ヒトヤスミ

赤カブ



   ある夏休みの一日

   当時小学校五年生の僕はサッカー部に入っていた

   僕たちは部活が始まる一時間前に集まって遊ぶのが日課となっていた

   僕たちは木に登ってカブトムシを探していた

   まだその日一匹も見つけられなかった僕は、別に勝負でもないのに少し焦っていた

   まだみんなが見ていないような奥の方を見てみると、一匹のカブトムシがいた

   「いたいた。やった赤カブじゃん」

   僕たちは十数匹に一匹くらいの割合で見つける、茶色がかったいろのカブトムシをそう呼んでいた

   「マジかよ良いな~」

   「そろそろ部活行かないとまずくね?」

   「まじ?こいつどうしよ」

   「あれに入れとけば?」

   友達は落ちてた小さ目の段ボール箱を指差した

   「ま、何もないよりいっか。ちょっとここで待ってろよ」 

   僕は赤カブを中に入れて部活へ向かった


   三時間後、僕はダンボールのところまで戻ってきた

   箱を覗き込むと・・・そこに赤カブはいなかった

   僕は箱の周りを探し回った

   でも、いなかった

   夏の午後、一人ぼっちにされた気分で、とても悲しかった

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