■切な系100のお題
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001:涙
子供の頃から泣いてばかりいた。
疎まれて、忌み嫌われて、泣き続ける
の、繰り返し、繰り返し
涙は何処へ落ちて流れたのか
川を黒く染めぬよう、空に悲しみを伝えぬよう
虹となって微笑みかけていてほしい
002:もしも許されるなら
謝罪の言葉を貴方に捧げましょう
それで気が済むのなら
死ぬまで頭をひれ伏しましょう
大地の精が其処にいるのなら
すべての惨事は私の罪
出逢ってしまったこと、
交わってしまったこと、
で、回路は落ちた
閉ざされた世界で数多の華を見た
散り際は美しく、妖麗として猛々しい
私の祈りなど届かない
運命は必然だったと皆は口にする
だけど最早、戯言を口にする者もいない
私はひとり、ただひとり
許されるのなら貴方を抱いて共に眠りたい
003:春の雪
命が生まれるこのときに
はらはらと血の花びらが舞う
忘れられる空しいときに
狼狽と嬉嬉とを覚え
無言で見守るうつろいに宿命の跡を残して……
白球の眸には消えゆくものばかりが映ります
似た形をしたものは他人でしかありません
願いの先は聞けません
暖かい日差しが昇れば、涙とともに消えましょう
死する喜びもあれ、生きる悲しみもあれ
004:雨
雨、それは涙に変わるもの
空に灰色の幕が蓋えば、目覚めの頭は重くなる
雨、それは涙に代わるもの
冷たい雫が頬に落ちれば、あの日のことを思いだす
雨、君が晴れれば、心はスッと軽くなる
005:卒業
初恋はいずれ崩れるものだと誰かに聞いた
君は確かにイイ人だった
憂鬱は気のせいではなく本物だった
時を待つより真っ先に
僕は君を卒業する
006:籠の鳥
スクイダシテ、スクイダシテ、スクイダシテ、
鳴いても五月蝿がられるはがり
心も言葉も伝わらない
ひとりぼっちは嫌だけど
ふたりで鳴くのも嫌だった
此処は狭くて寂しい籠の中
抑圧された檻の中
007:病室
青空に焦がれていた
木々に触れたいと願っていた
いますぐに躰は飛びだしていけそうなのに
皆の言葉に縛りつけられて
白い寝台から動けない
それでも風は肌を撫で
花の香りは僕を誘う
歩けるはずなのに
自由は其処にあるのに
何故、動かない、僕の四肢
008:天上の青
常にまなこは下へと降りて
様々なものを眺めゐる
喜びと悲しみと、善悪、生死
刺激と緩慢と、何でも裏表
体験したい欲望がうずまき
知りたい目と交差する
だけど届かない、手と手
009:それぞれの道
行きたい方向は違うのに
勝手に仲間と位置づけされて決められる進路
隣の道は空いているよ?
つないだ手は放してくれないか?
君は仲間じゃなくて友達
離れていても大丈夫だと信じているから
今日から別の道を探しだす。
010:遠い記憶
君の顔がふとよぎる
あの頃の君にはまだ笑顔はなかったね
私だけがはしゃいで周っていた
それはすべて遠い記憶
思い出しかない私の現状
011:この命と引き換えに
失したものが多すぎて、たった一つのものも守れない
家族、友情、名誉にプライド
すべてを壊して、唯一を作り上げた
だけど、もう ジ・エンド
助けて下さいと、誰に請う?
誰でもいいから、この命と引き換えに
最後の願いを叶えたまえ
012:夕陽
この命、燃やし尽くしても貴方に最高の美を届けます。
心、揺さ振られるように、空に赤い血をほとばしらせ
魂を天にかかげ、無垢な命へと戻り帰る
明日は見ない、今だけを見つめて、数々の軌跡に誇りと思う
013:ねがい
大きく、けれど沢山の人の心にある願いを
いつまで無視し続けるのだろうか
皆が思うのは、諦め、失望
期待はやめる、しかし夢は抱き続ける、そんな矛盾
泣きたいのなら、泣きまくれ
叶わぬ願いと知りながら
014:横顔
いつも見つめているのは私の方ばかりで
目の合うことなど滅多にない
人の話し声も、いつの間にかBGMとなる
覚えきってしまった貴方の横顔は充分だから
正面を向けるよう笑顔の花を開かせる。
015:ゆびさき
伸ばした指の先を掠めていくのは
僕を見ていた暖かな温もり
待って、行かないで、
と、発した言葉は透明な板にぶつかり跳ね返される。
繋いでいた手は、もう空だ
みんなは何処へ行ってしまったのだろう。
016:白い花
その白い花を摘みにくる者はもういない
小さくか細い彼女は春を待たずに死んだ、
頬は咲きたての花びらのように白く
閉じられた瞼は朝露を含んだように濡れていた
だが、彼女の鼓動は止まっている
静かな唇に紅を引き、長い黒髪に櫛を通す。
弔いの花は涙を零すから
代わりに言の葉を送りましょう
可憐な彼女の最後の為に。
017:呼ぶ声
何度も呼ぶ声が私の耳に届いた
返事をしたいのに
瞼は重く、口も開かない
私の目には闇が広がりばかりで
一向に灯かりが燈らない
ただ声ばかりが耳に五月蝿い
私の名前はどうでもいい
いらない、いらない
私は死んだ
018:殺意
あなたを殺してしまえば、すべての夢は終わりを告げる
届かない祈りも、叶わない望みも、
報われることなく消えていくけれど、
願いだけは果たされる
そして
あなたは閉ざされ、私は解放される
019:振り向かない背中
前を見る貴方を好きになってしまったから
あなたが振り向かないのは仕方のないこと
あなたが見ていないうちに知恵を身につけて
あなたを振り向かせる方法を考える
貴方は悪戯な女の子は嫌いですか?
020:月光
淡雪の肌を月夜に晒して、天を見る。
母様の病が治りますよう
父様の航海が無事に済むよう
妹たちへ災いが続かぬよう
おもいを胸につめて。
満月の光は身を清めるから
神へ近づくために身を捧ぐ
白くもゆる姿態に心奪われた王子がいようとも知らず
涙は真珠と変わりゆく
021:まぼろし
僕が見たものはすべてが幻
目覚めて出逢った兄弟も両親も、昨日遊んだ友人さえも夢幻
感じるすべては存在しないもの
大地や空、空気でさえも無有である
いったい何を信じればいい
誰もが皆、知った気になっているだけなのに
022:いつか見た夢
森の奥に瑠璃色の鳥がいて、赤い宝石の実をついばんでいました。
檸檬の月がそれを見て、星が躰を揺らしながら笑っていました。
雪の兎も、秋色の羚羊も皆が集まり、自然がもたらす美しさを喜びます。
ここでは何もかもが幸せだと思いました。
ずっとここに居たいと皆が思いました。
けれど今では森は消えました。
鳥も兎も羚羊も居ません。
ただ残った月だけが寂しそうにしていました。
023:世界の終わりに
いつか人が絶滅危惧種になる日がくる。
きっとその前には何万もの生き物が死に絶え
何億もの植物が枯れ果てる。
いつまでも死なずにいるのは全てが加害者で
抵抗できぬ弱きものはいつも被害者なのだ。
世界の終わりに誰が生き残る
ひとりぼっちの君臨者
なっても虚しいだけなのに…
024:スケッチ
描かれているのは他人から見た自分なのに
本当の自分がそこにいるような気がして
いままで自分が心に思い描いていた
自画像は一体なんだったのか、
もう絵さえ見えなくなる。
自身の中で私がなくなり、
私が他人の絵の中で存在し始める
私は私であるはずなのに
025:翼
つばさを手に入れて、此処から旅立ちたいと願った
けれど降り立つ場所がみつからない
結局、自由を手に入れても
目指す場所がなければ、
胸の穴は閉ざされないんだと知った瞬間
自由よりも拘束を
つばさよりも、鞭打つ人間が欲しいと願った瞬間
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