福井県民国~for maniac people~

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第3話 集結


 こんな事件はコナンとかいう少年探偵の周りでほとんど起こり、自分の身に起こる確率は年末ジャンボで三億円が当たる確立より低いと思っていたが、ついに私はその低い確率に当たってしまったらしい。これで今年の運は全て使い果たしてしまった。今年と言っても、あと一週間ほどなのだが。
 それにしてもこの男たちの目的は何だ?クリスマスの日に電車を乗っ取るなんて。こいつらは国にクリスマスを無くす法案を求めているモテない男たちなのだろうか。
 くっくっくっ、馬鹿らしい。どうせだったら国会議事堂にドーンと爆弾でもぶつけて日本を潰せばいいのに。臆病者どもめ。
「おいそこ!笑ってんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!」
 突然、男が私にキレた。思っていた事が顔にいつの間にか出ていたらしい。さらに男は私の襟をつかみ言葉を続ける。
「てめぇさっきから見てればよ、こっちジロジロ見やがって。死にたいんか!殺そうと思えばすぐぶっ殺せるんやぞ!」
 その時だった。男が私を壁に押し付けた瞬間、男のジャンパーから何かが落ちた。三人の視点はそれに集まった。
 そこには携帯があった。ドコモの古い機種らしく、所々が傷つき塗装が剥がれている。でもそんなことはどうでも良かった。注目すべきは携帯についてるストラップだった。私は無意識につぶやいた。

「お前、もしかして、・・・ヤブなのか?」
「な、なんで俺のあだ名を知ってんだ!誰だ、貴様!」
私は自分の携帯についているストラップを男、いやヤブに見せた。
「これ、覚えているか?」
 そのストラップは中学時代に「ある人」に作ってもらった物だった。
 しかも、この世に3つしかない物だった。

 ヤブ、本名小薮浩之。私の中学時代の親友だった。毎日のように遊び、ケンカし、楽しい日々を送っていた。そして、2人とも1人の女性に恋をした。2人は競うようにアピールした。そして告白した。結局どちらもフラれたがいつの間にか3人は仲良しになった。恋愛対象から始まった出会いは友情に変わり、永遠の物になろうとした。
 が、長くは続かなかった。ヤブは兄の警察沙汰に巻き込まれて、転校する羽目に。私は父の転勤で東京へ。引き裂かれる運命になった。
 そして、学校の放課後、教室に3人はいた。そして2人は赤い人の形をしたストラップを初恋の人から貰った。そして「このストラップで3人は繋がっている、これを肌身離さず持って3人の絆を忘れないようにしよう」と誓った。それがこのストラップ。

 いつの間にか親友ヤブの目には涙がにじんでいた。
「ゴメンっ・・・俺、何でこんなことしたんだろ。馬鹿だよな。このストラップの事忘れてたわ。最悪だよな、俺。お前の彼女との旅行、駄目にしちゃってさ」
ヤブはその場にへたり込んでしまった。
「ちょ、ちょっと待って!この人は俺とは関係なくてさ・・・」
私がヤブの言ったことを否定しようとした時、ある声が邪魔をした。
「あの~ちょっと、いい?」
一緒に客室にいたあの女子高生だ。何なのだろうか。
 彼女はコートのポケットをまさぐってある物を出した。
「これ・・・」
手には携帯、そしてあのストラップがぶら下がっていた。

「あ」

>18:27 横浜駅通過


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