すべて伽哉のうち迷い道日記

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泰麒について



麒麟とはこうであるものと伝えられてきた、その前例を根本的にひっくり返すような行動だった。
それでも最後の挿絵から伺えるように、乍王朝はこの後、長く続いていくことを考え、
麒麟とは天意の器であるとすれば、その器はいくようにも柔軟に変化できるのではないだろうか。
天のシステムの矛盾を解き明かす鍵は、麒麟にあるのではないかなとも思った。

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白銀の泰麒は、十二国記の麒麟のそれまでのあり方の真逆の行動を取っている。

しかし、元来、仁の生き物であっても、仁の生き物たる麒麟が選定する王が国家を整え、あるいは維持する際には、流血も起こりうるもの。
仁を盾として、己の手は血に汚さずとも、使令によって麒麟の回りにも多くの血は流されてきたはず。
また国の統一、安寧のために、今まで幾度となく血が流されてきた歴史の中で、血の流れることに相容れない麒麟という生き物が王を選ぶという仕組みそのものが、天の矛盾を内包していることをも提示するような展開になっているともいえるのではないか。


「死者の魂魄が還るという。草冠をつければ、死者の住む山の名だな。いっそ不吉で縁起がよかろう」
「死者の.…」
咳いた泰麒に、驍宗は領く。
「死気はやがて生気に転じる。死者もやがて生者に還ろう。
そのように、再生を約束するものであるように」
泰麒はうなだれた。

泰麒の未来を暗示するような、驍宗さまの不思議な言葉です。

   「私は民に――この世界だけでなく、別の世界でも――たくさんの犠牲を出してきました。無力なだけでなく、とんだ厄介者だったんです」     
                         泰麒(白銀4巻)

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