ミネバが3歳の頃から読んでもらっているお気に入りの本に、「おほしさまのパーティー」というのがある。星が、宇宙で誕生日パーティーを開くという子供向けの絵本である。ミネバはこの絵本で宇宙というものを知った。
 宇宙には空気というものがなく、息ができなくて苦しいこと、体が宙に浮かんでしまうこと、モビルスーツというものがあるということなども、侍女から教えてもらった。ミネバはそれを聞いて、いつか自分も宇宙に出てみたいと思った。
 居住区にはちゃんと重力があったし、ミネバにはそれが当たり前だった。まさか自分がそんな宇宙の中の小惑星に住んでいるなど、思いもよらないことだった。

 ミネバ、4歳のある日のこと。
 ミネバは、アクシズのはずれの軍事施設の中で、初めて宇宙を見た。
 真っ暗な中で、小さな光が瞬いていた。ときどきそこを小型の偵察機が横ぎった。
 ガラス越しに見えるその空間は、まるで穴みたいだ、と思った。真っ暗で苦しくて、でもときどき光が見えて、動けそうで動けないで、こわくて暖かくて。
 ミネバは窓ガラスにそっと触れてみた。ガラスはいつものどこにでもあるガラスだったが、このガラス1枚の向こうに宇宙があると思うとぞくぞくと不思議な感じがした。
「ミネバ様、早くこちらへおいでくださいとハマーン様がおっしゃっておられますよ」
 侍女が何度言ってもミネバはそこを動こうとしなかった。

 ミネバ6歳。
 この歳になって、初めてミネバはMSというものを見た。
 大きな機械だった。人間みたいにちゃんと手足がついていて、目がひとつしかなかった。その目はぼうっと淡い光を発していて、なんだか逃げられないような気がした。ミネバは怖くなって侍女の背中に隠れた。
「大丈夫ですよ。これはミネバ様をお守りするためのものですから」
 幼い子供の感性で人殺しの道具、兵器だいうことが分かっていたのかもしれない。ミネバはこの機械にこれ以上近づこうとはしなかった。


 ミネバ、17歳。
 眼前にはいつも星があった。ミネバの周りは360度すべて宇宙。周囲がすべて星だった。
 ミネバは愛機のハイ・キュベレィをあやつり、星に手を伸ばしてみた。まるで何かを掴み取ろうとでもいうように。
 今彼女はMSのパイロットとして宇宙を駆けている。
 昔の記憶も、名も、何もかも失い、ひとりのパイロット“エリー・シエル”として。

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ミナミさまに頂いた相互記念のイラストのお礼として送らせていただいたものです。
現在始動中のミネバ様長編に基づいています。


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