宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

夜の訪問者


時に行っていた店の二階で、詩人さんは私をおし倒して、
買ったばかりのセーターを力まかせに破った。
責任のとれないことはしないほうがいいと思うけど?
私がそう言うと、詩人さんは大きく哄笑して私から離れた。
いつだったか、詩人さんは暗闇で闇雲に私を抱きしめて
無理やりキスをした。
私の腰にまわしている手ひどく力強くて、
そのキスはなんだか眩暈で倒れてしまいそうなキスで、
それは私が人妻でなければどうにかなっちゃたかもしれないような。

しかし、それらのことをどう解釈したらいいか。
おれ、或いは僕が、好きですって言ったら、うん。って私は屈託なく答えたもんだ。
うん、知ってる。
その好きには二重の意味があったことを私は知ってるいた。

一人の人間として好きである。
そして、一人の女として好きである。

ということ。
詩人さんはいつか言った。

あんたはいいと思うよ。
こうして男の話が出来て、なにより女だしさ。と。

けれどそれでも、妻帯者の雨の訪問はわからないし、
詩人さんの夜の訪問も今もってわからない。




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