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2019.11.22
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カテゴリ: 洋画

「ターミネーター:ニュー・フェイト」は、ターミネーターシリーズの1作。
 ターミネーターシリーズ生誕35周年記念作品でもある。
 シリーズの生みの親ジェームズ・キャメロンが製作に復帰しており、本作は第2作のターミネータ2の正統な続編と位置付けられている。そんな事もあり、本作ではこれまで製作されてきたターミネータ3やそれ以降の「続編」は無かった扱いとなるらしい。
 アーノルド・シュワルツェネッガーが引き続きターミネータT-800を再度演じる。
 また、第1作と第2作に出演したリンダ・ハミルトンもサラ・コナー役で復帰している。
 更に、ターミネータ2でジョン・コナーを演じたエドワード・ファーロングが、デジタル加工により、ターミネータ2の時の少年の姿で登場する。
 監督はティム・ミラー。
 原題は「Terminator: Dark Fate」。


粗筋

 1998年に、T-1000型ターミネーターとの死闘を制し(ターミネータ2)、スカイネットの台頭を阻止してから3年。
 サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)と、10代後半にまで成長していたジョン・コナー(エドワード・ファーロング)は、メキシコのビーチにいた。
 そこへT-800型ターミネーターが突然現れ、サラの目の前でジョンを射殺する。
 審判の日は回避されていたが、スカイネットが存在した時間軸が消滅される前に未来から送り込まれたターミネータがもう一体現存していたのだった。
 サラは、審判の日を阻止して数十億人を救ったものの、自身の息子は結局救えなかった。
 任務を完遂したT-800はそのままビーチを後にし、サラの前から姿を消す。

 2020年。
 メキシコに、2体が未来から送り込まれた。
 1体は、T-1000を遥かに凌ぐ能力を持つ新型ターミネーター REV-9(ガブリエル・ルナ)。
 そしてもう1体は、ターミネーターの製造過程で生み出されたサイバネティクス技術を、抵抗軍が人体に応用した強化人間グレイス(マッケンジー・デイヴィス)という女性だった。
 REV-9は到着から間を置く事無く、ダニエラ(ダニー)・ラモスという女性の家に出向かう。
 ダニーは留守だった。REV-9は代わりに応対した父親を殺し、家の中を物色。ダニーが弟のディエゴと共に近くにある工場に勤務している事実を突き止める。REV-9は、自身の変身能力を使い、工場内に侵入する。
 一方ダニー(ナタリア・レイエス)は、ディエゴと共にいつも通り工場内で勤務していたが、そこへ父の姿に変身したREV-9が姿を現す。ダニーを殺そうとするが、同じく工場内に潜入していたグレイスによって間一髪で助けられる。
 ダニーは状況を理解出来ないままディエゴとグレイスと共に工場内から車で逃げ出す。
 REV-9は一行を追跡し、追い詰める。その結果、ディエゴは命を落とす。ダニーとグレイスを抹殺するのも時間の問題と思われた。
 その時、ある女性が現れ、REV-9を爆発物で一時的に無効化する。スカイネットの台頭を阻止したサラ・コナーだった。
 ダニーとグレイスはサラが一体何者なのか全く分からなかったが、彼女の助けをとりあえず受け入れる。
 一行は、モーテルへと退却する。
 モーテルで、グレイスは自分の任務についてダニーとサラに話す。2042年の未来からダニーを保護する為に未来から送られた、と。ダニーは、将来人類にとって重要な人物になるからだった。
 サラも、自身について、二人に話す。「審判の日」を自分とジョンで防いだ事や、別のターミネータによりジョンが結局抹殺されてしまった事。息子を失って生きる目的を失っていたサラへ、何者からかメッセージが送られる様になる。文末には必ず「ジョンの為に」と記載されていた。送り主は不明。メッセージが記した場所に向かうと、未来から送り込まれた別のターミネータがいた。彼女はそれを始末。それ以降、彼女は送られてくるメッセージを基に「ターミネータ狩り」をする様になり、それが彼女の生きる糧となっていた。今回も、同様のメッセージを受け取り、それによりダニーとグレイスの所在が判明し向かったのだと説明した。
 グレイスは、サラが話す「未来」が、自身がやって来た「未来」と異なる事に、戸惑いを示す。彼女の「未来」では、スカイネットやジョン・コナーは存在していなかったからだ。しかし、今の時代で戦うには、サラの助けが必要である事を受け入れざるを得なかった。
 グレイスは、サラの元へ届いていたメッセージの発信源へと向かうべき、と考える。何故なら、未来から送り込まれる際、「危機に陥ったらこの座標へ向かえ」と教えられた場所と一致していたからだった。
 サラとダニーも同行するが、メキシコと米国の国境を越えた直後に、米国国境警備隊により不正入国と見なされ、一行は留置場に拘束されてしまう。
 REV-9は、世界中の監視カメラの映像を入手出来る立場にあった為、一行の居所を突き止め、留置場へと向かう。
 留置場で、ダニーはREV-9に殺されそうになるが、サラの機転により一行はヘリコプターで脱出。そのままメッセージの発信源に向かう。
 発信源は民家だった。そこに暮らしていたのは、ジョンを殺害したT-800本人(アーノルド・シュワルツェネッガー)だった。
 サラは、ターミネータ狩りを仕向けていたのは息子を殺したターミネータだったと知り、激しく激昂。
 グレイスとダニーは、サラを落ち着かせ、T-800から話を聞く。
 T-800は、ジョンを殺害するという任務こそ完遂したものの、スカイネットを勝利させるという目的は果たせなかった。任務完遂後はお役御免で放置状態となる。目的を失ったT-800は人間として暮らすようになり、その過程で人類から様々な事を学習し、良心すら持つようになった。その良心から、サラを助けようと考え、メッセージを送り、REV-9の存在する時代を抹消する手助けしていたのだった。
 サラは、この説明を素直に受け入れられず、「事が済んだらお前を殺す」とT-800へ告げる。
 T-800は、それも自分の運命だと受け入れる。
 サラ、ダニー、グレイス、T-800は、REV-9を破壊すべく、サラの旧知の知り合いの元を訪れる。その知り合いは現役の軍人で、彼からREV-9を破壊出来ると思われる電磁パルス兵器を手に入れた。
 そこへ、REV-9がやって来る。
 一行は軍用機を盗み逃走を図るが、REV-9の執拗な追跡に遭い、折角手に入れた電磁パルス兵器も破壊され、使えなくなってしまった。
 軍用機からパラシュートで脱出した一行は、水力発電所に降り立った。
 グレイスは、ダニーに対し、逃走を続けるよう、進言するが、ダニーはここでREV-9を始末しよう、と決める。逃げてばかりもいられない、と。
 一行は、REV-9と壮絶な戦いを発電所内で繰り広げ、回転タービンの中にREV-9を閉じ込める事に成功する。タービンは大爆発を起こし、爆風によりT-800は機能停止に陥る。一方、REV-9の液体金属は破砕し、内骨格もダメージを受けていたが、機能は完全に停止していなかった。 
 グレイスは、REV-9を完全に破壊するには、強化人間としての動力源となっているエネルギーセルを使うしかない、とダニーに告げる。ただ、エネルギーセルを取り出すと、グレイスは死んでしまう。ダニーは、そんな事は出来ない、と拒むが、グレイスはやるべき事をやるべき、自分は犠牲になる事を覚悟して未来からやって来たのだ、と。
 ダニーは、躊躇いながらもグレイスからエネルギーセルを取り出し、REV-9を倒そうとするが、ダメージを受けているとはいえまだ充分機能出来るREV-9に圧倒される。
 そこへ、機能停止に陥っていたと思われていたT-800が再起動。T-800は、エネルギーセルをREV-9に打ち込み、電流を発生させ、REV-9を破壊。しかし、その過程で自身も破壊してしまう。
 サラとダニーは、完全に機能停止した2体のターミネータを見下ろすしか出来なかった。
 この頃には、エネルギーセルを失っていたグレイスは絶命していた。

 数日後。
 ダニーは、まだ子供であり、生身の人間であるグレイスが、両親と一緒にいる姿を見届ける。
 REV-9のいる未来になったら、あの子供は将来強化人間になって死んでいく、そんな事はさせたくない、とダニーは思う様になる。
 サラは、そんな彼女に、「そうならないよう、準備しなければ」と告げ、共にその場を去る。



感想

 シリーズ生みの親であるジェームズ・キャメロン本人が製作に携わったシリーズ作なので、「正統」と捉えざるを得ないのは理解しているが……。
 これまで製作されてきた続編は勿論、キャメロン自身が手掛けた第1作と第2作を否定するストーリー運びは、あまり納得出来ない。
 ターミネータ2以降の「続編」は、ジョン・コナーを中心に動いていたのに、本作を正統とすると、彼の活躍は全く無かった事になってしまう。
 サラ達の活躍により、スカイネットによる人類滅亡の可能性は無くなった事になっているが、また別の人工知能により人類は滅亡の危機に瀕している、という展開は、サラ達の活動が結局凶悪な人工知能の台頭を数十年遅らせただけの事になってしまい、第1作と第2作の死闘は何の為だったんだ、という疑問を抱いてしまう(同じくキャメロン監督作のエイリアン2と、その続編のエイリアン3と同様の状況)。
 シリーズ生みの親とはいえ、自身が手掛けてきたシリーズ作と、自身が手掛けていないシリーズ作を全てぶち壊していいのかね、と疑問に思ってしまう。

 ジョン・コナーに取って代わる新ヒーロー(ヒロイン)が、これまでのシリーズ作を全てぶち壊してでも登場させる魅力がある、というのなら納得出来るが……。
 ダニーは、サラの焼き直しに過ぎず、退屈では無いものの、今後活躍(続編製作)を期待させるキャラではない。
 これだったら、これまで通りサラ・ジョンの母子の奮闘を描いていた方が良かった。シリーズをずっと追ってきた観客からすれば、お馴染みのキャラなのだから。

 キャメロン監督は、エイリアン2以降は「戦う女性」に執着する傾向が強く、本作でもダニー、グレイス、サラと、戦い捲る女性を3人も登場させている。
 戦う男性(T-800とREV-9)も一応登場するが、最早脇役扱い。
 統計では、そういう設定の方が観客の受けが良く、より高い興行収入が見込める、と出ていて、そう製作せざるを得ないのかも知れない。が、個人的にはこういう設定は説得力を失わせるので(何だかんだ言っても、女性は結局戦えない)、控えてもらいたいと思う。女性戦士をストーリーの設定上加えなければならないなら、1人に留めるべき。

 プロットは、未来からやって来た殺し屋から重要人物を守る為に、同じ未来から戦士がやって来て、死闘を繰り広げるという、シリーズ第1作と同じ運びになっていて、新鮮味は無い。
 時代に合わせたリメークと言える。
 特撮は、第1作と比較すると途轍もなく高度になっている。が、それもここ最近のアクション映画(MCU等)では当たり前のレベルに成り下がっていて、有難味が薄い。

 今回の宿敵REV-9は、鋼鉄の骨格を持つターミネータと、液体金属のターミネータの2つに分かれて活動出来るタイプ。
 第1作と第2作のターミネータを1つにしたかの様。
 反則ではないか、と思ってしまう程無敵でかつ万能っぽい割には、しょぼい理由で標的を殺し損ね、最終的には始末されてしまう。
 これだったら、アナログ感が残っていたT-800の方が、「殺人マシーン」としてはまだマシではなかったかと思う。

 本作では、シュワルツェネッガーがシリーズに復帰。
 カリフォルニア州知事だった時代は俳優として活動出来なかったので、ターミネータシリーズにも登場出来なかったが、知事を退任したので、漸く復帰が実現した、という事か。
 ただ、そんなシュワルツェネッガーも、既に70歳。
 初期のシリーズ作では鍛え上げた肉体を惜しげも無く披露していたが、本作では常に着衣状態で、肉体を披露する事は無い。披露出来ない身体になってしまったか。
 シュワルツェネッガーを何が何でも登場させたいが為に、無慈悲無感情が最大の強みだった筈のT-800が、人間と接している内に感情らしきものが芽生えた、という強引な展開になってしまっている。その意味でも、本作は第1作をぶち壊している。
 REV-9と対峙するのは殆どダニーとグレイスなので、シュワルツェネッガー(そしてリンダ・ハミルトン)はあくまでも話題作りだけの為に起用された感が無くも無い。

 リンダ・ハミルトンも、サラ・コナーとしてシリーズに復帰している。
 サラは、第1作では何の取柄も無いウェイトレスで、第2作では人が変わった様に女戦士となっていた。本作では、第2作を引き継いで、女戦士として登場。
 第1作の時は若々しかったが、本作では初老というか、血気盛んなお婆さん、といった感じ。また60代だが、ハリウッドスターにしては老けて見える。あえてそういうメイクで登場したのか、いつもの姿なのかは不明だが、時の流れを感じずにはいられない。
 演技も、ベテランの割には単調というか、気合が入っていないというか、渡された台本の台詞をただ口にしているだけの感じがした。

 ダニーを守る戦士として、マッケンジー・デイヴィス演じるグレイスが登場。
 瞬発的な戦闘能力は第1作の未来戦士カイルをはるかに上回るが、ダニーを守る、という長期に亘るミッションに於いてはあまり有能でなく(強化された肉体は消耗が激しく、定期的に薬物を投入して安定させなければならない)、サラやT-800の存在が無かったらダニーはあっさりと殺されていたと思われる。
 強化人間か何か良く分からないが、もっとマシな戦士を未来は送り込めなかったのか、と疑問に感じた。
 あまりにも感情移入が出来ないキャラだったので、最後に死亡しても「ああ、そうですか」くらいにしか思わなかった。
「『戦う女性』をガンガン登場させた方が観客にウケる」という理由だけで登場させられた感は否めない。

 序盤で、T-800に殺されるジョン・コナーを、第2作と同じくエドワード・ファーロングが演じていた。アップは無く、数カットしか登場しないが、既に中年になっている筈なのに少年の姿でどうやって登場させられたのか、と思っていたら、身体を他の役者に演じさせ、顔だけデジタル合成した、との事だった。
 エドワード・ファーロングは、第2作に出演した後は役に恵まれず、廃人同然になっていると聞く。デジタル合成での出演にしかならなかったのも、それが理由らしい。もし、順調に俳優としてのキャリアを積んでいたら、本作でも起用され、全く別の映画になっていたかも。その意味では、残念である。
 デジタル加工や合成の技術は日進月歩なので、将来は実在する俳優が一人もいない、という映画も製作可能になるだろう。
 ただしそうなったら、映画産業は衰退すると思われる。

 本作は、ターミネータ2の正統な続編というより、シリーズ生誕35年を祝う為の同窓会、といった印象を受ける。
 その雰囲気は観ている側にも伝わる様で、従来からのファン以外の鑑賞者は少なく、製作費が掛かった割には興行収入はイマイチらしい。

 アクションは、ハリウッド映画とあって派手で、他では到底観られないものに仕上がっている。
 ジェームズ・キャメロンがシリーズに復帰した、何か凄い事をしてくれそう、と大きな期待を抱いて劇場に足を運ぶと肩透かしを食らうが、期待を適度に抑えられるなら、充分楽しめる映画。







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Last updated  2020.01.04 17:26:33
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