すべて伽哉のうち迷い道日記

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十二国記雑感―渇愛



★ 阿選について読んでみても、わからない。
  阿選自身もわからないようだし、わたしに分かるわけない。

    「使令がただの二とは身の不運」
     白く氷のように輝く刃が、流れるように振り下ろされた。
    「・・・驍宗を選んだ貴方が悪い」   阿選(黄昏の岸 暁の天)

★ 白銀3巻読むまでは、阿選は反乱起こした阿選とは別人で、何かに操られていたのかと思ったり。それぐらい印象が違う。自分の中で、阿選はそんな酷いことはしないって思いたかったと思う。
黄昏最後の戴史乍書に阿選の乱って書いてあって、やっぱりそうなの?って黄昏を読んだ時点で思った。あの当時も信じたくはなかったんだなって思い出す。

★ 白銀だと泰麒の角封じて監禁予定だったと書いてあるけど、黄昏の阿選は、どうみても衝動的な殺意だろうって思う。
 麒麟を弑逆するのは、あの時点しかなかったけど。
 殺すか角を封じるか、それ以外だと戻ってきた使令に逆にやられるし。
 ってか、人型の麒麟の角って、すぐにわかるのかな?わかれば狙えるけど、目に見えないものを狙うって失敗する確率がすごく高くない?と思う。
 刃を振り下ろす。
 えぐるんなら横に斬り払うでは?と思う。

 「驍宗を選んだ貴方が悪い」って言ってるけど、昇山してない阿選がそれを言うのは、驍宗さまを奪った泰麒への嫉妬に聞こえる。これは黄昏時点で、改めて読み直しての印象。

 白銀の最初は計画的に云々という記述に戸惑い、4巻では衝動的に阿選は泰麒を殺そうと思ったが、わずかに残った理性が剣の軌道を変えて角をえぐるにとどめたとあるので、またわからなくなる。
黄昏の時点で本能的に泰麒は身をよじり逃げ出そうとしたという描写もあるので、殺そうとしたが、逃げる泰麒の角のあたりに偶然当たって角をえぐったという方がまだ自然ではある。

 さすがに麒麟に刃を振り上げる前代未聞の大逆に、周到に準備してきた阿選の心理も、その場になれば怖ろしさに目がくらみ、衝動的に・・・って感じで、最初黄昏を読んだときの印象を収束させていきたいところだが

★ 阿選の反乱の動機は嫉妬一択。驍宗さまへの重くてなすすべもない想いはあっても、泰麒には憎悪しか感じてない。

 渇愛、執着で、無明の闇に落下する。絡め捕らえて、共に堕ちよう、堕ちていくのは甘美なものだ。
 愛は、国をも滅ぼす、恐ろしいものだもの。

★ 阿選が幸せになれる道は、双璧の初期に驍宗さまと伴侶になること。驍宗さまと競っているのが楽しかったあのころに。早いモン勝ちで既成事実を作って周りにも伴侶だと宣言する。そしたら驍宗さま麾下もあきらめる。琅燦もあきらめる。泰麒も遠慮する。
驍宗さまだっていつも阿選の視線を気にしてたんだから、両想いでうまくいく。真面目な性格だから、浮気もしないだろうし、阿選のメンタルも安定する。

昇山は同時に。泰麒が驍宗さまを選んだら、阿選が泰麒に嫉妬を感じてしまうのでリセット。
泰麒が阿選を選んだら、うまくいく。驍宗さまは泰麒を麒麟というシステムでとらえることができるから、泰麒に嫉妬はしない。阿選は伴侶なんで、驍宗さまは阿選を置いて出ていかない。
驍宗さまの公私とものサポートで、阿選本来の長所が生かせるとってもいい王朝になったと思う

★ 白銀があるから、阿選が現状で幸せになれる道はないから、そんな幻想も見る。それができる阿選はもう阿選ぢゃないかもしれないけど、いいじゃん、若気の至りでもなんでも言っちゃえよと驍宗さまの前に押し出してあげたい。辿ってきた道のどこかに、今とは違う決定的な別の道もあったのかもしれない。

救いのない地獄を、お前とともに彷徨うのもまた底知れない甘美なものかもしれないけれど。
愛されないなら、歯牙にもかけられないのなら、振り向かせて果てしもなく憎めと言わんばかりの激情。

★ お前は何に囚われたのだ?
 ずっと問い続けてきたが、驍宗にはわからなかった。漠然と、わからないそのことが阿選を怒らせているのだろう、と思う。(白銀3巻)

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死ぬよりも前に、渇愛を離れて
過去によって現在を言い訳しようともせず
目の前のことに対しても準備せず
未来を思いわずらうこともない
そのような人は、怒らず、怖れず
誇らず、後悔するような悪行をなさず
よく思慮して語り、そわそわすることもなく
沈黙して暮らすことができる

いまだ来ないものを願い求めることもないし
すんでしまったことを憂えることもないし
すべての感覚対象から遠ざかり、離れるので
思考に支配されてしまうことがない

このように依りかかるもののない人は
ダルマ(法)を知っていて他に依存せず
有への渇愛も存在しなければ
無への渇愛も存在しない

(ブッダのことば――スッタニパータ)

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