いっぱいのお運びありがとうございます

いっぱいのお運びありがとうございます

だくだく

だくだく

「おお、八五郎さんか。いらっしゃい」
「どうも先生、ちょっとお願いがあって参りました」
「私にできることなら何でもおっしゃってごらん」
「ええ、実はちょっと目が出なくて負け込んじゃってですね」
「ほう、さいころですか」
「ええまあ、それで家財道具を皆うっぱらっちゃったんで・・」
「それで?」

「家の中が寂しいんで白い紙を張りました」
「紙?」
「ええ、そこで絵の先生にお願いだ。たんすやら何やらを描いてもらいたいと・・」
「それくらいならお安い御用だが」
二人で八五郎のうちへやって来ました。

「早速ですがここに桐のたんすを描いて下さい」
「こんなものでいいかな」
「さすが上手いね、その隣に金庫。それも扉が半分開いてて札束が見えてるところを」
「描けたよ」
「こりゃ景気が良くていいや。じゃこっちに長火鉢、傍で猫があくびしてるのなんかのんびりしていいね。お願いします」
「はいできたよ」
「こりゃ生きてるようだよ。後は、長押に槍がかかっているのを・・」
「他には?」
「いえ、もう十分で。ありがとうございました」

絵の高級家具に囲まれて喜んでいましたがその内寝てしまいました。そこへ入ってきたのが近眼の泥棒。
「きたねぇ長屋だと思ったけど凄いね。金庫から札束があふれているよ。猫があくびしている。このたんすも桐だよ。あるところにはあるもんだねぇ。
今日はいい商売になりそうだ。あれ?取っ手に指がかかんないよ。あれ?なんだこれ?あ、絵じゃないか。あの猫も長いあくびだと思ったらあれも絵か。とぼけたやろうだね。
冗談じゃない。絵にだまされてすごすご引っ込んだんじゃ仲間から笑われらぁ。そっちが絵で豪邸のつもりならこっちも仕事したつもりでぃ。
まずたんすを開けたつもり。中から唐草模様の風呂敷を出したつもり。次の引き出しを開けたつもり。絣の上等な着物を出して風呂敷の上に置いたつもり」

さすがに気配で八五郎目が覚めました。
「何だ、泥棒か。内には盗むようなものは無いぞ」
「正絹の着物を引っ張り出したつもり、最後に金庫の札束も風呂敷に入れたつもり」
「やろう盗むものが無いんで盗んだつもりになってる。ふざけた野郎だね」
「風呂敷をぎゅっと縛ったつもり。それを背負って立とうとしたが重くて立てないつもり」
八五郎が起き上がった。

「待て泥棒野郎・・と長押から槍を取り、りゅうりゅうとしごいたつもり。泥棒のわき腹を刺したつもり」
「ぐわっ、刺されたつもり」「グリグリッとえぐったつもり」
「血がだくだくっと流れたつもり」



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: