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「やってみようと思ったときは、すでに成し遂げる能力があるのです」
同人の集まりに行くべきか、見おくるべきか。三月早春、その言葉で踏み出した。やっても、やらなくても、どうせ時間は過ぎていく。何もしなかった一年、通い続けた一年、想像してみた。行動した顔が濃厚に微笑みかける。進め。時間が用意されているなら今だ。
入会初のイベントはTさん宅でのバーベキュー。
平成三十一年四月二十一日復活祭。仙台駅前、八番バスのりば。八時五十六分発車。
「トイレの壁に、庭の絵をずーっと貼っていたの。そうしたら、実現しちゃったぁー」
無意識に仲間に告げる。帰宅後、じっくり絵をみた。ただの庭じゃない。タイトルが、
『ファミリー・バーベキュー』(スコットランド女性画家ジェニファー・トムソン)
その絵に思いを留めたのは二年前だった。
秋保の百坪以上もあろうかと思われる庭園には無農薬の野菜がズラリ。菜の花の蕾をもいで口にした。甘い。掘りたての筍も網にのせる。肉が苦手な私はもっぱら玉葱、きのこ、南瓜、パプリカ、大蒜も。口の周りをタレでよごしながらも気にしない。蕗味噌、おにぎり、自家製パン。ほうれんそう、人参、もやし、三種のナムル。たらふくたいらげる。
おっ、ホッケが網にのった。焼きたてのホッケを食べたい。それも前々から思っていたことだった。
同人誌が完成した。庭さきで、印刷所から届いたばかりの本を手にとった。デビュー前の作家たちの切磋琢磨。その投入した熱が新入りにまで伝染してくる。
目を引いたのは挿絵。染色、テキスタル作家が作品ごとに絵をあつらえた。Kさんが絵を見て泣けてきたんだと、顔をくしゃくしゃにしてテキスタル作家に話しかける。
「しっかり読んでくれている。でないとこういう絵は出来ない。こんなにも、私のことを、理解してくれているんだなあって思ったら、もう嬉しくって」
本を開いた。ああ、これはペンで描いた絵ではなさそうだ。即座に質問した。
「読み込んでからデッサンして、針と糸で刺繍のステッチを作っていくということですか」
「はい、そうです。一字一句、丹念に読みます」
その回答に一同歓声があがった。わあーーーー、拍手喝采。
同人誌にはどうしたら関われるのか。数年前に確かに思い浮かべていた。心に描いた絵は実現させようと自動的に歩き出すものなのか。生きていれば、こうしたいと思ったことが、いつかそのとおりに運ばれていくということなのか。
Tさん夫妻のミニ野草園を歩く。自然療法の暮らし。病は無縁。効能のある野草畑。季節の野菜を山盛り、ズンドー鍋で煮込む。コトコト弱火で繊維質がくたくた、とろとろになるまで煮込む。いのちのエキス。次、無農薬の野菜カレーを提案したい。心身のお通じを良くする。樹木なる仲間たち。兄、弟、姉、妹。集いはいのちに磨きをかける。
Tさんは七十九歳。二年前のエッセイ講座で隣の席だった。「庭」の作品に魅せられて、(行ってみたい)瞬時に走った思い。それが、忘れた頃に実現することになろうとは。
「それは一つの発見だね」
など、常に寄せてくれるコメントが光っていた。今回も勇気づけを一発。
「エッセイもね、一年や二年じゃ、まーだ、まだ。三年、四年たって、あるとき一気に伸びるものなのよ。もう、そういうふうになっているんだから。続けていくしかないのさ」
植物を語るような切り口には妙に説得力がある。
奥さんのことを「ミッチー」「みっちゃん」と呼んでいる。その夫婦仲の睦まじさ。この絵をしっかりキャッチした。(了)二〇一九年 五月一日
アカスリは時間を生んでくれる 2021年01月23日
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