明日は明日の風が吹く。

第一話「ハジマリ」

我を呼び起こすのは・・・誰だ・・・？
・・・久しぶりに人を殺す感触が味わえる。
さぁ、呼び覚ませ・・・・湊奏家！

『妖刀物語』

「あー暑い・・・・・」

太陽が刺さり、頭がクラクラするような暑い夏の日。

湊奏康は家の倉庫を漁っていた。

「ねーぞー姉貴！」

奏康は姉の美沙子に声を掛けた。

「えー？　ないのー？」

「本当にあるのか？　倉庫に歴史の資料なんて・・・・」

奏康は疑った目で美沙子を見る。

「だってアンタだって知ってるでしょ？　私達の祖先は湊奏家だって。」

「あぁ・・・・１日で４０００人もの人間を殺害した奴か。」

「家系の巻物見たでしょ？　巻物が倉庫に入ってたなら他の物だって倉庫に入ってるわよ」

湊奏家（みなと　そういえ）。
戦国時代の武将。
別名は妖刀使いの湊。
聞いた話では奏家は妖刀無篠琵という刀で敵を何千人も殺害し、さらに味方まで殺害したと言われている。
そんな奴が先祖なんて身の毛もよだつ話だが・・・・あくまで噂らしい。

「姉貴が「歴史の宿題なんか倉庫にいくらでもあるわよ」って言うから・・・・」

「もう、仕方が無いわねぇ。手伝ってあげるから。ほら行くわよ」

「へいへい。そりゃどーも」

しぶしぶ倉庫に戻った奏康は美沙子と一緒に再び資料を探し始めた。

「うえー凄ぇ埃だなコリャ」

「もー、せっかく髪直したのに・・・・」

二人はイヤイヤ言いながらも地道に資料を探す。

「これで無かったら怒るぞ」

「まずは手を動かしなさいよ」

「はいはい・・・・って・・・ん？」

奏康の目の前に、一つの桐の箱が現れた。

「何ソレ？」

興味津々の美沙子の横で奏康は箱の埃を掃った。

「開けてみてよ」

「言われなくても分かってるよ」

箱を開けるとその中には、包帯が巻かれている何かが入っていた。

「骨とかだったり・・・・してね。」

「マジでそういう事言うのはヤメロ」

恐る恐る包帯を取ると、一本の棒が・・・・いや、刀と言うべきか。

刀には「妖の刀　無篠琵の剣（あやかしのかたな　むささびのつるぎ）」と彫られていた。

「！！　これって・・・・あの刀・・・でしょ？」

「さぁな。偽物かもしれない」

「戻しましょうよ」

「このまま置いてく訳には行かねーだろバカ」

湊奏家が使っていた妖刀無篠琵・・・・こんな形で見つかるとは思わなかった。

呪われるかもしれないが・・・ほおっておく訳にもいかない。

「あんたが見つけたんだからあんたが持ってなさいよ」

「・・・・冗談はよしてくれ」

「置いてく訳には行かないんでしょ？」

非常に腹が立つが、美沙子の言っている事は正しい。

「分かったよ。持ってればいいんだろ？」

「言っとくけどさ・・・母さんや父さんとかには・・・・内緒よ？」

「こんな事言えるかよ・・・」

「で、資料はどうするの？」

「・・・・図書館行って来るついでにこの刀も調べとく」

奏康は自転車をこいで、市立の図書館へと向かった。

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