耳につくんだと知った。早くなった動悸がなかなか元に戻らない。耳がキンキンと鳴って頭に響いたが、嬉しさが先立っていて不思議と痛みは感じなかった。


22. 怒

衝動的に手をあげてしまいそうで、ぎゅっと握って震えを抑えた。許せない物事が転じて怒りと変わる。ふつふつと心が煮えたぎり、ある時点で弾けた。
途端に憎いと思った。傷つけてやりたいと憎悪と自己嫌悪の狭間で心が揺れる。悲しみよりも憎しみで涙が溢れた。できることなら自分の感情を抑えて済ますほうが良いと知っているのだ。


23. 哀

真夜中に突然、心がすとんと闇に落ちる。一人であることを実感するほど誰かの腕が恋しくなった。肩や背中が寒い。どうして夜は、こんなに孤独を引き立てるかのように、静かなんだろうと思う。それでも遠くの街は今も騒がしいのかと思うと寂しさが顔をだした。音が欲しくてテレビをつける、だが其処にも誰もいない。


24. 楽

どんなに笑顔を作ることが苦手でも、自然と顔がほころぶ。こんな時には理性などはいらない。気持ちの赴くままに任せて、人の目ばかり気にしていた自分を一旦、内から外へと放り投げる。
陽気にはしゃいで見知らぬ人とでも手を合わせて笑い合った。きっと今日は人生でもっとも最高な日。


25. 殺人を犯す直前の心情

五感が妙に途切れ途切れに飛ぶ。
言い訳がましいと自らを責めたてながら、仕方のないことだと言い聞かせた。どんなに拒絶しようか命令には逆らえない、成功させなければこちらの命が危なかった。
自分が今やろうとしていることに、まるで心臓に虫が巣食っているのかと思うほど小刻みに震える。肝が小さいわけではない、課せられたものが尋常ではないのだ。
狂っていると思う、この状況も、自分自身の頭も。今ただ早く悪夢から覚めたいと願った。


26. 死に逝く時の気持ち

涙を流す力でさえ、この体には残っていないのだろう、不思議と悲しみは湧き起こらない。別れは惜しい気もするけれど、時が来たのならば仕方がないと思う。今はただ、通ってきた過去を思い返し、君と出逢えた喜びを噛み締めるばかりだ。
言葉は交わせなくても傍で見守れるのなら、いつまでもそうしていよう。だから泣かずに笑っていて、そんな君をこれからも愛し続けていくから。


27. 告白をされた時の少女の気持ち

0.1秒の瞬間、今まで生きてきた16年間の記憶が一気によみがえる。思い返してみても初めてだった。どうしよう、と頭の中で呟く。響く心臓の音がうるさい。好き、なんて誰にも云われたことがなかった。
自分の気持ちがどうとか、返事はどうするとかよりも、恥ずかしすぎてパニックになる。今年起こった信じられない出来事、第1位、A子告白される! そんなフレーズが浮かんだ。
あまりのことに気を失いかけて、どうにか持ち堪えた。死ぬにはまだ早すぎる。


28. 満員電車に乗っているサラリーマンの気持ち

考えることは止めていた、平凡な人生を歩んでいる自分の行く末を想像してみたって限度が知れている。珍しいことなんて起こりはしない、だから極力考えるのはよしたはずなのに、いつもの通勤途中、混雑した電車に乗り込むと、理由なく頭の中で将来の自分の姿がぐるぐると回る。
この鬱屈とした暑苦しさが要因なんだろう。後、何十年この生活を毎日続けなくてはいけないのかを思うと、現実逃避をしたくなった。


29. 嫉妬

過大なショックの後に起こったのは、大きな自信の喪失だった。
自分だけを見てほしい、それが駄目なら自分を一番に見てほしい。大好きな人が自分以外の異性の傍に寄り添っているだけで、他人からすれば何でもないことに見える光景でも、心臓は激しく脈打った。
病気かと疑うほどに胸が苦しく、喉につかえたものを大声をだして取り除きたかった。躰を思い切り掻き毟ったって、原因物質は排出できない。
目を閉じて二人を見ないようにしても、心の目が疎ましげに二人を睨みつけていた。


30. 今現在の自分の気持ち

可もなく不可もなく、ただ穏やかに流れる時と生を感じる。外面的には一人でも、孤独が作り出す寂しさや虚しさ、不安といったものは心の内にない。自分が動きだせば他と共存し合えることを今は知っているから。
胸の傍にある暖か味は夢のしるし、近い未来に出逢えると信じる仲間がある証拠だ。いつか巡り来る日の為に、この命を噛み締める。


***NEXT


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