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さよなら立原道造記念館
立原道造記念館が2010年9月26日で休館、
さらに、2011年2月20日をもちましてついに閉館となりました。
9月26日は、道造と記念館を偲ぶ大勢の方々がお集まりくださり
ささやかなお別れの会が開かれ、97年開館から13年余りにおよぶ
立原道造顕彰の場としての幕を閉じました。
さて、このページでは
在りし日の立原道造記念館をしのんでいきたいと思います。
なお、記念館に関係するすべての画像は館許可のもと
当Hp管理人・なな猫が非常勤学芸員だった際の、
デジカメor携帯撮影による掲載ですので
掲載する画像等全ての情報の無断転載を禁じさせていただきます。
拙い撮影でお恥ずかしいですが
まあ、素人撮影の趣でご覧いただければと思います。
さて、まずは記念館の玄関口から。
横書きの看板はこのように。
そして、設立プレートが横壁にあります。
☆設立記念プレート
暮 春 嘆 息
―立原道造君を憶ふて―
人が 詩人として生涯ををはるためには
君のやうに聡明に 清純に
純潔に生きなければならなかつた
さうして君のやうに また
早く死ななければ!
三好達治
さらに、正面の壁には詩碑が刻まれています。
☆エントランス詩碑
ふるさとの夜に寄す 立原道造詩
やさしいひとらよ たづねるな!
―なにをおまへはして来たかと 私に
やすみなく 忘れすてねばならない
そそぎこめ すべてを 夜に……
いまは 嘆きも 叫びも ささやきも
暗い碧の闇のなかに
私のためには 花となれ!
咲くやうに にほふやうに
この世の花のあるやうに
手を濡らした真白い雫の散るやうに―
忘れよ ひとよ……ただ! しばし!
とほくあれ 限り知らない悲しみよ にくしみよ……
ああ帰つて来た 私の横たはるほとりには
花のみ 白く咲いてあれ! 幼かつた日のやうに
そして、外から見た受付内は
ガラス窓越しにこのように見えていました。
さて、中に入ってみましょう。
玄関を入ると、中からはこんな感じ。
そして目の前に立原道造の写真、
また、絵はがきや図録など、販売棚があります。
立原が描いたたくさんのパステル画や建築スケッチなどをもとに
いろいろな絵はがきが造られ
また、新しい展示のたびに、
整理・研究された資料をもとにした図録などが作られていました。
このように、展示のたびに大体は新しいポスターも作られ
楽しい道造の世界が紹介されました。
1階フロアから外を見るとこんな感じです。
目の前に東大の弥生門があり
春には毎年、東大内の森の中から鶯の声が聞こえ
行き交う学生や職員、見学の方たちで毎日にぎわっていました。
受付に座って、来館するお客様の足もしばらくとだえたとき
外の明るさに目をやって
ほっとするひとときがよくありました。
さて、1F受付の中の様子ですが
手前にはいつも、そのときの展示ポスターを掲げてありました。
最後のポスターは道造手書きの「ステッキを持つ青年」がモチーフ。
カウンターには、道造が十代で書いたパステルや水彩をはがきにしたものや
筑摩版立原道造全集のご紹介、最新号の館報などが置かれ、
受付内には、はがきや図録などさまざまな販売品が置かれていました。
奥にはCD・カセットプレーヤーがあり、
開館からずっと、立原道造の詩を歌にした合唱曲などが館内を流れていました。
さて、階段のほうに目を移すと、正面に外への出口があり
右手にベンチ、左手にお知らせコーナーの棚があります。
この出口は普段は閉めてありますが、
外の庭木にお水をあげるときに開けて、ホースなど出し入れしていました。
館スタッフの毎日の日課の一つでした。
右のベンチの上の壁には、出されていたさまざまな展示のポスターが掲示。
1枚200円で販売していました。
左手のお知らせコーナーでは、まずは故鹿野琢見理事長の
開館にあたってのご挨拶が掲げられ
姉妹館の弥生・竹久夢二美術館の展示ポスター、
立原道造の会のご案内パネル、
また軽井沢高原文庫や日本近代文学館など、ゆかりの他館の
展示やイベント紹介パンフレットなどが置かれていました。
ボランティアの方のお気遣いによる、やさしい野の花なども
さりげなく飾られていたのを覚えておいでの方もおられることでしょう。
★さて、それではいよいよ、1階から階段を上ってみましょう。
通常の展示では、先に遺品コーナーのある3Fからご覧いただくよう
誘導されていたと思いますが、
ここではとりあえず2Fに上ってみたいと思います。
階段の中途には、このような道造の部屋画像のパネルが貼られたりして
さりげなく道造の世界に来館者を誘います。
2Fの踊り場には、ドア部分に展示ポスターが掲示され
窓辺にはアンケートを書いていただくためのコーナーがありました。
さて、2Fの展示室です。
中央にベンチが置かれ、
そのときどきの展示を説明するベンチ資料が置いてあります。
このベンチで、ひとけのない朝の時間を
道造と会話しつつゆっくり過ごされる来館者の方も多かったです。
展示ガラス内や壁には、
さまざまな道造の作品や遺品、パネルが展示されています。
長い巻紙の手紙など、一番に目を惹いたことでしょう。
携帯もネットもない、道造が生きていた昭和のはじめは、
まだまだ手紙というものがコミュニケーションの重要なツールでした。
立原道造は特に手紙というものを
自分なりの使い方で120%愛用していたと思います。
常にはがきをポケットにしのばせ
気が向いたら、郵便局や駅でちょちょっと書いて出したり。。
新しい筑摩版立原道造全集の第5巻には
絵や建築スケッチ入りのはがきや手紙の数々が載せられています。
昭和初期のひとらしく、巻紙の手紙も幾つか残されており
その美しさに圧倒されます。
また、写真パネルやネクタイなどの遺品資料、原稿などの資料が
ほどよい距離を保ちながら展示され
初めて来られた方、立原道造をご存知なかった方でも
興味深くご覧になれるように工夫されていました。
特に最後の展示は遺品を中心とした展示でしたので、
たくさんのおしゃれなネクタイの色目や
最後にして初展示のバスケットなど
立原ファンにはこたえられない展示品もあったかと思います。
詩人であり建築家でもあった道造の真骨頂、
すばらしい建築スケッチや透視図など
建築として、また絵としての才に舌を巻いた方も多かったかもしれません。
コンパスやT定規など、大学時代に愛用された建築の勉強のための道具なども
面白い展示品のひとつでした。
こんなにたくさんのおしゃれなネクタイ!
ボヘミアン・タイまであります。
ほぼ全部展示されたのは、このときが最初で最後では。。
ずらっと並べて展示された、直筆原稿のうつくしさ、
また、さりげなくパネル化された手書きの野の花の絵など
道造の世界が余すところなく展開していました。
花のパネルの下のコーナーは、通常はヒアシンスハウスの模型が置かれていたのですが
今回は遺品の一挙大展示ということで
初めて出すバスケットが所狭しと展示されました。
これを持って、盛岡や長崎への
最後の大旅行に赴いたのかもしれませんね。
★LASTのご紹介は、3階の階段からスタートです。
ここには、道造の生家にあった窓辺の写真が
パネルにして飾ってありました。
白黒写真ですが、はじめてここに足を運んだとき
ああ、いいな、と思ったのを思い出します。
3階の踊り場には椅子がふたつ。
実はこれ、道造の親友、生田勉氏のお宅にあったものなんです。
でも、普通に椅子としてここに置かれ、
アンケートを書くお客様たちが
窓辺でほっと座るコーナーになっていました。
さて、では3階の展示品を次々と見てみましょう。
最後のには、市電切符の展示が写っています。
これは実は、初公開にして最後の展示となりました。
道造は少年時代に、市電の切符を集めていたのですが
相当の数が保存されてきてはいたものの、なかなか展示にするまでに出来ず
この会期にあわせて、はじめて正確に計測され展示が実現しました。
その数3000余り!
道造少年は収集癖のある男の子だったのです。
ほかにも、パステル画や、道造ファンののどから手が出そうな
“ほんもの”の詩集『萱草に寄す』、『暁と夕の歌』など。。
3階のフロアを入ってすぐ左側の壁面は
こんなふうに遺品のコーナー。
まるで、「バー・コペンハーゲン」と名づけた屋根裏部屋に
入っているような錯覚を与えてくれるコーナーでした。
立原にふさわしいランプ、
そしてパステル画「二匹の魚」。
(この複製は記念会HPで通販しています。在庫些少!!)
この遺品たちもみな、大事に梱包されて
上田の信濃デッサン館に、保存の旅に立ち、
或いは元の所蔵主のもとに帰りました。
これまでに何度も出された全集たちも
道造デザインになる椅子とテーブルとともに勢ぞろい。
本当にすてきな場所でした。
さて、ではここで、もう一度外に出まして
外観を改めて見てみましょう。
「笛を吹く少年」が壁面に。
脇の外看板もなつかしく
ポスターケースにそのときどきのポスターや展示を掲示
エントランス詩碑を撮影する方も多かったです。
東大の弥生門から見るとこんな感じ。
弥生の地で、たくさんのお客様をお迎えしてきました。
さよなら、
立原道造記念館。
14年間、花と、夢と、風を
ありがとう。
立原道造記念館よ。
風信子[一]より
……僕はこの詩集がそれを読んだ人たちに
忘れられたころ、不意に何ものともわからな
いしらべとなつて、たしかめられず心の底で
かすかにうたふ奇蹟をねがふ。そのとき、こ
の歌のしらべが語るもの、それが誰のもので
あらうとも、僕のあこがれる歌の秘密なのだ。
銀座「ニユー・トーキヨウ」にて
1938(昭13)年春 23歳
(協力・立原道造記念館)
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